『今そこに迫る「地球寒冷化」人類の危機』丸山茂徳
今そこに迫る「地球寒冷化」人類の危機
丸山茂徳
KKベストセラーズ
2009.12.25
1500円
★★★★☆
評価の難しい本でした。
地球人為温暖化説に異議を唱える丸山茂徳の本で、温暖化説への反論と食料・石油危機を説きます。温暖化説が市民権を得、エコビジネスが展開されている今の日本では相当に奇異に映るのではないでしょうか。特に冒頭の攻撃的な論調は“とんでも本”と間違われそう。
ですがこの本は“と”ではありません。論調が断定的ですし、寒冷化であるという著者の主張も物証が足りていないという点で温暖化説の鏡像のような主張に思えますが、この著者の主張する
- 太陽活動
- 宇宙線
- ミランコヴィッチサイクル
- 地球磁場
寒冷化を示す材料は検証しうるもので、これらを組み込んだ地球の熱収支計算は試みられて然るべきです。温暖化を訴えるIPCCの予測は今のところ三年続いて大ハズレだとかで、一方で寒冷化説は自らが提示した要素を元にしたシミュレーション自体が示せていないようです。個々の寒冷化要素を挙げてはいても、トータルで評価できる段階になく、この本で示されていたのはまだバラバラの「寒冷化を示していそうな傾向が数点」。
とはいえ温暖化説賛成派の人もこの本のような異論があることだけは知っておくべきかと思います。二酸化炭素回収プラントなんてエネルギー効率をガタ落ちさせるだけの無意味なものに手を出す前に考え直す良いチャンスかと思います。
この本では人口過多による食糧危機、石油枯渇によるエネルギー危機も取り上げていますが、これらは寒冷化とは関係なしにやってくるであろう危機です。寒冷化すればさらに危機の度合いが高まるという話で、反温暖化説とは本来別個に考えるべきものであると思います。温暖化/寒冷化は食料・エネルギー危機の度合いを変えるパラメータのひとつであって危機そのものの根本的な原因ではないはずです。
とはいえ、危機を訴えた中で取り上げられていたメドウスの「成長の限界」の紹介はとても印象深く、知って良かったと思う内容でした。
「最初の方でシロクマ減ってないって書いてたのに後の方では減ってることになってる」「温暖化を前提にした“もしも”のシナリオが著者のロジックに採用されちゃってる部分があるような」等ちょっと首を傾げたくなる部分もありますがたぶん表現上の小さな問題なのでしょう。こういう性格の本では目立ってしまう瑕なのでもったいないな、と思ったのでした。
食べる物が足りなくなる、農地が足りない、農業に必要な水が足りない、という直近の確定的な危機の前では温暖化/寒冷化の仮説対立なんて消し飛んでしまうんじゃ、と思った一冊でした。
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