『宇宙生命へのアプローチ』祖父江義明
宇宙生命へのアプローチ―宇宙文明に迫る銀河図書館構想
祖父江義明
誠文堂新光社
1890円
2007.5.2
★★★☆☆
雄大で楽しい話でした。太陽系の起源から始まり宇宙全体の中での、銀河系の中での太陽系の位置づけを説き、太陽がごくありふれた星で、かつ地球も特別な環境にはない惑星であることを説明します。
そしてお馴染みのドレークの方程式。
これまでに読んだこの手の本と少し違うのは「連星ではない単独の恒星には惑星は必然である」という説明から比較的高い文明の発生率を唱えているところ。ううむ。地球外文明について非常に楽観的でセーガン的な感じです。でもこの本を読んでいると星がひしめいている銀河中心部ならば確かにお隣の恒星系に別の宇宙文明があってもおかしくない気はしてきます。ほんの数光週間の距離にとなりの太陽があるのだそうですから。
そして唱えられる銀河図書館。これはアイデアは面白いし、実現すればいいなとも思うし、SETI計画で検出されちゃったりしたらさぞかし楽しいとも思うのですが、前提となっている「文明は必然的に情報を外部に発信する」がいまひとつ納得が行きません。文明そのものが抱える全情報量はどの程度なのでしょうか。一方向の銀河間ネットワークはどの程度の情報転送能力を持つのでしょう。なんというか、大海にボトルメールを投げ込むような心許ない話に思えてしまいました。
でも心許ないだけに夢を感じさせもします。電波によって送り出され、継承されていく文明。そんなバトンが続いて行くことを想像するだけでも楽しい。
幾何学的な説明が文章だけでぴんと来なかったり、誤字が目立ってしまったりする残念な部分もありましたが、太陽系の起源から銀河図書館構想まですっきりまっすぐに気持ちの良い説明で繋いでくれた読み物でした。天文学に携わる人ならではの広く、長く、そしてちょっとアバウトな視点で大きな流れをざっくりと掴み取っているのだな、と面白く思えました。
天文学者が大まじめに唱える夢のある話に興味のある方にお勧めです。
自分だったらどんな手段で銀河図書館にデータを収録するだろう、などと想像を巡らせてみるのも一興。電波で送り出すだけが銀河図書館ではないはずですし。
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