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東京都立図書館電子書籍体験モニター その3・読んでみた本

 11/22から実際にモニターで読んでみた本をざっと紹介。電子書籍体験を優先して古生物本以外はナナメ読みです。

絶滅した哺乳類たち 富田幸光ほか 丸善

 今回の電子図書館モニターでたぶん唯一の古生物本。元はかなり大きな判型でフルカラーでイラストたっぷりのPDFデータ。VAIO Pで読んだせいかページめくりがとても重かった。また、データサイズが大きかったためか17ページごとに分割されて四分冊になっていました。こういうコンテンツも電子書籍になっていたのか!とちょっと驚いた一冊。

スーパー図解うつ病 野村総一郎監修

 上の『絶滅した哺乳類たち』は左綴じ、この本は右綴じでどちらもPDF形式なのですが、綴じ方向に関わらず「進む」「戻る」で使用する矢印キーの操作方向が固定で感覚に馴染みません。このビューワ、表示クォリティには不満はないですが使い勝手はイマイチ。右綴じ左綴じの区別があるだけでも上出来かな。

かたちの謎を解く 魔よけ百科 岡田保蔵

 これは掘り出し物かも。面白い。五芒星や九字、籠目など「呪」を構成する模様がずらーっと紹介されてます。画像の多いPDF形式。

攻撃と殺人の精神分析 片田珠美

 う~ん。でっち上げ調書みたい。家族からの性的虐待や過保護のシナリオを与えてもっともらしい連続殺人鬼像を仕立て上げて。性的虐待を受けていてもまともに育った大勢の人がいて、過保護に育てられてもまともに育った大勢の人がいるのを無視して「この親にしてこの子あり」に誘導していく。統計での検証もなし。偏見の流布本になっていそう。

The serpent with eight heads(Japanese fairy tale series ;9)/八頭の大蛇

 天照大神が“Ama”でスサノオノミコトが“Susa”になってて妙におかしかった。英語の絵本。PDF。

イージーシリーズ Windows Vista

 コンピュータのハウツー本はちょっと時間が経つと「今更」になってしまいます。ムービー中心。パソコン教室とかで使われる教材風。「役に立たないマルチメディア教材」の良い見本になっていると思う。大型図書館にはたいていパソコンコーナーがあるし、使い方を教えてもくれるので実地に体験してしまうほうがずっとオススメ、ってこのテキストを読んでる人はすでにパソコン使えてる人ですね。
 動画やインタラクティブ要素は電子書籍に期待されてる“華”なのだろうけど、書籍に期待されている価格帯で動画やゲームを作って何か良いことがあるのかな?

アンデルセン童話集1

 古い童話は異文化への偏見がすごい。寝巻きとスリッパひとつの格好の男を指して「なあに、トルコの国では、みんながこの男みたいに、ねまきとスリッパすがたで歩きまわっているんですよ」だって。面白いなぁ。そういえばシャーロック・ホームズも東洋人の描写がほとんどクトゥルフかと思うくらい怖い。絵本。画像ベースのPDF。

昭和十年東京うまいものスタンプ

 当時のスタンプ印影を集めたもの。面白い! 仙人みたいな格好で目から手が飛び出している絵のついた「南京料理 チンまん 味覚の殿堂」とか面白すぎる。個人のコレクションみたいなものだけど、時間が経つと立派な資料になるのだと感心した。PDF形式。

環境倫理学のすすめ 加藤尚武

 1991年の本。丸善ライブラリの新書サイズを元にしたPDF。あまり古くなっている感じがしない、というより環境問題はどんどんおかしな方に進んでいる気がした。環境倫理的には退歩してる気がする。二十年前から見ても今の世の中はすごーく変に見えるんじゃないだろうか。

理科系の論文作法 高木隆司

 「理科系の作文技術」という本を思い出して読んでみた。

情報倫理学

 丸善ライブラリの新書のシリーズは割と揃ってるみたい。岩波新書と講談社新書、ブルーバックスあたりがずらりと電子書籍化されて図書館に入ったら嬉しいな。

ひびや 41巻通巻148号 1999.3

 図書館の刊行物のようです。かなりボリュームのある冊子で通算150ページくらいあったのではないかと思います。画像ベースのPDFらしく、文字で内容が拾えませんでした。図書館的「自炊」データになるのかな。図書館活動の記録でした。

 不満に思った点などもリストしてみると

  • タイトル検索、著者名検索で「ゆらぎ」を受け付けない。
  • 本文の縦断検索ができない。
  • 分類:自然科学書籍の分類がイマイチ。右図「分類:自然科学」の下位分類を見て違いがわかりますか?
  • 一覧表示がソートできない。
  • タイトル、著者名のカタカナが半角。OPACの初期の仕様をいつまで引きずるつもりなのか。
  • 利用者のコミュニティはないのか。

などと些細なことが並びますが、期間限定のモニターということで気にするほどのことではないでしょう。

 モニターは電子図書館実現の暁には相当なショックになることを予感させてくれました。国会国立図書館の近代デジタルライブラリーと併せて図書館は一般の想像よりもずっとラジカルな未来像を提示しています。

 千人いたはずの利用者の反応が薄いのが気になります。ネット上のレビューが少ないなあ……。

 以下、蛇足となります。
 SharpやSONYの電子書籍も始動しましたが、かつてのザウルス文庫やパブリ、LIBRIeと何の違いがあるのかさっぱりわかりません。SONY Readerのデジタル書店は二万点スタートと銘打たれているものの、ジャンル別表示の総和を取ると一万点ちょっと。小野不由美も京極夏彦も北村薫も上橋菜穂子もなく、科学解説書は一点もなく、漫画も雑誌もなく。ラインナップはざっと検索してみたところパブリやザウルス文庫ですでに電子化されていたものばかり。
 最初の一歩だから、というのもわからないでもないですがSONYはその最初の一歩を既に数年前のLIBRIeで踏み出していて、コンテンツ不足から失敗していたのに、今回何も改善されているように見えません。目新しいものは数えるほど。タイトル数一万点では小型の地域図書館以下です。著者からの許諾を得るのに手間取っているとの噂も聞こえてきますが、手間取る部分にはビジネスチャンスだってあるはず。また、ハードだけ作って運良くヒットを待つ「WALKMANの夢」を見ているのでしょうか。

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