東京都立図書館電子書籍体験モニター その1・体験編
東京都立図書館にて「電子書籍を体験しよう! 〜新しい図書館のカタチ〜」と題する企画展が開かれています。その企画の中で約1000タイトルの電子書籍を用意した電子図書館の試験運用が行なわれています。
十月頃にモニター募集をしているのを見かけ、応募してみたもの。11月22日から一ヶ月間のモニター期間ということでさっそく昨日、試してみました。
今回の電子図書館はパソコンでの利用前提のようです。
- Windowsのみ
- InternetExplorer必須(ActiveXで電子書籍ビューワを提供)
KindleやiPad、あるいはMacでは利用できないようなのが残念ですがテスト運用ですし仕方のないところかな。
電子図書館で本を読むための仕組みは紙書籍の貸出と同じです。
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画像のように読みたい本を選んで「貸出」をクリックすると「貸出中のコンテンツ一覧」に入ります。ネットショップのショッピングカートと似たような感じですね。貸出中の本は他の人からは借りられないようロックがかかります。コピーの無限に取れるデジタルの特性を抑えて、図書館としての特性が与えられているわけです。
手元で開いてみた本はこんな感じです。
サンプルに選んだ本はPDFで、文字、画像、数式が入っていますが紙書籍と同じようにレイアウト固定で表示されます。
青空文庫から提供されているテキストベースのデータはXML化されて
こんな風に表示されます。画面サイズやフォントサイズを変えるとページ構成も変わる「リフロー」タイプです。
テスト段階の急ごしらえということもあるのでしょうが、このテキストベースの(上図では青空文庫のデータをXML化した模様)データでの表示品質はお世辞にも高いとはいえません。行間隔や余白の調整もできないしアンチエイリアスもかからない。ふりがなの表現も行間隔が不均一になったりとフリーの青空文庫ビューワの類と比べても不満な出来です。また、PDF型、テキスト型ともにコピー&ペーストは不可でこれも不満。
ですがメリットも十分に感じられました。“借りた”本(PDF、XMLとも)の内容に対して検索がかけられるのはデジタルならではの強み。また、アクセントはちょっと不自然ながら音声読み上げの機能を搭載しています(Windowsの標準機能を利用したもののはず)。公共サービスの試みだけあってバリアフリー化も考えられているようです。
用意されていたタイトルはKindle/iPadショック以前からあった旧来の電子書籍でも読めたものが中心のようで、私の好みの科学解説書の類は少なかったようです。関心を引いたのは東京都のオリジナルコンテンツ。図書館の「郷土資料」コーナーにあるようなローカルデータですね。こういったものがオンラインで読めるというのは素晴らしいことのように思います。
比較的新しいと思われるTwitterやクラウドの解説本にはモニター開始から数日で十数件の予約が集中していました。1000冊で1000人のモニターでこれなので、全都民を対象にサービスを始めるとさらに特定の書籍にユーザが集中しそうです。
色々試してみている中で「あれ?」と思ったのが「コンテンツ検索」。例えば「海野十三」と検索してもひとつもヒットしませんが「十三」と検索すると海野十三の本がヒットしてきます。え〜。図書館は検索利用についてはOPACでノウハウを積んでいるはずなのに。作っている業者/担当者が違ったらそれだけでノウハウをゼロから積み直しですか……。「姓名」で検索してもヒットする著者もいれば「姓」と「名」を区切って検索しないとダメな著者もいます。データベースの整備方法に統一性を欠いているということなのでしょう。
また、せっかく電子蔵書がテキスト情報を持っているにもかかわらず図書を探す段階での本文の縦断検索ができません。N-gram系の全文検索技術などもオープンソースで提供されている今の時代、タイトルと著者名からしか検索できないのでは「電子図書館」として不十分な気がします。紙書籍に施された分類や蔵書情報と合わせて検索機能にはもっともっともっともっと力を注いで欲しいところ。「本を探す」手助けは図書館の大切な仕事でもあるはず。
面白く思えたのは電子書籍に書き込みができること。傍線を引いたりコメントをつけたり。これは他者と共有できちゃうのかな、と思ったのですがさすがにそれはないようです。また、Kindleのように読書位置を自動で記録して読みかけの本の続きのページを開いてくれるというような機能もない模様。対応端末の拡大も含めて、利便性に関してはまだ手探りで課題も多いよう。
モニターのwebアンケートでは書籍の貸出統計を取れば瞭然の事柄をアンケートに記入させたり、外部のアンケシステムのセキュアでないページにベタでIDとパスワードを入力させる危うさがあったりと首を傾げたくなる部分もありました。「httpsで繋げばいいんだろ」という問題ではなくセキュリティ意識の欠如が露になっていること、システムへの理解不足を物語るアンケ項目が並んでいることに危惧を抱いたのでした。
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