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『零戦の秘術』加藤寛一郎

零戦の秘術
加藤寛一郎
講談社プラスアルファ文庫
1995.4
1029円

★★★★☆

 ずいぶん前にハードカバー版で読んだのですが、再読。
 文庫化されたものも絶版のようで、BookOffで仕入れてきました。

 航空機+制御→加藤寛一郎、というイメージが湧くくらい私にとっては印象の深い著者です。最適制御という言葉を知り、ベテランの技、奥義といった言葉であっさり片付けてしまいそうな乗り物の操縦技術について科学の視点を与えてくれた一連の本を書いた人です。この本のように一般向けの物もありますが、航空宇宙関連の最適制御の専門書も書いていて、登場する数学に頭を悩ませながら独習した学生時代を思い出します。

 今回の『零戦の秘術』では部分的に「制御変数が区分的に連続な関数で有次元ユークリッド空間における閉領域内の値をとるとき、最適な制御はハミルトニアンを最小にする」とかぽろっとありそれを「原理自体は簡単である」とか書いちゃって「え~っ」と思わされますが、『大空のサムライ』のようなヒコーキ物が楽しめる人であれば概ね楽しく読める読み物かと思います。タイトルは『零戦の~』となっていますが内容的には航空機の格闘戦技術に対するエッセイ的なもので、著者の加藤寛一郎氏は現代版零戦物の小説も(一作だけですが)書いていたりする方で文章はとても読みやすいです。

 アニメ『紅の豚』でも登場した空戦技術“ひねりこみ”。
 『大空のサムライ』の坂井三郎が得意とした“左ひねりこみ”がどのような技術であったのかを坂井三郎本人への取材を元に明かそうとする一冊です。
 絶版になっているのは惜しい面白い本。
 大きめの図書館には置いてあると思います。オススメ。

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