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『エレベーターは秘密のとびら』三野誠子

エレベーターは秘密のとびら
三野誠子
岩崎書店 いわさき創作童話
2010.8.7
1365円

★★★☆☆

 たまには童話の感想でも。
 第27回福島正実記念SF童話賞受賞作。

 タイトルを見て、表紙を見て「ふうん。ハウルの動く城の扉みたいなエレベーターかな」と思いました。読み始めてしばらくは確かにそんな感じ。「どっかで見たような話だな」とちょっと思いました。
 でも、それだけではありませんでした。不思議なエレベーターと遭遇した主人公は、同じように不思議に遭遇した二人の仲間を得ます。三人の女の子は夏休みの自由研究としてエレベーターの秘密に取り組むのです。

 福島正実記念SF童話賞はSFの文字が冠されていますが受賞作のSF比率は低めの印象です。宇宙人や幽霊は確かにSFジャンルで扱うものではありますがどちらかというとフシギの類。SFのSがサイエンスのSであることを感じさせてくれる科学の視点を持ったものは少ない気がします。今回の『エレベーターは秘密のとびら』も素材はフシギ寄りではあるのですが、謎解きの部分ではヒントから解明にいたるまでにすっきりとしたロジックがあって福島賞の「小学校中学年から読めて高学年でも楽しめる」と「SF」の要素を満たしていたように思います。設定はフシギで、ロジックの部分はミステリに近いのかな。非現実的な出来事にミステリの方法を持ち込むとSFになるということなのかもしれません。

 私の好みとしてはもっともっと科学の視点を!と思ったのでした。んでも、私自身で投稿作を書いてみても「予定していたよりサイエンスの香りがしないぞ」となってしまうので童話とサイエンスを融合させることは難しいものなのかも、なんて改めて思ったりもしました。

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