『少女の友』創刊100周年記念号
『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション
実業之日本社
2009.3.21
3990円
★★★★☆
『少女の友』という雑誌は明治~昭和前半の女学生文化の話ではよく登場する雑誌で、タイトルや表紙写真くらいは知っていましたが、その中身はあまりよくわからないまま、断片的な知識のみで想像していました。が、先日本屋で見覚えのある中原淳一のイラストの表紙が平積みになっているのに遭遇。4000円近い価格に躊躇しましたが、百周年記念の復刻だそうで今後同じような機会がもう一度あるかどうかわかりません。
MicrosoftのBluetoothマウスの実物が予想外に大きくて購入を見送って(と自分に言い聞かせ)こちらを買ってしまいました。
装丁はソフカバー調で化粧箱入りです。
内容は副題に書かれているとおり過去の復刻が主なのですが、『少女の友』と関わりの深い文筆家たちから寄せられた文章や、廃刊から50年以上を経ての読者同窓会「友ちやん会」の復活レポートが掲載されていました。当時の読者なのでおばあちゃんばかりなのは当然ですが、誌面に登場したそれらの人々が今もしっかり“少女”であり続けていることの窺え、「なるほどこれが少女ネットワーク」と先日読んだ『「少女」の社会史』を振り返ったのでした。
復刻の内容は川端康成の「乙女の港」連載第一話や吉屋信子の短編「小さき花々」、村岡花子の「友情論」と刊行当時の人気記事を集めているようです。
中でも驚いたのが読者コーナー。こういうことを言うのはなんですが、現代の少女たちでは到底太刀打ちできない教養の密度です。勉強自体は、あるいは教育制度の整っている現代の少女に分があるかもしれませんが、文章力の差は圧倒的、詩歌や書に積極的に取り組む姿勢も比較にならないレベルで、教養主義の最前線に立ちつつ、少女にも愛された雑誌だったのだなと溜息の出る思いでした。
女学校出身のおばあさまのいらっしゃる方、本の存在を教えて差し上げると喜ばれるかもしれません。
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