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『Girlish Sweet アタシノ彼女』竹宮ジン

Girlish Sweetアタシノ彼女
竹宮ジン
白泉社
840円
2010.4.23

★★★☆☆

 同人原稿を元に描きおろしを三編加えて単行本化したもの。
 『百合姫』で知った作家でなぜ白泉社から単行本が出るのだろう、と思ったのですが『楽園 Le Paradis』に掲載作があるから、かな?

 収録作は確かに同人っぽくはあるのですが、それは絵が下手だからだとか、ストーリーがちゃちだとかではなく、商業だと表現しにくいような関係を描いていたから。どう表現すればいいんだろう。商業誌だと「ウケない」と判断されそうな関係のカップルが登場します。
 画力に関しては同人原稿だから、と心配する必要はなし。『百合姫』掲載作では確かに洗練されてきていますが、画力は『アタシノ彼女』の収録作でも十分固まっている感じ。安定してます。

 前半は『百合姫』に載っていても違和感のなさそうな短編が連なります。後半で野中と加藤のペアにフォーカスが当たりはじめたとたんにどーんとヘビィな話になるのがツボでした。『百合姫』で竹宮ジンを知った人には意外なはず。
 設定だけならもっと重い話もいくらでもありますが、読者を選んでしまいそうな空気が漂うのが同人としての本領発揮であったのだろうと思います。雰囲気はかなり違いますが、榛野なな恵の『ピエタ』を読んだ時に近い手応えでした。

 野中は加藤がいなければまっしぐらに転落していったのだろうなぁ。加藤、良い子過ぎて惚れるだろ、これ。天使か。

 こういう重たい関係の長編は現在の百合雑誌では難しいのかな。でも、こういうものを描く人はいてもいい。
 褒めてるのにが少ないのはいかにも読み手を選びそうだから。合う人には★★★★★五つ星だと思うのですが、合わない人にはとことん合わないと思います。実物の内容をチェックしてから買うのがお勧め、と言いたいところですが白泉社ではあっても配本は少ないようで店頭では見かけません。勧めたいけど勧めにくいっ。

 表紙はキャラ部分だけツヤツヤコートでぽこんと出っ張っている感じの印刷。表紙の下の本体の装丁もカラーでびっくり。

 巻末には『楽園 La Paradis』関係の宣伝が入っていたのですが、水谷フーカとか林家志弦とか沙村広明とか惹かれる名前が。

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