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SONY VAIO type P その3・小説書きツールとして

 モバイルで小説を書く道具としてVAIO type Pを評価してみます。

キーボード

 テキストライティングを考えるときにもっとも気になるのがキーボードの使いやすさ。

打鍵感
 ボディの剛性感は高く、キーが底突きしたときのたわみも少なめでノートパソコンの中ではかなり優秀な打鍵感。キーストロークは一般的なノートパソコンよりさらに短いようですが気になりません。
 FJキーのホームポジションマーカーが小さめであったり、キートップが真っ平らであるためにタッチタイプで打っていると「指が正しい位置にある」ことがわからなくなってミスタイプを誘発するのが惜しいです。
 キートップはカチャつきもグラつきもなくきっちり。押下圧は低め。
配列
 これはローマ字入力者とJISかな入力者とで評価が分かれそうです。
 ローマ字入力者には配列的に問題を感じるであろう部分はないはず。半角/全角キーが妙な位置にあること以外は違和感はないと思います。
 問題はかな入力。私はローマ字入力でも一応打鍵はできるのですが「できればかな入力したい」派です。その観点からするとtype Pの配列はイマイチ。右手小指のへー゛゜けむろが小さいですがそれはあまり問題ではなく、右Shiftと文字キーの間にキーが割り込んでいるのが厳しいです。ぁぅぇぉぃっ右Shiftを必要とするのですが、どうしても右Shiftを間違えて押してしまいます。今のノートパソコンでは当たり前になりつつある矢印キーの配置ではあるもののJISかな入力者には非常にツライ配置。これは慣れてもいつまでも誤打鍵が残りそう。
タイピング速度
 では実際にどの程度の速度で打鍵できるのか。
 タイプウェルというタイピング練習ツールで打鍵速度を測ってみました。三回ほどのチャレンジで「基本常用語:ランクSC@国語K」が出ました。277打/分程度。やはり右Shiftが足を引っ張ってなどのミスは多いです。打っていてホームポジションがわからなくなるのもネックかな。
 小説を書くのに打鍵速度はあまり関係ないのですが、人前でタイプする時など打鍵が速いと見栄を張れます。……無意味。
Typewell @ type P

ポインティングデバイス

 トラックポイントタイプのポインティングデバイスで操作感もまずまず。ただし、「プレスセレクト」という機能はイマイチ。これはスティックを軽く押しこむとマウスクリックに相当する動作をするのですが、設定を色々試してみても思い通りに操作できません。
 ポインティングの左右クリックボタンは少し硬めです。キーボードの押下圧とバランスが悪い気がします。またクリック音が大きめなので静まりかえった図書館まどでは響きます。キーボードが比較的静かに打てるだけにここもバランスが悪いかも。
 まとまった時間作業するならばマウスも用意したいところ。ちょうどMicrosoftからBluetoothの小型マウス『Microsoft Bluetooth Notebook Mouse 5000』が3/27に発売予定のようです。価格もBluetoothマウスとしては手頃なので購入するつもり。(※と思ったのですが実物を触ってみたら思ったより大きくて持ち運ぶ気にならず購入断念)
 type Pでの使用には合いませんが、デスクトップPCでは 『Logicool Trackman Marble TM-150』というトラックボールを使っています。トラックボールは細かな作業には向かないものの、大画面でポインタを大きく動かす用途には快適です。type Pに合うような小型で使い勝手の良いトラックボールは無理なのかな。

画面

20090312_02 1600x768のワイド液晶はアプリを横並べにして使うのが合っているようです。右の画像は秀丸で文章を縦書きにしアウトラインツリー表示させたものと、辞書ソフトを並べて表示したところ。大きめのフォントを使っているので文字のアウトラインもきれいです。
 Windowsのタスクバーを右クリックすると「左右に並べて表示」というウィンドウ整列機能があるのですが、type Pではキーボード手前のショートカットキーにこの機能を割り振っていて使い勝手がいいです。

 眼のいい人でもWindowsのデフォルト解像度(dpi)設定では全般に文字が小さすぎると感じるはず。システムのバックアップを作成したら110~120dpi程度に設定変更してしまうのがお勧めです。画面が多少狭くなりますが文字が見やすくなります。

 液晶そのものは表面がグレア処理で背後に窓や照明を背負っていると映り込みがありますが、それ以外は特に問題なし。周囲の光の色温度変化(電球であったり蛍光灯であったり)があっても画面の色はあまり影響を受けません。

無線LAN

 アンテナの感度は良好。でも小説を書くのには無用。
 私はネット環境があるとついつい遊んでしまうのでデータの同期以外では封印しています。Wikipedia等のネット辞書の類はEPWING化しHDD内に置いて利用するのがお勧め。

起動/終了

 主な利用の仕方はスリープ/休止状態で、ゼロからの起動はWindowsUpdateの時くらい? スリープとスリープからの復帰は2~3秒なのでパソコンとしては文句なし。休止状態は入るときも復帰するときも一分ちょっとかかります。パソコンとしてはこんなものなのでしょうが遅すぎてスリープ中心での利用になりました。

ソフト

 テキスト編集に使うアプリケーションは非力なAtomでもへっちゃらでした。

一太郎2008
 イメージ編集モードでの操作も、校正機能もまったく問題ないレスポンスで動きました。これでモバイルでも効率的な校正作業ができるゾ。縦書き原稿をイメージ編集モードで表示するとやや縦が狭く感じることが多い。(一太郎2008レビュー記事⏎
ATOK2008
 大きな問題はなし。デスクトップで設定したATOKの環境をそのまま引っ越してきました。文字入力中に反応が悪くなることもあって、イライラすることがあります。う~ん。(3/19追記:ATOKの[環境設定]-[辞書・学習]タブ内の「オンメモリ辞書」を有効に。入力が格段に快適になります)
 サスペンド/休止状態から復帰するときにかなロックが解けていて一度別ウィンドウにフォーカスを移さないとかな入力に戻れない不思議現象が発生します。これはATOKの問題かな。
OpenOffice.org
 こちらは難あり。元々起動時のHDDアクセスが多いソフトなのですが、type PのHDDではかなり待たされる感じです。WriterもCalcもいったん起動してしまえばどうということはないのですが。
秀丸
 問題なく軽快に動作。ATOKや一太郎もそうですが、デスクトップPCで使っていた環境設定ファイルを持ってくるとスムーズに環境を移せます。
EBWin
 EPWING辞書検索ツール。ソフト自体は軽快ですが、ここでもHDDが足を引っ張って検索ワードの入力から結果表示まで二拍ほど待たされる感じです。(使用辞書類紹介記事⏎
 秀丸との連携で「マクロで選択範囲をEBWinで検索」というのをやっていたのですが、Vista環境だとなぜかこのマクロ経由でのEBWin起動がやたらに遅い。というわけで他のソフトとのバッティングもあってこれまでは避けていたEBWinのクリップボード監視機能を使ってみたら比較にならないくらい高速でした。むむむ。
adobe reader
 ZaurusではあきらめていたPDFがtype Pではそこそこ実用的。readerの起動は少し重いですが、いったん起動してしまえば表示も検索自体もスムーズです。高解像度の画面と相まってスキャンデータとの相性は良好。画面の縦が狭いのでスクロールしながらの利用になりますが、ScanSnap(レビュー記事⏎)で作成した資料類がモバイルで活用できるのは気に入りました。実はPDF利用がtype P導入の一番の動機。Windows Searchとのコンビは便利。
 ただし、集中してのデジタル読書用途には向かないです。あくまでも資料の参照用程度。
 店頭モデルはHDD容量が60GB、実際にデータ格納に使えるのは40GB程度なので大量にスキャンデータを溜め込んでいる人は携行するデータを絞り込む必要があります。データの取捨選択をせずに丸ごと活用するのがPDF+デスクトップ検索の醍醐味なのでこの点では残念。
Windows Search
 WindowsVistaからOSにビルトインされたデスクトップ検索機能。type Pのカスタマイズでは必ずといっていいほど「インデックスの作成を停止」すると軽くなると書かれていますが、透明テキスト付PDFの資料をたくさん抱え込んでいるならば利用しない手はないです。バッテリ駆動時にはインデックス作成もほとんど動かないので邪魔にもならないはず。
 FoxitPDFのiFilterを使用。標準のPDF用iFilterは透明テキストをうまく拾ってくれないようでした。何か設定があったのかな。
 ひらがな・カタカナのみで構成された数文字の単語をうまく拾ってくれない癖は以前からのWindowsSearchと変わらず。
同期センター
 モバイルPCとデスクトップPCのファイルの同期はVistaから「同期センター」「オフライン・ファイル」という機能が搭載されて便利になったと聞いていたのですが、type Pに搭載のVistaHomeBasicでは「オフライン・ファイル」が使えませんでした。がっかり。WindowsVista依存の機能でXPのデスクトップやZaurusとの同期が取れなくなるようですし、結局今まで使っていたRealSyncというツールにお世話になることに。

バッテリ

 小さなノートパソコンは持ち歩いてこそ。ですが標準のSバッテリでは三時間程度しか動作しません。長文テキスト書きにはぜんぜん足りません。Sバッテリの二倍の容量のあるLバッテリ必須。本体をSONYSTYLEでオーダーメイドするならば最初からLバッテリ装備もアリだと思います。あ、SONYSTYLEにはケースとLバッテリの割安セット商品もあるようです。

まとめ:小説書きツールとして

 高解像度の液晶に大きめに文字を表示し、辞書ツールと横並びにして使うととてもリッチなテキスト編集環境となります。画面自体は小さいので文字を大きくして使うのが無難。(800x600ドットなどに表示を落とすのではなくフォントスケールを標準の96dpi→110~120dpiに)
 純粋にテキストのみを編集したい人よりも「辞書ソフトを常時併用したい」とか「スキャンデータの資料を利用したい」タイプの書き手向きだと思います。テキスト編集オンリーに集中したい人はポメラも候補になるんじゃないかな。

 さらにもうひとつ弱点が。それはタフネス。Let's NoteやZaurusのような頑丈さは感じられず手荒に扱ったらあっさり壊れてしまいそう。華奢というほどではありませんがショルダーバッグにそのまま放り込んで満員電車に乗る気にはなれません。せっかくの薄型ボディなのに頑丈なケースが必要では本末転倒な気が……。

 そして最大の問題点は「パソコンに詳しくないとやってられない」点。

  • Windows Vista
  • あまり速くないCPU
  • 遅い小型HDD
  • テンコ盛りのプレインストールソフト

の組み合わせは反応の悪さにうんざりできること間違いなし。マニアな知識は必要ないですが、根気よくあれこれいじってやらねば快適に使えるようにならないあたりに壁の高さを感じます。
 Windows7が登場してからがtype Pの本領発揮であるのかもしれません。

 HDDモデル購入後の印象としては、評判通りSONY STYLEで買えるSSD搭載モデルが良かったような気がします。市販のSSDよりも安価なようですし。(type Pに換装可能なZIFタイプのSSDはかなり割高らしい)

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