« 『オレンジイエロー』&『水色シネマ』乙ひより | トップページ | 『日本近海に大鉱床が眠る』飯笹幸吉 »

『深海のパイロット』藤崎慎吾

深海のパイロット
藤崎慎吾
光文社新書
2003.7.20
893円

★★★☆☆

 Uボートの資料を探していたときに近くに並んでいた本です。パイロットって格好いい呼び方だな、と手に取ってみたら著者名に見覚えが。SF作家の藤崎慎吾じゃん!ということで読んでみました。

 「しんかい」という潜水船、わたしにはかなり馴染みがあります。子供の頃に読んだ『自動車・船』という図鑑に「しんかい」だったか「しんかい2000」だったかが載っていて、その胴体右側面に書かれた船名が「いかんし」となっていたのがなぜかとても気に入りました。きっかけはそんなつまらないことだったのですが、クストーの潜水記を読んだり、トリエステやアルビンの深海調査本を読んだりと潜水艇モノの本を読みあさったのを思い出します。この本の中で出てくる“飽和潜水”というのもクストーの本で覚えたんだっけ……。人類がなぜか不便な海の中で暮らす未来図が描かれていたりして、とても不思議な気がしました。

 この本で深海調査のエピソードに触れてみてそんな子供時代の読書体験を思い出しました。『深海のパイロット』では「しんかい6500」に携わった人たちから話を聞き、深海調査とはどんなものであるのかを紹介します。筆を執るのは藤崎慎吾だけでなく、潜水船のパイロットや「しんかい」搭乗科学者も第二部、第三部で自ら語ります。文章のプロというわけではないので少々語り口はぎこちないのですが、それらの“生の声”も興味深く読めました。

 本の中身で一番印象に残ったのはロシア潜水船の短いエピソード。ロシアの潜水調査船のクルーはお客好きだそうなのですがその理由が……泣かせるのです。ソ連時代の話ではないようなのにどうしてロシアはこの手の話に事欠かないのか。

 科学調査のための船ということで戦争活劇のような大波乱とは縁がないのですが、日本の潜水船の地味〜な活躍が楽しめる本です。解説は丁寧で表現は一般向けだとは思うのですが、必ずしも華やかな世界ではないので海洋調査や潜水船の運用に関心が持てる人でないとキビシイと思います。

 そうそう。科学未来館に「しんかい6500」実物大模型がありましたっけ。

|

« 『オレンジイエロー』&『水色シネマ』乙ひより | トップページ | 『日本近海に大鉱床が眠る』飯笹幸吉 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。