『出撃!魔女飛行隊』ブルース・マイルズ
出撃!魔女飛行隊
ブルース・マイルズ
学研M文庫
2009.9.8
798円
★★★★☆
面白かったです。とても。
ソ連の飛行機、と聞いてどんなイメージが湧くでしょう。冷戦末期のSu-27、エリア88世代の人であればMig-21あたりがソ連を代表する飛行機となるでしょうか。もう少し前の世代だとベレンコ中尉亡命事件のMig-25を思い出すかもしれません。では第二次世界大戦で戦ったソ連機ってどんなんだっけ、と考えてもあまりイメージが湧かないのですが、実はソ連空軍は15万機を第二次大戦に投入し、英米からも1万5線機を供給されてナチスドイツと戦った航空大国であったとか。(日本が7万機弱、ドイツが9万機強、アメリカが26万機)
魔女たちの乗った飛行機も戦闘機Yak-1や爆撃機Po-2は木金混合構造だそうで、特にPo-2は古めかしい複葉機であるために第二次大戦で夜間爆撃機として活躍したというエピソードを読んでも不思議な感じです。
この本に登場する女性たちは皆カッコイイです。巻頭に収められた写真のナタリア・メクリンはいかにもソ連の英雄らしい凛々しい美人ですし、エースパイロットであるリディア・リトヴァクも女優のように美しい人です。表紙左上のイラストがリディアではないかと思われます。文中では「グレーの瞳に金髪」となっていますが、イラストだと若干青味のある瞳ですね。(Wikipediaのリディア・リトヴァクの項に同じアングルのモノクロ写真があります)
マリナ・ラスコヴァというソ連女性飛行士の呼びかけで集った女性パイロット達。飛行隊の編成から訓練を経て実戦に参加し、活躍し、ある者は散り、ある者は生き残ることになる過程を追っていきます。
先に感想を書いた『北欧空戦史』の冬戦争~第二次大戦におけるソ連軍は悪役以外の何者でもありませんでしたが、こちらの『出撃!魔女飛行隊』においては防衛戦争としての意識が強かったことも感じ取れました。
ドイツの三桁撃墜数を誇るエースに比べればこの本に登場する魔女たちの活躍は地味ですが、女性らしさを失わないままに前線で活躍した彼女たちはとても魅力的でした。驚くべきことにこの本のオリジナルは英国人の手によって冷戦時代の取材で書かれたものだそうです。日本では1983年に朝日ソノラマから刊行され、2009年の9月に再刊されました。絶版になっていた時に図書館で探したものの見つからず悔しい思いをしていた本だったのでした。
改めて、読めて良かったと思います。
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