『ひみつの階段』紺野キタ
ひみつの階段
紺野キタ
ポプラ社 PIANISSIMO COMICS
2009.8.5
各巻683円
★★★★☆
紺野キタの学園物名作『ひみつの階段』新装版です。
poplar comics版は持っていたのですが未収録だった二編が収録されたとのことで購入。判型が少しだけ小さく、三冊あったものを二冊にまとめたため少し厚くなってました。『ひみつのドミトリー 乙女は祈る』からは祥華学園の話のみを抜粋です。
未読の人への紹介として。
少女漫画の女子高物です。しっとりと落ち着いた雰囲気。大恋愛イベントがあるわけでなく(あ、ひとつだけありました)、大事件があるわけでなく、女子高の日常のファンタジーな部分を心地良く描いたお話。学園七不思議的なイベントはありますが、主役はあくまでも少女たちの日常。小学校高学年や中学の進路選択の時期にある女の子が読むと「女子校行きたい! 寄宿生活したい!」と言い出しそうな、そんなお話です。
女子校時代を懐かしく大切な思い出としている大人の女性の心にも響くはず。紺野キタの描く女子校世界は少女時代へのノスタルジーがたくさん含まれている気がします。
『赤毛のアン』や『小公女』、『家なき娘』といった少女小説を好む人にも楽しめる気がします。
紺野キタの作品が紹介されるときには「独特の空気感」という言葉がよく使われるのですが、未見の人にはこれが説明しづらい。絵柄と話の双方が醸し出す何かで、読まないとわからな。知人・友人に勧める際には「あ、この人ははまるはず」となんとなく判別が付くものの、あやふやな勘なのでネットだとどんな人に勧めればいいのかよくわからなかったり。書店でぱらぱらと覗いてみれば合う、合わないは明確になると思います。
『ひみつの階段』シリーズというよりは紺野キタ作品に関してこれだ!と膝を打った紹介記事があります。一部引用。
紺野キタほど、少女の聖性――美しく透明な部分も、残酷で醜悪な部分も引っくるめて――に迫った作品を描くひとは、ほかにいない。
三浦しをん「百合の花粉は落ちにくい」,百合姫Vol.9
二年前の季刊誌のコラムということですでに簡単には読めないのが惜しいところ。三浦しをんのこのコラム、とても読み応えのあるシリーズなのでいつか書籍化されるといいなぁ。脱線ですが。
poplar comics版との差異は「学園祭に行こう」「もうひとつの学園祭に行こう」「MAZE迷路」とあとがきが追加されたこと、かな。
「学園祭に行こう」では黄菜ちゃんのお兄さんが黄菜ちゃん以上に夢見がちな性格で、あの一家は両親ともにあんな感じなのかもしれない、なんて思ったのでした。三島カッコイイなぁ……。
次は『つづきはまた明日』の二巻でしょうか。楽しみ。
紺野キタ作品感想etc記事
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