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『それでもやっぱり恋をする』倉田嘘

それでもやっぱり恋をする。
倉田嘘
一迅社IDコミックス 百合姫コミックス
2010.12.18
900円

★★★☆☆

 先月の『百合姫』リニューアル号で久々に見かけた倉田嘘の新刊です。全四話+掌編の連作短編集で、うち一編は『百合姫』リニューアル号に掲載されていたもの。各短編ごとに異なる百合カップルが登場します。ネットゲーム、ケータイ、ブログ、お絵かきSNS。コミュニケーションツールをきっかけに動き出す百合ストーリー。

 第一話「WIRED」はネットゲームネタ。ゲームの中では身元を偽り日々の憂さを晴らすダメ浪人生・蒼。ゲーム中で知り合った超おしゃべりっ子に気に入られてなぜかリアル・イベントに共に参加する成り行きに。第二話「BBS」はいわゆる裏学校サイト的なBBSを素材に。水泳部の美佳は冴えない部員だったけど幼馴染の悦子は同じ部にいてスポーツ特待生。水泳だけに打ち込んできた悦子と部員たちの軋轢は美佳にも影響を及ぼして……。第三話はお絵描きSNS。pixivをモデルにしたらしい話。そういえば悪質なナンパというか性犯罪者が話題になっていました。GREEとかもだけどコンテンツとSNSを組み合わせたとこは出会い系として機能しちゃってて、漫画のエロ表現なんかよりずっと危険だと思うんだけどなー、と脱線。おっとと。第四話はブログネタ。恋人ができるとどうしても自慢したくなるけれどマイノリティの恋はどうしても人目を、という話。プラス、エピローグがついて、『百合姫』2011年1月号に掲載された第一話以外はすべて描き下し。

 前作『リンケージ』ともども倉田嘘らしさがあって、それは画力が高かったり、ストーリーが微妙にぎこちなかったり、気恥ずかしい印象のセリフやシーンのバランスにあるのかな。どこがどう、とはっきりとはいえないけど好みで、応援したくなる作風です。あとちょっとで場外ホームラン出そう、みたいな。
 倉田嘘で一番魅力を感じるのは作画。絵になる空間の中にびしっと人が配置されて美しいと思えるのは作者が建築デザインを出自としている人だから、でしょうか。case.4の「BLOG」のタイトルページをはじめ、ぐっとハートを掴まれる情景があります。

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