『コミック百合姫』Vol.16 & 『百合姫Wildrose』Vol.3
コミック百合姫 Vol.16 2009 SPRING
一迅社
880円
★★★★☆
500ページを超えて分厚いです。しかもどの話も面白かった。『つぼみ』というライバルができてテンションが上がったのでしょうか。以下、各タイトルの簡単な感想と紹介をごたまぜで。掲載順です。
- 飴色紅茶館歓談 藤枝雅
- ややややっ。前号でクライマックスかに見えたのですが「そんな基本的なとこからかいっ」と突っ込みを入れたくなる不思議系がヒロインだったのでした。
今号にはこの「飴色~」のドラマCD付録があったのですが、これ、聴いていてむちゃくちゃ恥ずかしいです。脳味噌浸食されてる感が。5/18発売の『飴色~』単行本限定版の強烈なプロモになりそう。あ、Amazonは限定版の予約分、これを書いた時点で捌けちゃってるみたい。
- くちなし 日輪早夜
- Vol.12の「さくら文通」で印象の良かった大正浪漫風再び。この作者の作風にあっているような気がします。
- スミレちゃんの涙 タカハシマコ
- タカハシマコは黒タカハシマコと白タカハシマコがいるはず。今回は黒かなと思いきや……。二冊目の百合単行本が出せるほどはまだ原稿は溜まっていないのかな。二年弱前の『乙女ケーキ』で装丁も中身もとても印象が良かっただけに次の単行本が待ち遠しい。
- Girl's End 藤生
- 藤生の前回掲載作からするとかなり意外感のある話でした。今回の舞台は怪しい感じのガールズ・バー。セクシャリティ問題へのアプローチも期待できそう。続編のあるプロローグに見えなくもないけれどどうなんだろう。前回掲載作も続編がありそうな気がしたんだけど。
- 百合の花粉は落ちにくい 三浦しをん
- 楽しみにしている連載エッセイ。今回はこうの史代の『街角花だより』を取り上げつつ、シェイプアップと悦楽を秤にかけます。そしてとってもフキンシンな想像を巡らして読者の笑いを誘うのです。
- クローゼット 倉田嘘
- 『百合姫S』で精力的に短編を発表していた倉田嘘が本家『百合姫』にも。応援したくなる作風というのはあるようで、この作者がまさにそう。なんでだろ。今回は高校の書道部のお話。同性を好きになる自分をカミングアウトして始めた部活動だったのけれど……と。
- 消し去る恋と願いごと かずまこを
- 消しゴムに願い事、という小ネタの短編。『純水アドレッセンス』では生真面目で変わり者のななおにはらはらさせられましたが、今回は割とプレーンというかほのぼのというか。
- したたかでいて、不器用な 東雲水生
- 猫目堂シリーズ。今回のテーマは距離感と良いところを突いてきます。少女と青春の話には欠かせない要素でヒロインたちと同年代の女子には強く共感できる人も多そう。
- ソルフェージュ さわななお
- 百合&音楽ゲームのコミカライズ。あ~、PSP買ってみようかな~。
- 天気予報は 藤たまき
- 前回が雪の話で今回は春。ヒロインの一方の花江はきっと匂いフェチ。
- 水色シネマ 乙ひより
- 連載第二回。ぶにぶにされてしまう多恵ちゃんは一応ヒロインなのでした。
- この願いが叶うなら 袴田めら
- シリーズ完結編。さらにドロドロした人間関係になりそうな予感がしていたのですが、一安心。でも少し物足りない気もするし。と思ったのですが、連載分をまとめて読み返すと十分にドロドロでした。
- ハニーマスタード 森島明子
- 作中に登場したモチコチキン食べたい!と検索したところ実在するハワイアンフードなんですね。ネットのレシピを参考に作ってみたのですが、このパリパリ感は記憶にあるゾ。祖母の鶏唐がこんな感じだったような。
無自覚女たらしの亜麻井さんが格好良すぎる。って八月に新刊出ると予告がありますが、作者仕事量スゴイことになってるのでは。 - 初恋構造式 天野しゅにんた
- 構成がばっちりまとまっててちょっと前に新人賞入選した人とは思えない完成度。片想いしていた相手に子供ができ失恋。その相手にかけた呪いが「君の代わりにおなかのその子が私を好きになればいい」。ぉぉ、光源氏計画の呪いとはナイスアイデア。そういえば最近は「光源氏計画」なんて表現も聞かないような。
- アップルデイドリーム 城之内寧々
- いつの間にか由真のデレが公認状態。いつからだろう、と思ったら「毎日20回電話」の回あたりから? 関係が安定してきたためか薫のヘタレにやきもきしがちなこの数回。今回の最後のコマのセリフは読者の気持ちかも。でも「そこで引くな!」だの「ダメな人だなー」だのと同僚たちにヘタレ具合を指摘される薫のあっさりさ加減が自然に感じられるのは――もしかして私もヘタレなのでしょうか。
- 響命 花津やや
- 任侠モノというかマフィアモノというかバイオレンスな感じ。世界観としてはライトノベルの『黄色い花の紅』(アサウラ)
を連想しました。主役二人は格好いいし絵になっているけど男の悪役・脇役のザコっぽさに百合姫の賞に投稿すべくして投稿した作者なのだと妙な納得が。
- 私立カトレア学園・乙女は花に恋をする つたえゆず/沢城利穂
- カラー3P漫画+紹介記事。一迅社文庫アイリスからの新刊のプロモ企画かな。小説本も買ったので近いうちにレビューできるはず。(感想)
- 紅蓮紀 武若丸
- 『百合姫』連載陣で一番漫画らしい漫画だと思うのです。毎回盛り上げて盛り上げてとどんどん盛り上げて「もうすぐ最終回?」といつも思うのですがまたさらに盛り上げるというパワフルさ。次回は一息入るかな? 今回は大きめのネタ明かしをして一段落の雰囲気です。
- 昔も今もこれからも 竹宮ジン
- 前回掲載された一迅社コミック大賞作のアナザーサイドストーリー。基本的にシリアスな話なのだけれど要所要所で登場するかけあいにお笑いコントの雰囲気が。
- インプリンティングのコーヒー 四ツ原フリコ
- 匂いは記憶と強く結びつくそうですが……でインプリンティング。受賞作からの一連の連作と同じ舞台の続編です。この作者の前回は記憶喪失の話でしたが、記憶とか思い出とかそういう話が得意なのかな。
掲載作がいっぱいで短くまとめたつもりの感想もけっこうな分量に。
百合姫Wildrose Vol.3
一迅社百合姫コミックス
890円
2009.4.18
★★★☆☆
やや成年誌寄りのレディースコミックのような表現でベッドシーンが前提。男性向け成年誌ほどではないですが18歳以上を推奨したいです。
Amazonには商品写真がなかった(4/20時点)ので自前で。華やかな表紙です。
エロ物は感想が書きづらい。
とりあえず「なんで玄鉄絢がここにいないんだー!」と叫びたいです。『少女セクト』で描かれた絡み絵は体の線が綺麗に見えるシーンが多くて大好きなのに。
Wildroseも濡れ場限定ではなくて、裸を思う存分描いた肉体美追求グラビア的な作品があっても良いような。
新顔作家からピックアップで感想を。
大槻ミゥは百合姫系列では初めてかな? BLの描き手というイメージでしたが、うう、イチゴミルク見るたびに思い出しそうなネタをかましてくれました。
高橋依摘は5/18にいきなり新刊予告があり、これまで『百合姫』での連載もなく「はて?」と思っていたのですがケータイ配信作からのちょっとえっちな系列の単行本のようです。Wildrose掲載作はプロモ的に機能しそう。絵柄自体は少女漫画度高めですが、引きの構図が多くてアップよりも「いいのかな、これ?」と思ったり。
花田マコは8ページでコミカルタッチ寄り。
天野しゅにんたは新人賞の百合姫部門の人ですね。裸が手慣れた感じ。同人で描いていた人なのでしょうか。
百合姫本誌からは柚葉も。この人は独特のレトロな雰囲気。ああ、イジワルキャラいいなぁ。『大草原の小さな家』でネリーのファンだった私には痺れるものがあります。
Vol.3になりましたがまだ想定読者像がよくわからなかったり。各々の作家のファン向けという印象でした。これまでの三冊の中だとVol.2の城之内寧々の話が一番印象に残ってます。
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