『Papa told me ~カフェで道草~』榛野なな恵
Papa told me ~カフェで道草~
榛野なな恵
集英社クイーンズコミックス
2010.6.18
440円
★★★★☆
榛野なな恵のPapa told meシリーズ。六月に出ていた最新刊。27巻まで出ていたヤングユーコミックスの後は少し判型が小さくなり、『Papa told me ~街を歩けば~』、『Papa told me ~私の好きな惑星~』とおよそ年に一度のペースで続刊が出ていました。掲載誌も『ヤングユー』から『コーラス』へと移りましたし、一時期再録の再編版や完全版ばかりを出していた時期があって最新話をフォローできていない人も多かったのではないかと思います。
PTMのシリーズはサザエさん時空でスーパー小学生の知世は大きくなりません。大きくはなりませんが、1987年から継続されているだけに雰囲気も少しずつ変化してきました。母親が居ない、ということを軸に展開された初期の話。マジョリティ故の無神経さに立ち向かうエピソードが増え、“俗物”と闘い、個を重んじる気高さを訴え、と振り返ってみると時代を反映してきたようにも思えます。
コミックスがナンバリングされなくなり、小さな判型で出されるようになって知世は幼く、おおらかになりました。お話自体からも尖った面は目立たなくなり、穏やかな童話調に。
これは何を意味するのでしょう。
榛野なな恵にとっての“敵”がいなくなってしまったのでしょうか。今の時代に生きている身には歴然たる敵のいなくなった的場一家が時代を映しているようには感じられないのですが、あるいは十年後にこのナンバリングされなくなったPTMを振り返れば「ゼロ年代末は確かにこうだった」と思えるのかもしれません。
『ピエタ』や怒れる知世に代表されるような、榛野なな恵の紡ぐささやかな闘いの話もまた読みたいのも確か。『百合姫』あたりで単なる百合礼賛ではない尖った榛野なな恵を見せてくれたりしたらそれもまた嬉しいのだけれど。
今回の『Papa told me 〜カフェで道草〜』の袖に並んだ既刊一覧を眺めてみたら『ピエタ』も『パンテオン』もリストされていませんでした。なんでだろう? 一度PTMでイメージできちゃうと他のものは売りにくいのかなぁ……。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント