所沢航空発祥記念館へ行ってきました。
桜がちょうど散り際で、あちこちで桜吹雪が舞っておりました。
まずは解説展示。
写真は江戸時代の浮田幸吉という人物による滑空飛行の様子。航空発祥記念館の模型はどれも妙に格好良くて絵になります。
飛行の原理を紹介するコーナーも割に楽しめました。理論紹介ではベルヌーイの展示がありましたが、ストークスやジューコフスキーも欲しかったかな、とちょっと思ったりして。翼の循環の様子が目で見られる風洞……は難しいか。写真でも微分に相当することをしないと視覚的には見えてこないのですし。
こちらは日本初の動力飛行ジオラマ。
徳川大尉が第一号、ということになっていますがその前日に試験飛行にも成功していたという話も飛行機本などでは紹介されているようです。
実機の展示は太平洋戦争以降、自衛隊で使われていた機体が中心で日本の航空史上もっとも華やかだった太平洋戦争直前~戦中の機体がないのは残念でした。
左の写真はフジT1-Bジェット練習機。ブタ鼻がカワイイ。
お目当てはこれ。
ニューポール81E2。練習機です。
右の写真は復元レプリカ。
下側からのぞけるエンジンの銅色のパイプは吸気管。排気管はナシでポートからそのまま外に排気していたようです。OHVに見えますがプッシュロッドは一本で、ヘッド上でシーソーのように吸気バルブと排気バルブを駆動していた模様。
星型回転式エンジンという第一次大戦前夜~大戦間まで小型軽量エンジンの主流であった形式で、エンジンそのものがぐるんぐるんとプロペラと一緒に回転します。キャブレターは回転しないボディ側にあり、混合気がエンジン内を通過してシリンダーに導かれるので熱せられて吸気密度が低くなってしまいそう。でもこれで80馬力あったそうです。「潤滑もしないバルブ周りでよくぞ……」と思わされます。しかも車やバイクとは違う常時全開運転が前提の80馬力。1920年代はじめ――と考えるとこのエンジン、めっちゃコンパクトで高性能です。
アメリカ製のレプリカって解説がありましたけど、これ、実際に飛びそうな感じ。ありとあらゆる部品が「機能するぞ」ってクォリティでした。
なぜニューポールのレプリカが飾ってあるのか、という理由はこれ。
こちらはレプリカではなく実際に日本の空を飛んだ当時の機体です。外板も翼も失われてしまって、わずかに骨組みとエンジン、プロペラだけですが当時の航空機がほとんど残っていない日本では貴重な機体のはず。岩田正夫という個人飛行家の飛行機であったそうです。
こ、こんな造りで飛んでいたんだ……。
木金混合構造なのでしょうが、締結部がフランジでのカシメだらけで建設現場の足場のようです。しかも金属部分はめちゃくちゃ重そう。主翼や脚の支柱は一応空力に配慮したような形ですが、もしかして中身が詰まった中実? 目を凝らして覗いてみた感じでは中空ではなさそうでした。
エンジンは機体に比べると投入されている技術水準がずっと高そうです。部品の造型はシンプル。現代の技術に比べるとメカニズムとしての魅力が強い気がします。
実物の展示品は長年お寺に保存されてきたとかであまり見映えがしませんが、この実機が空を飛んだ場面を見ていた人たちのインタビュー映像なども流されていて血の通った展示になっている気がします。
ロビーの吹き抜けに飾られていた会式一号飛行機。写真からだとわかりづらいですが、これプッシュ型のプロペラ配置で星型回転エンジンとエンジンマウントの間にプロペラを挟んでいます。この時期の輸入エンジン+自作機体ではなぜかエンジンマウントとエンジンの間にプロペラを挟むのが流行っていたようです。張線の数もすごい。
今回は「一次大戦頃の飛行機が見たい」ということで来てみましたが、この時代の色々な種類の機体が見てみたいです。う~ん。どこに見に行けばいいのかな。三沢航空科学館には奈良原式というのが、かがみはら航空宇宙博物館にはハンス・グラーデと陸軍乙式一型偵察機があるようですが。交通博物館が持っていたはずのアンリ・ファルマン機はどこに行っちゃったんだっけ。