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『大絶滅―2億5千万年前,終末寸前まで追い詰められた地球生命の物語―』ダグラス・アーウィン

大絶滅 ―2億5千万年前,終末寸前まで追い詰められた地球生命の物語―
ダグラス・アーウィン:著 大野照文:他訳
共立出版
2009.6.24
3675円

★★★☆☆

 ぎっしりと内容の濃い本でした。でも、読みづらかった。すごく。

 恐竜が巨大隕石の衝突で絶滅した、という説は多くの方が知っていると思います。「K/T境界」「イリジウム」「衝撃石英」といった単語に覚えがある人も多いはず。
 ですが、恐竜時代よりずっとずっと昔、古生代と中生代の境界――P/T境界(ペルム紀/三畳紀境界)で起きた大絶滅の事を知っているのはきっと古生物好きな人でしょう。約82%の属が姿を消した大異変で恐竜絶滅の大イベントと比べてもより大規模な絶滅であったそうです。巨大隕石衝突よりすごいことって何が起きたんだろう。

 この本ではそのP/T境界について大絶滅がどのようなものであったのか、原因はなんであったのかを、発掘調査に際してのエピソードを絡めながら様々な説を紹介します。特に最初のP/T境界の年代確定へのアプローチと最終章の大絶滅からの再興は興味深く読めました。崖を這いずり回って化石を採集し、同位体年代測定をし、人工生命的な「進化と淘汰」のシミュレーションをし、と土臭い事から理論家の仕事まで幅広い研究をこなしています。

 面白そう、と思えませんか。

食べるアサイーナチュラルパフェ ところが文章がわかりづらい。数式はなく専門用語は最小限、グラフや図解も豊富で読み物としての体裁が整えられているにも関わらず内容を理解するのに非常に体力を要しました。
 専門用語は少ないのですが必要とする知識量が多いようで、例えば「ホメオボックス遺伝子がどのような働きをするか」なんて知識がないと「ははぁ、アレを言いたいのだな」とわからない部分があったりします。専門用語やその解説を避けて簡潔に説明しようとして逆に何が言いたいのか推理が必要になっている感じ。文章そのものもあまりこなれているとは言い難くて、十行ほど読む内に混乱して慎重に読み返す、なんてことを延々とすることに。本文だけで文字ぎっしりの270ページ。

 読み物としては根気が必要ですが、内容的にはたっぷり楽しめました。情報量は多いです。グラフも充実していて文章の読みづらさを相当に補ってくれます。
 読みづらい科学解説書でもへっちゃらさ、という人にお勧め。

 脳への糖分補給もお忘れなく。

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