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『ダ・ヴィンチ』2009年9月号

ダ・ヴィンチ 2009年 09月号
メディアファクトリー
490円

★★☆☆☆

 『ダ・ヴィンチ』に百合特集があると聞いて買ってきました。結論から言うとこないだの『季刊エス』27号の百合特集の方がずっと読み応えがあったな、という印象です。

 「特集1 もう一度、メーテルに遭いたい」は楽しめました。あちこちのメディアで取り上げられてきた松本零士ですから、あまり詳しくない私でもすでに見聞きしたことのある内容と目新しい内容が半々くらいではありましたが力の入った特集でした。『999』三十周年だそうでネットでも割と露出があるみたいです。杏という女優さんがメーテルの格好をしたグラビアなどもありました。似合ってた。けどメーテルは松本零士の絵のままが一番いいな。

 そして期待の「特集2 はじめてのGLガールズ・ラブ」。
 む。後ろの方でページ数も少ないぞ。
 冒頭には宮本あや子のショートストーリー。百合SSのツボを押さえた良い感じの掌篇。そして二番目の記事は「かずまこを×森島明子対談」。百合オタ語りといった感じの和やかな対談でボリュームは見開き一面の半分くらい。面白かったけどちょっと物足りなかったです。せっかく百合ジャンルでの注目株の二人を呼んだのに百合萌え雑談だけではもったいない。もっと突っ込んだ創作秘話とか読みたかったなぁ……。あ、森島明子が青木光恵のアシスタントをしていたことがあるというのは初めて知りました。二の腕の付け根フェチであることも。
 雑誌の性格からすると割と良い小特集だったかな。

 特集以外の記事は……正直言うと私は『ダ・ヴィンチ』を「テレプシコーラ以外読むところのない書誌情報誌」と思っていたので予想通りという感じでした。でもちょっと前までよりはいいかな。今号は「明らかに読んでないだろ」みたいな書評が消えました。でもってやっぱりなぁ、という謝罪記事が。以下に一部引用します。

紹介文につきましては、実際の本を読んで書くことを基本としておりますが、紹介する本が新刊の場合などは弊誌制作スケジュールから本の入手が難しいことがあります。結果として、出版社からのリリースやインターネット上の情報を元に原稿を作成しているものが3割程度ございました。

『ダ・ヴィンチ』2009年9月号 「「今月の注目本130」コーナーにおける誤った内容記載についてのお詫び、ならびにコーナー改変のご報告」より

 編集部から外注ライターに出していた紹介記事に本の内容とまったく一致しないものがあり著者からの指摘によって明らかになった、ということなのですが、該当のコーナーよりもむしろ書評に「中身を読んでいるとは思えない書評モドキが紛れてる」って印象の雑誌でした。署名記事であっても「?」というのがちらほら。写真やデザインが優れているし、特集が割とツボを刺激してくれるので思い出したように買ってしまうのですが、そのたびに特集以外でがっかりさせられてきた印象が。
 カタログ誌的な性格の雑誌も必要でしょうから「読んでない紹介記事」はあっても構わないと思うのです。書評欄の方をなんとかすべき気が……。

 

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