『あまがみエメンタール』瑞智士記
『あまがみエメンタール』
瑞智士記
一迅社文庫
2009.2.20
650円
★★★☆☆
キョーレツ。
「リコね、ココちゃんの――がいちばん好き! やぁらかくて、とっても甘いの!」
P.64より。一部伏せ字
ずぎゅーんときてしまいました。
最初の方、甘ったるい口調が少し苦手かな、と思っていたのですが効きました。
悶えました。
誰かに噛まれたくなったので手近なところで猫のお腹を過剰にかいぐりしてモフり返しされてきました。
タイトルに含まれる“エメンタール”は『トムとジェリー』など欧米漫画で見るスイスチーズのことだと思うのですが、よくぞこんなタイトルを思いついたって感じです。語呂も妙にいい。
文章やキャラは同著者の『幽霊列車とこんぺい糖』(感想)よりライトノベル度・高。シーン的には際どいというかぶっちぎりというか……。そう、
今月の一迅社文庫は色々とトばしていますよ
という折込チラシの売り文句の通りです。
百合度に関しては文句なしのガチでサービスシーンてんこ盛り。登場キャラも女性オンリー。
百合物であっても「アイリス」レーベルでない理由は読んでなんとなくわかりました。これは確かにオトコノコ向けかと思います。胸の話をはじめとする思春期の女子的エピソードは下品にならないようにキレイにまとめてありますし、女性読者にも違和感や不快感はないと思いますが、少女小説的な空気ではないです。
ともあれ、この話は『百合姫』で百合好き読者を抱えた一迅社でなければ出せなかった話かと思います。
恋愛色というよりも“共依存”の色が濃かったかな。お話的にはきっちり完結していますが、もし続編が出るとしたら大人の恋愛としての心の手続きを踏んでいく二人が見たいな、と思いました。でもそうなるとライトノベルではなくなってしまうかな。
読み進めてから見直すと「お?」と思ったりもする表紙イラストもいいですね。
今回も限りなく四つ★に近いの三つ★ですが、惜しいところで私の偏った好みにジャストフィットしなかったためです。
ですが同著者の『幽霊列車~』やアサウラの『バニラ―A sweet partner』と並んで百合ラノベでは必読かと思います。少なくとも百合好きであればハズレということはありません。お勧め。
★ ★ ★
一迅社の公式サイトにはまだ情報がないようですが、巻末と折込広告に「一迅社文庫大賞作品募集のお知らせ」が刷られていました。巻末には以前から予告はありましたが、先月刊行分あたりから詳しい物に改訂されたようです。おおまかに抜粋すると
- 250~350枚
- 締切:2009年9月30日
- 十~二十代向けのエンターテインメント小説(SF、アドベンチャー、伝奇、ファンタジー、ミステリ、ホラー等)
- 同人、ネットへの既発表・他賞投稿歴のある作品は要申告
詳細は……まあ、投稿しようと思っているなら出版社の傾向を掴むためにも自分で本を買って確認すべきなのでしょう。割と細かなことまで書かれた「募集のお知らせ」でした。
ん~。「アイリス」とか「百合」とか分けて募集しないのかな。
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