カルボナードクラウン 1
東雲水生
双葉社
2009.8.12
630円
★★★☆☆
『初恋姉妹』
で『百合姉妹』『百合姫』の柱のひとつとなっていた東雲水生の単行本。『百合姫』では最近はちょっとダークな味付けもある「猫目堂」シリーズを描いていてそちらも『百合心中~猫目堂ココロ譚』
という単行本になっており、好感の持てる内容でした。
今回の『カルボナードクラウン』はケータイ配信で連載していたものを単行本化したようです。ケータイではネットに触れないので私は連載の存在さえ知りませんでした。Amazonで『GIRL FRIENDS 3』
を予約しようとしていた時に一緒に表示されて初めて気がつきました。
まず何より絵柄が可愛い。純正少女漫画系統の絵柄が好きな身には嬉しくなってしまう雰囲気。ローティーン向け少女漫画誌にしっくりきそうな感じ……かな。
ヒロインの通う学校は孤島の学園。全寮制の閉鎖環境。共学ではあるようなのですが、この舞台設定も少女漫画の王道です。そこに現れたのはスピネル王国の王子・王女である兄弟姉妹。ロイヤル物です。わがままなお姫様に振り回されてみたり、堅物の長男におろおろしたりとヒロインはてんてこまい。一巻の終盤近くまで「このまま普通の少女漫画なのかな?」と展開しつつそこはやっぱり東雲水生。百合ファンの期待に応えます。
帯にある「王位を巡る陰謀を背景に」という惹句はまだまだほのかに匂わせている程度ですが、二巻は波乱の予感。
ロイヤルファミリーの名が宝石で統一されていたり、ロリィタファッションのカタログ状態であったり、ちびきゃらが妙にはまっていたりと可愛い要素でいっぱいです。
表紙は帯があるとぐっと引き締まって見えます。ネット書店だと帯がなかったりすることが多いので店頭買いがオススメ。
★は三つにするか四つにするか悩んだのですが、読者を選びそうな気がしたので三つに。けっしてアクの強い話ではないというか、むしろ王道的ストーリー・演出なのですが、刺激の強さや意外性を求める人には合わないだろうな、ということで。表紙絵に惹かれた人にはお勧めできると思います。絵柄が内容の雰囲気をよく出している作者だと思うので。
主人公とお姫様との関係もまだプロローグって感じなので続巻に期待。あとがきによると二巻は「二年後……でしょうか」とあるので気長に待つことになりそう。