『新しい物性物理』伊達宗行
新しい物性物理
伊達宗行
講談社ブルーバックス
2005.6.21
1092円
★★★☆☆
先に読んだ『極限の科学』は物性物理の応用面を具体的に紹介していたこともあって興味深く読めたのですが、今回の『新しい物性物理』は高校物理の基礎となる原子論から入り、イオン結合やら水素結合やらを説明し——と進んでいくものの「こういうものだ」というのがずらずらっと並べられるだけで数式を丸ごとすっ飛ばしてしまうので、それぞれの法則の間の関係性が見えずに「なぜ?」が解消しません。電子のスピンを計算抜きで納得させようというのは相当に無理があると思ったのでした。
物理学や数学は平均以下の能力しか持たない私のような人間は「まず導出の数式を追いかける。それから演習問題を解いて慣れる。わからなくてもとりあえず模範解答を見ながら解いて慣れる」で感覚的な理解に達してきたようです。ニュートン物理学もそうです。計算して、演習を解いて。実験で数式に近い結果が出ればさらに感覚的に「うんうん」と納得する。たぶん、説明だけで理解できるのは才能のある人だけなのです。あるいはそれまで自分が身につけた世界観のアナロジーが適用できる場合だけ。
学生時代にもあまり原子論関係は得意でなかったこともあったせいか「言葉の説明だけで理解するスピントロニクス」というこの本のアプローチからは見事に落ちこぼれてしまったのでした。う〜ん。悔しいな。
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