『yomyom vol.12』
yom yom (ヨムヨム) vol.12 2009年 10月号
新潮社
750円
★★★★☆
『yom yom 2008年 03月号』の「丕緒の鳥」に続いて小野不由美の十二国記シリーズの新作短篇「落照の獄」が掲載されているということで買ってみました。
お目当ての十二国記がとても良かった。面白かったです。
講談社X文庫WhiteHeartという少女小説レーベルからスタートした十二国記。実はさらにその前の新潮の『魔性の子』から始まっていたとはいえ十二国記が十二国記として成立したのは少女小説としてでした。その十二国記シリーズも今は少女小説の面影はほとんど残らないハードな中華ファンタジーに。登極間もない女王・陽子の姿を描いた前作「丕緒の鳥」。今作は「傾いている」と凶兆が示されながらも政情不明なままであった柳国の状況を連続殺人鬼・狩獺(しゅだつ)の裁判に絡めて描いたもので、十二国記ファン待望の最新話。
テーマは犯罪と更正と法律。狩獺は連続殺人犯であるようなのですが、十二国は天帝が理を支配する神の実在する世界。柳国の傾国と殺人鬼の出現、犯罪者と更正、国と法制度、理と情と多くの要素が複雑に絡められ鮮やかな文様を織りだしていきます。理を感じさせる整然とした構成、引き込まずにはいられない文章。やっぱり小野不由美は小野不由美でした。すごい。
雑誌全体を見渡せば読み切り小説が九本とエッセイ的な読み物が多数で連載はないので気紛れに手に取れる小説誌というスタンスのようです。エッセイでは瀬戸内寂聴や嶽本野ばら、インタビューの三浦しをんといった私的には馴染みのある作家たちが書いていたのも嬉しい。ちなみに三浦しをんはインタビュアーの側です。
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