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BSマンガ夜話 第37弾 志村貴子「青い花」

 12月24日に放送されたBSマンガ夜話は志村貴子の 「青い花」を取り上げていました。

 夏目房之介が冒頭でいきなり「わからない」と言い出して波瀾含みの展開となっていましたが、これはゲストの女性にすぱーんと魅力の核を言わせたかったのでは、と思いました。わからないと言いつつ夏目房之介は確信のある答えを持ってはいて、でもゲストも他のレギュラーも欲した答えを吐いてくれなくて……というちょっと切ない回だったのではないかと思います。

「百合の恋愛漫画に見えますが、
実は少女を描いただそれだけなんです」

なんて答えをゲストの女性達に期待していたのではないかな。
 『青い花』には同性愛を至上のものとする視点も少しだけ織り込まれていたりしますが、それそのものが少女の感性である気もします。同性愛者としてのフミ、思春期特有の感情で同性に思いを向ける京子、王子様キャラでありながら女々しい杉本先輩、ノンケならではの残酷さで「よしよし」とフミを抱きしめるあーちゃん。恋愛漫画であればヒロインは意中の相手とくっつくのは既定のはずですが、きっとこの漫画はキャラクター個々の少女としてのゆらぎだけがあってフミ×あーちゃんの関係の行方はそのゆらぎの彼方で定まっていないんじゃないかな、と。イメージとしての“少女”のサンプルが並べられている群像劇――吉田秋生『櫻の園』に近い話のような――。
 なんてことを番組を眺めながら思ったのでした。討論番組は見ている方もその中に加わっている気分になりますね。

 途中、司会役が「小説でこの空気感はありえないの?」と言っていたけれどあるよ!と叫びたかったです。吉屋信子(ちょっと饒舌か)、川端康成の『乙女の港』(再刊されました)、恩田陸、梨木香歩(風というよりは水の気配かも)。行間を空白で空けずとも、びっちりと書き込んだ文章の中に“風”や“木漏れ日”、“間”、“空気感”を感じられる作家はたくさんいるはず。むしろ『青い花』のような百合要素を持った少女漫画は少女小説の系譜で眺めた方がしっくり来るんじゃないかな。

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