『青年のための読書クラブ』桜庭一樹
青年のための読書クラブ
桜庭一樹
新潮社
2007.6.30
1470円
★★★★☆
タカハシマコによるコミカライズ版を読んで「読まねば!」と手に取った原作本。大当たりでした。
コミック版の第一巻では原作の第一章と第三章が取り上げられていたのですが、読み比べて驚きました。嬉しい驚き。
内容面ではほとんど変わらないのですが、行間から薫る空気感がぎっしりと漫画化されていて、希釈されがちなメディア展開の中では珍しいくらいに濃厚なコミカライズではないかと思います。桜庭一樹の文章の持つ雰囲気とタカハシマコの雰囲気と、どちらも殺さずに漫画化ができているこの幸せ。
原作既読でコミック版を読んでいない方には是非コミック版をお勧めしたいし、コミックだけ読んでいてこちらの原作を読んでいない方にも原作をお薦めしたいです。
お話自体は聖マリアナ学園というお嬢様校の読書クラブを舞台に、時系列はばらばらですが、変曲点を捉えた連作短編として学校創立から最後の時までを綴ったもの。甘やかな少女の園と言うには少々雄々しいというか、凛々しいというか、演劇的な雰囲気の漂う聖マリアナ学園。互いに“ちゃん”付けをして幼子のように甘えあうお話とは程遠く、それでいて粗野にならないあたりに少しヅカっぽい、創作における少女の園特有の空気が漂います。倉橋由美子や恩田陸の、少女を主題にしたお話が好きな人には楽しめるのではないでしょうか。
原作とコミック1巻のもっとも大きな違いは「撃つように撮っていない」の部分かと思うのですが、この部分は私はコミック版のタカハシマコに一票。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント