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『少女雑誌論』大塚英志編

大塚英志編『少女雑誌論』少女雑誌論
大塚英志、本田和子、皆川美恵子他
東京書籍
1991.10.28

★★★★☆

 面白かったです。
 図書館から借りてきた本で1991年刊ということもあり紹介写真の表紙はかなり黄ばんでます。Amazonへのリンクは張ったものの在庫はなさそう。

 大塚英志が少女論に取り組んでいたらしいのは断片的に知っていたのですが、どの本がそれに該当するのかよくわからないままでした。これも大塚英志“編”であって大塚英志本人の筆になるのは全10章のうちの一章のみ。以下、もくじを引用。

第1章 戦時下の少女雑誌 本田和子
第2章 『ひまわり』と『ジュニアそれいゆ』 皆川美恵子
第3章 〈可愛い〉の誕生 大塚英志
第4章 オリーブ少女の欲望のありか 香山リカ
第5章 占い・おまじないと「わたし」物語 森下みさ子
第6章 ピンク・レディーの80年代論 中森明夫
第7章 少女たちの迷走する性 芹沢俊介
第8章 少女マンガにみられる「母」の変容 山下悦子
第9章 少年の発見 松本孝幸
第10章 レディースコミック・フォアユー 林完枝

『少女雑誌論』もくじより

 贅沢な寄稿者を揃えていて魅力的です。特に興味深く読めたのは本田和子、皆川美恵子、大塚英志、芹沢俊介の四編。19年前の本ということで“オリーブ少女”や“ピンクレディ”といった単語も登場します。すでに振り返る対象としてですが。バブル時代の空気も漂っていた気もします。

 関心のあるジャンルに話題を引っぱりますが……。
 SFに関しては評論や××論の類は定着した文化になっている気もするのですが、百合ジャンルはこの本のような評論や分析が少なく、ちょっと寂しい気もします。ネットにも百合分析・批評サイトはあるのですが、フェミニズム的視点でLGBT全面肯定ありきに偏ってしまっている印象。百合漫画や百合小説は必ずしも現実のフェミニズムや同性愛を正面から扱うのが主流ではないと思うのです。SFが未来や科学を描いても人類のあるべき姿や実現すべき未来を描いているわけではないように。
 かといって“萌え”の対象と割り切るのも受け入れがたいかな。
 私の感覚では大正・昭和の少女雑誌から続く系譜の一番下流に“百合”という支流が位置しているように感じられ、このあたりをデータを生かして分析する読み物でも出てこないかななんて期待してしまいます。う~ん。分析の対象にするには百合はまだジャンルとしての厚みが足りないか……。

 大塚英志の『少女民俗学』も見つけてきたので近いうちにそちらの感想も書いてみようと思います。


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