『ソビエト航空戦』飯山幸伸
ソビエト航空戦―知られざる航空大国の全貌
飯山幸伸
光人社NF文庫
2003.9
940円
★★★★☆
最近戦記づいていますがまだしばらく続くかも。少し前に読んだ『弱小空軍の戦い方』と同じ著者の本です。『弱小~』ではソ連軍は悪の帝国という印象でしたが、今回の『ソビエト航空戦』では主役ということもあり精強ドイツ空軍に苦心惨憺立ち向かう一歩遅れた航空戦力の姿が描かれます。
ソ連という国の飛行機はあまり印象がなかった(のでこの本を読んでみた)のですが、航空黎明期に巨人機に挑戦し、“ロケットの父”ツィオルコフスキーの国でもあったそうです。ライト兄弟に先駆けて空を飛んだ云々というようなこじつけ歴史もあったようですが。
共産主義革命の混乱で多くの技術者を失ったり、独ソ戦序盤で航空戦力が壊滅同然の損害を受けたり、航空機材料の要であるアルミ系合金の資源が足りなかったりとソ連航空界は苦労の連続であったとか。この本を読んでいても“木金混合構造”だの“木製転換”という言葉があちこちに踊っていて「ドイツのジュラルミンの飛行機に木製機で対抗していたのか」と愕然とします。それでも大戦後半にはがっちり数を揃えてきていつの間にか世界有数の航空大国になっている恐ろしさ。ロシアの底力ってすごい。
当時のソ連製飛行機も図鑑で見ると「なんか冴えない」と思ってしまいます。零戦やスピットファイア、Fw190に比べると彩色のためか形のためかなんだか洗練されているように見えません。けれどソ連航空機の歴史を追ってみると、ナチスドイツに脅かされつつ不安定な国内状況や立ち後れた工業に鞭を入れてなんとかかんとか造り上げてきたことがわかり、もっさりと見えた飛行機たちが格好良く見違えたりもします。三面図も豊富で、写真も(あまり鮮明とはいえないですが)巻の真ん中あたりに22ページまとめて掲載されています。ロシア航空黎明期のグランド号やイリヤ・ムロメッツの写真も有り。翼の下に戦闘機をぶらさげて出撃する変わり種爆撃機も紹介されていました。
延々と飛行機が紹介され、ソ連の航空戦の推移が語られるのでそれなりにソ連航空機に興味がないと読み疲れてしまうかも。広大な領土で撤退戦に耐え、巻き返した忍耐の航空機開発はドイツの先進性に富んだ航空機たちとはまた違う面白さがありました。そんな部分に興味を持てる人にお勧め。
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