« 『スワロウテイル人工少女販売処』籘真千歳 | トップページ | 『科学哲学』サミール・オカーシャ »

火星―ウソカラデタマコト

火星—ウソカラデタマコト

 東京大学総合研究博物館にて「火星―ウソカラデタマコト」展というのをやっていると知って覗いてきました。ここを訪れたのは「異星の踏査〜アポロからはやぶさへ〜」展以来。

 展示はパネルが中心でMELOS——日本の次期火星探査計画へのアプローチが主力になっています。

  • 膨大な量の画像データ
  • MELOS火星探査計画案
  • 火星生命の痕跡が見つかったと言われる隕石
  • 火星飛行のCG
  • 火星に触れる

 以上、イベントのパンフレットからの抜粋です。

「火星―ウソカラデタマコト」展入口 会場は以前と同様、東大博物館の常設展示の奥にある特設展示室。会場の入口そばからすぐに文字ぎっしりのパネルが展示されていて、当たり前のイベントならばスルーされてしまいそうな展示スタイル。なのに皆さんきっちりパネル掲示を読んでいきます。強い関心を持った人が来ている模様。小学生もパネルに張り付いてメモを取っていました。夏休みの自由研究ネタにでもするのかな。土曜日でしたが混雑というほど混雑もしておらず、のんびりと楽しめました。

「火星―ウソカラデタマコト」展会場 入口からちょっと入って眺め渡すとこんな雰囲気。天井から下がっているタペストリの“PLAN A”、“PLAN B”、“PLAN C”というのはDまであってそれぞれ「表面探査」「生命探査」「空中探査」「地中探査」と探査案が示されています。これはこの企画展が今後行われる日本の火星探査ミッションMELOSの方針決定のための意見公募も兼ねているためです。
 写真奥はローバーによる地表探査案。サイズ的には“ソジャーナ”くらいの印象でしたがMars Science LaboratoryやMAX-C、ExoMarsといった欧米の大型ローバー計画が控えているとなると規模が小さくなりそうな日本は独自色の強いことをやって欲しい気がします。せっかく開発した月ペネトレータの技術を生かすようなものとか。

「火星―ウソカラデタマコト」展探査案投票 会場では右写真のように探査計画案に対する意見の公募が行われていて、壁には寄せられたメッセージがびっしりと張り出されていました。将来の火星探査に関われる貴重な機会です。意見を出すことを前提に展示に触れるとよりいっそう楽しめるかと思います。

「火星―ウソカラデタマコト」展3Dテレビ 空中探査「火星飛行CG」とパンフレットにあったものの紹介展示。大きな3Dテレビで火星の風景CGを流していました。この展示に限らず今回の会場にあった動画は立ち見するにはけっこうな長尺です。じっくり時間のあるときに眺めに行くのがお勧め。
 3Dは一応それらしく見えましたが最も立体感が豊かだったのは高度データと衛星写真から作ったCGではなく、ローバーの撮影した3Dパノラマ写真でした。これは『3Dで見る火星の絶景ポイント』という本でも同様でした。なんでだろ。

「火星―ウソカラデタマコト」展ALH84001 有名な火星隕石ALH84001。といってもNASAが大々的に「生命の痕跡!」と喧伝した部分ではなく同じ隕石の別の欠片のはず。ALH84001.XXXみたいにサブナンバーが振られていたのでピース分けされたものだと思います。見学したときには研究者や解説員が近くにいなくて確かめられませんでしたが。「火星—ウソカラデタマコト」展のサイトには研究者に説明してもらえるイベントの日程が記されているので気になった方は確かめてみてください。
 写真の外——右側には火星隕石の切片が展示され、実際に触れるようになっていました。明確に「触っていいよ!」と書いていないので「ほんとに触っていいの?」と思いながらコインくらいの窓の開いた切片を撫で回してきました。う〜ん。触っても何がわかるわけでもないのですがなんとなく楽しい。こちらは日本の調査隊が南極で集めた隕石なのかな?

「火星―ウソカラデタマコト」展中華鍋 写真左寄りでスポットを浴びているのが鉄隕石。右は中華鍋に火星の映像を投影したもの。画面には入っていませんがこの右にはものすごく敏感な地震計が置かれていて、近くでそっと足踏みをするだけでセンサーが反応しまくります。「地震計設置による火星内部構造探査」の紹介。私は、惑星の構造を先に明らかにして表面探査の必要箇所を見つけていく、という順番が良さそうに思えましたが得られる結果が地味で人気が出にくそうですね。

「火星―ウソカラデタマコト」展超音速風洞試験体 これなーんだ?
 ぶきっちょな縫い目でキノコのマスコットかなにかに見えますが、これは超音速風洞でマッハ7に晒された空力試験のサンプルだそうです。小型探査装置をキノコの傘型の“バリュート”で空(軌道上)から投入しよう、という案。パネル解説だと1mくらいの傘になる予定のようです。

 そうそう。会場には蚕や稲+どじょうの水槽も展示されていました。宇宙でのタンパク源ということのようでした。蚕の繭は黄色い繭でしたがこれは見慣れない感じ。クリキュラ(金色の糸を出すインドネシア産の野蚕)と掛け合わせた品種改良ができているという話をちょっと前に見かけたのでそれかも。

 大型化石イベントのように賑やかに眺めるお祭り的な展示ではなく、文字解説びっしりのパネルを眺め、地味〜な観測機器を見る類の展示です。特設展示室に至るまでには人骨ゴロゴロの展示などもあります。同時開催の昆虫展も(こちらはほぼ常設の気がする)も地味目ですが標本びっしり。
 写真撮影は可能なものと不可のものがあるので受付で確認を取ることをお勧めします。

場所 東京大学本郷キャンパス内 東京大学総合研究博物館
期間 2010.7.24〜10.30
開館時刻 10:00〜17:00
休館日 月曜日
入場料 無料

|

« 『スワロウテイル人工少女販売処』籘真千歳 | トップページ | 『科学哲学』サミール・オカーシャ »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。