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『バート・マンロー スピードの神に恋した男』ジョージ・ベッグ

バート・マンロー スピードの神に恋した男
ジョージ・ベッグ
ランダムハウス講談社
1995円
2007.1.27

★★★☆☆

 先日のレビューを書いた映画『世界最速のインディアン』にぐっと来たのでバート・マンローのドキュメンタリを読んでみました。多少のネタバレを含むので、映画をこれから見ようという方はこの記事より先に楽しんでこられることをお勧めします。

 実物のバート・マンローは掲載された写真からすると映画でバートを演じたアンソニー・ホプキンスよりほっそりとした男だったようです。そして映画がかなりイベントを詰め込んだお話であることがわかりました。
 ですがメカ関連は概ね事実に忠実に描写されていたこともわかりました。

「あんまり違わないなら映画だけ見ておけばいいかな?」

 そう思うかもしれませんがそれには「否!」と答えさせていただきましょう。映画のバート・マンローは格好いいし、めちゃくちゃドラマチックでじーんと来るし、もうこれだけでお腹いっぱいだったけれど、実在のバートは映画よりそうとう頑固で、困った人であったようです。そして明るく快活。近所には絶対にいて欲しくないタイプのメカ狂い。映画の冒頭で夜明け前にエンジンをかけて隣人を怒らせるバートですが、今の日本でやれば間違いなく訴訟モノ。しかもそんな振る舞いを、いやそれ以上にはた迷惑なことを続けてきたのがバート・マンローの実像のようです。その徹底ぶりがいっそのこと清々しい。
 にも関わらずに隣人に愛されたバート。
 人を魅了するメカマニアの秘密がこの本からは窺えます。

 映画の冒頭、静かな音楽と共に映し出されるガラクタ部品の並んだ棚。"OFFERINGS OF THE GOD OF SPEED"(スピードの神への捧げ物)と書かれた棚はこの本のP.244に挿入された小さな写真にもありました。バートが暮らしていた物置小屋のあの部品棚は本当にあったのです。いえ、映画は再現だとは思うのですが、オートバイ絡みのシーンではとにかく徹底した「再現」が行われているのが『バート・マンロー スピードの神に恋した男』からはわかるはず。
 そういえばこの本の副題「スピードの神に恋した~」はちょっとアレな感じが。恋するなら"GODDESS"だよなぁ、なんて思ったり。

 楽しむ順番は、映画→本→映画、がお勧めです。
 とにかく先入観なく映画を楽しみ「じーちゃん格好いい!」と拳を握り、本を読んで「映画に劣らぬすごいじーちゃん」と細部の知識を仕入れ、再び映画を見れば「おおおっ。このシーンはっ!」と三倍楽しめるはず。この本単品ではバビビィィィィィイと突進する映画のあの空気感は掴めないと思うのでは少なめの三つ。Amazon商法みたいですが「合わせて楽しみたい」セットとして四つ半、かな。

 訳文が微妙に心許なかったり、専門用語が十分に咀嚼されないままに直訳されていたりもしますが、バート・マンローの魅力を損なうほどの問題もないかと思います。
 でもP.45のピストンの記述は少しヒドイかも。原文から混乱しているのかな。

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