『フィールド古生物学 進化の足跡を化石から読み解く』大路樹生
フィールド古生物学―進化の足跡を化石から読み解く
大路樹生
東京大学出版界
2009.8.19
2940円
★★★★☆
良い本でした。
全四章からなり、タイトル通り、一章はまずはフィールドということでウミユリ研究に携わった経緯、ウミユリの生息域の話から現生のカニと貝の関係に触れ、実地の生物観察と化石観察とを結びつけます。二章では化石のウミユリと生きているウミユリの対比と進化を絡めて述べていきます。三章はフィールドから離れて先カンブリア紀から数回の大絶滅を含めて進化史を概観し、四章では著者の古生物学観がまとめられていました。概ね読みやすく、特に一、二章は著者自身の体験・研究と絡めた話で興味深く楽しめました。ウミユリの研究について詳しく触れた解説本というのは初めて読んだ気がします。この本、もっと現生のウミユリの生体をがっちり紹介し、化石の方はウミユリ図鑑&ウミユリ進化史紹介にしてしまっても良かったのかも。三章の進化と絶滅に関してはすっきりとわかりやすく最近の仮説を紹介していますが、この著者のオリジナリティはやはりフィールドとウミユリにあると思うのです。
カラーページのない白黒の本ですが薄コート紙が使われていて印刷品質も高く掲載された写真もとても見やすいです。ウミユリのシンプルで可憐な姿も美しく見ることができます。
読んでいてふと気になったのがウミユリの味。棘皮動物だというウミユリはウニやナマコ、ヒトデの古い仲間だそうで、これはフィールドにせっかく出ているのだから採集して持ち帰った物を(潜水艇調査で持ち帰れるのかな?)食べてみて欲しいと思ってしまいました。浅いところにあるウミユリは魚に食べられてしまうそうなのでおいしいんじゃないかと。……ん? 棘皮動物ってことはウニやナマコみたいに卵巣や消化管がある、、、のかな? そういえば現生のウミユリを専門に扱った本を読んだことがない気がします。ウミユリ本を探してみたくなった一冊でした。
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