『火星 赤い惑星の46億年史』フランソワ・フォルジェ他
火星-赤い惑星の46億年史―火星の科学入門最新版
フランソワ・フォルジェ/フランソワ・コスタール/フィリップ・ロニョーネ著 水谷仁訳
NEWTONムック
2009.2.20
2499円
★★★★☆
「火星の科学入門 最新版」とサブタイトルがついていますが、このムックには2008年に活躍したアメリカの探査機フェニックスの成果は盛り込まれていません。2007年10月にEU圏で刊行された『Planet Mars: Story of Another World』の改訂版を訳したものだからです。といってもフェニックスの成果を取り込んだ研究結果が登場するのはこれからでしょうから、最新の火星観が描かれていることに間違いはないと思います。
内容的には以前のニュートンムック『最新探査機がとらえた火星と土星』の火星記述部分の最新版に相当するかな。こちらの新ムックがあればOK。昨年末に感想を書いた『火星の生命と大地46億年』と若干被る部分もありますが『火星の生命と大地46億年』は地質を中心に火星を捉えた本で文章中心ということもあり、今回紹介のこちらのムックは方向性が少しばかり違いました。
特徴としては
- 図表が豊富
- 地質、気象、天文の幅広い視点から解説
といったあたり。
特にグラフや図解の豊富さが魅力で、示されているグラフをじっくりと眺めると火星環境が感覚的に推測できてきます。本文の解説に対して適切な図が吟味されている印象。A4版フルカラームックという体裁を目一杯生かしている本です。店頭では「160ページで2500円弱って高いな」と思ったのですが、読み終えてみたらとても良い資料であることがわかりました。ほぼ最新の火星研究がひとつにまとめられ、わかりやすく解説されているので火星に関心を持つ人には強くお勧めです。数学能力は必要ありませんがSI単位系をしっかり理解していて、グラフの意味を咀嚼できると面白さが倍増すると思います。
Part1 惑星の誕生 46億年前から38億年前
Part2 火星の青年期 40億年前から35億年前
Part3 ゆっくりとした火星の変化 38億年前から1億年前
Part4 気候と嵐 今日の火星
Prat5 火星探査 1650年から2050年……『火星 赤い惑星の46億年史』目次より
探査機に搭載された解析技術の概要や仮説の紹介も充実していて、自作小説『イシノネ』で火星最新知識のつもりで取り上げた内容も当たり前のように紹介されていました。むう。もっと情報収集に励まねば。
P.95の「バイキング2号のランダー地点(北緯48°)における火星の気圧」グラフの縦軸、単位がhPaになってるけどこれはPaの間違いですね。
写真内のオレンジ色の球体は3D立体パズルの火星儀。
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