『〈少女小説〉ワンダーランド 明治から平成まで』菅聡子
〈少女小説〉ワンダーランド―明治から平成まで
菅聡子
明治書院
2008.7.10
1575円
★★★★☆
もっと早く読んでおけば良かった。
面白かったです。先日読んだ『「少女」の社会史』も少女雑誌をデータとして明解な分析を見せたとても印象深い少女論の本でしたが、こちらもコレダ!と感じる一冊でした。『「少女」の社会史』はタイトル通りちょっと教科書的な香りが強いですが、こちらの『〈少女小説〉ワンダーランド』は読み物として楽しめるよう構成された「少女ってなんだろう、少女小説ってなんだろう」という本でした。もちろん過去の名作紹介もありますが、中核となっているのは少女小説の歴史と「少女」イメージの追跡です。
特に印象深かったのは管聡子による本田和子のインタビュー。本田和子はここ最近読んできたような現代の少女論研究の発端となった人のようです。
一人の著者による記述ではなく、少女研究に携わる様々な人の原稿を集めた物ですが、寄せ集め感はなく、編者の力量が窺える心柱の通った内容でした。
以下に目次を引用しておきます
- 〈少女小説〉の歴史をふりかえる 菅聡子 藤本恵
- 〈少女小説〉とは何か
- 〈少女小説〉の黎明……明治期
- 少女による少女のための〈少女小説〉の出現……大正期
- 〈少女小説〉の成熟……昭和前期
- 戦後から平成へ……昭和後期以降
- INTERVIEW 1 いま、少女を語るということ 本田和子
- COLUMN 少女的なるもの 1 尾崎翠 内藤紀子
- 〈少女小説〉をめぐる文化
- 〈少女小説〉の系譜
- 『若草物語』と日本の少女 ドラージ・土屋浩美
- 『おしながおじさん』と1912年のモテ系女子大生 越智博美
- 戦時下の少女小説――敵対者の消滅 藤本恵
- 現代文学に見る「少女小説」のミーム 斉藤美奈子
- 少女文化の諸相
- 私たちの居場所――氷室冴子論 菅聡子
- 少女小説からジェンダー・フリー小説まで――ハリー・ポッターシリーズをめぐって アマンダ・シーマン
- イッツ・ショー・タイム――宝塚・ジャニーズ 根村直美
- 「サッフォ」の眼差し――『花物語』と挿絵 渡部周子
- INTERVIEW 2 コバルト文化と少女たち 田村弥生
- COLUMN 少女的なるもの2 野溝七生子 河原塚瑞穂
- 名セリフで読む〈少女小説〉名作ガイド
『花物語』 『紫苑の園』 『赤毛のアン』 『秘密の花園』 『あした真奈は』 『グリーン・レクイエム』 『なんて素敵にジャパネスク』 『丘の家のミッキー』 『山田ばばあのに花束を』 『つかまえて』シリーズ 『まんが家マリナ』シリーズ 『さようなら こんにちは』 『時の輝き』 『デルフィニア戦記』 『十二国記』シリーズ 『マリア様がみてる』 『レヴィローズの指輪』 『彩雲国物語』 『〝文学少女〟』シリーズ
- COLUMN 少女的なるもの3 森茉莉 倉田容子
- 海外〈少女小説〉事情
- COLUMN 少女的なるもの4 金井美恵子 竹内佳代
- 少女文化のキーワード
この目次の一項目でも興味を引かれたならば読んで損はないはず。
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