« 『ぼくは恐竜造形家』荒木一成 | トップページ | あけましておめでとうございます »

『ひらり、』Vol.3

ピュア百合アンソロジー ひらり、 Vol.3
新書館
2010.12.25
998円

★★★★☆


表紙 遠田志帆

 “クリスマスリースの下にいる間はちゅーしても良いルール”が適用される場面ですね。このルール、私は最近まで知りませんでした。調べてみたら「リースの下で出会った二人はキスしなければいけない」のか。むふー。


扉絵 竹美家らら

 プレゼントを渡そうと待ち構えている子たちの先に現れたのはすでに二人連れ、というシチュかな?


さろめりっく 袴田めら

 袴田めらは『ひらり、』に合っている気がする。独特のおっとりした空気がらしいというか。
 転入生の魔女・さろめは溶け込めないタイプ。面倒見の良いひかりに少しだけ心を開きかけるのだけれど……。


白、またはピンク 仙石寛子

 和服の二人。絵描きさんと絵描きさんに構われたい子と。仙石寛子のこの大正?昭和初期?くらいの雰囲気設定はとてもいい感じ。和服を着たキャラがきれい、というのはいいな。姿勢とか襟がすっきり抜けているとか着こなされている和服ならではの美しさが絵の中にある気がします。


まいにちのともだち ささだあすか

 Vol.2の「ほんのともだち」に続く「ともだち」シリーズということになるのかな? 今回も背中がもぞもぞするような青春の気恥ずかしい空気が。乱れ三つ編みは後ろから見たダメさ全開状態を見てみたかった。


箱庭コスモス 桑田乃梨子

 不思議研究会「ふし研」のお話なのだけれど漫画自体が不思議という。今回は不思議を愛する仲間が登場。


プルケリマ 藤こよみ

 『ひらり、』では珍しい感じの“衝動”や“欲”込みのエピソード。直球だー。タイトルは星の名前からかな? 音楽かな? 植物や動物にもつけられるみたい。そのままの意味かも。


サボタージュ 夏乃あゆみ

 学校をサボろうとしたのっけからクラスメイトと鉢合わせ、という日常の中の小さな非日常。十分に楽しめたけど今回全体にレベルアップしてる中でアクが薄かったかも。


かわいいひと 前田とも

 ふわふわの可愛い子ちゃんに冴えないのっぽちゃん。半ばくらいまで「普通?」と思ったけどおしまいの方できゅんときた。前田ともは前回の廃墟スケッチでも印象が強かった。「ひらり、」読みはじめるまで知らなかった作者だけど収穫。


さらば友よ 橋本みつる

 Vol.1にも掲載されていた橋本みつる。絵の印象は「ひらり、」で一番インパクト。今回ちょっとトリッキーな構成でした。面白かった。今回のこの話で作者が好きになった。全部言葉にしない。全部絵にしない。そこから伝えようとする何か。


under one roof 藤生

 作者は『百合姫』でもおなじみ。こちらではストーリー四コマ。連載になったりするのかな。なって欲しいな。4ページ。もっと読みたかった。


魔女と騎士 犬丸

 6ページと短いけど魔女っち会長キャラ立ってる。


購買のプロキオン ふかさくえみ

 あの、あのね。生徒会長さんに教えてあげたい。ドブ板、手で持ち上がりますよ、って。ポップで読みやすくて漫画らしい漫画。「ひらり、」では初めてのタイプの気がする。


CORROLA スカーレット・ベリ子

 うはー。色っぽい。Vol.1の帯では「胸が切なくなるような女の子同士の友情とちょっぴり恋の物語12篇——。」だったのが「しっかり恋」になってきていて今回はスカーレット・ベリ子のこの話が代表かな。後半の描写、すんごく力入ってたと思います。


step in 未幡

 Vol.2「even」の続き。これもいいなぁ。幼い頃の約束、みたいなのは陳腐になりがちで嫌なんだけど、この話はうまく生きてる。


ピンク×ラッシュ TONO

 TONOのお話の特徴に「話の進展とともに印象が変わっていく」というのがある気がするのですがこの話もサナのキャラの印象が変わりました。これから先も続いてどんどん変貌していくのかな。作者が作者だけに今は明るくあっけらかんとしていても『チキタ★GUGU』みたいなずしーんとくる展開もないと言い切れなくてドキドキ。


for you 石堂くるみ

 あ、明菜、変な子っ。


図書室の姫ちゃん 大沢あまね

 学園四コマ。微エロのギャグもあるテンポの良い明るいお話。これは楽しい。


てのひらパチパチ 藤沢誠

 静電気ガールの話。リアリティ重視の作風ではないんだけど日常の中のふわふわみたいなのが漂っていて、静電気エピソードというのも小さな共感を呼んで、という印象。「あるある」。


そして、わたしはうそをつく 栗白偲

 江梨奈の気を引くために男と付き合ってみせてはフラれている実尋。漫画だとこういう設定でも平気なのですが小説で示されるとなぜか「見え見えだよ。ふん」なんて思ってしまいながら、先に読み進めると純愛成分にぐっさぐさとやられてじーんときたり、やっぱりフラれてしんみりきたりと見事に踊らされます。この話はどうかな、と読み進めてみると……。
 『ひらり、』の小説は掲載コミックよりも尖ってる印象。


 今回は全体にめっきりとレベルアップしていました。「CORROLA」の感想でも書いたけれど友情〜恋のバランスで明確に恋愛方向に比重を増やしている作品が増えていて「エスカレートするのかな?」と心配になってみたり。Vol.1のコンセプトが気に入っていた身としては友情以上恋愛未満を貫いて欲しい、なんてちらりと思ったのでした。

 今号では「ひらり、GLコミック大賞」の告知もありました。どんな作品が出て来るのか楽しみ。そして次号Vol.4では雁須磨子、藤たまき、南国ばななといったニューカマーの名前が。

|

« 『ぼくは恐竜造形家』荒木一成 | トップページ | あけましておめでとうございます »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。