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『ひらり、 vol.4』


百合漫画誌の感想漫画サムネイル

 ひらり、 vol.4
新書館
2011.4.23
★★★★☆

 表紙イラストの担当が変わり「ひらり、」に併せて「HIRARI,」のアルファベット表記が目立つようになってデザイン一新。四コマ漫画も増え、「第一回ひらり、GLコミック大賞」の受賞作も載ってらしくなってきました。全体の印象もまとまりが出てきた印象です。
 “少女漫画風”が『百合姫』や『つぼみ』との違いなのですが少女漫画もジャンルは細分化されているわけで……う〜ん『××』の百合版、というぴったりの例えが見つからない。純情路線BL漫画の百合版みたいな?

 今回も前回よりパワーアップしていてとても読み応えがありました。


表紙 西炯子

 ベテラン・西炯子の絵は新鮮! 百合姫に載ったピンナップも良かったよなー。


扉イラスト 優

 夕陽の逆光素敵だな。


自転車と加瀬さん。 高嶋ひろみ

 おや? あれ? これはvol.2の「あさがおと加瀬さん。」の続編だ。今回もまた嬉し恥ずかし青春まっただ中。しかも予想外な台詞が。


さろめりっく 袴田めら

 今回は心に痛い話。こういうのは読むのが辛い。でも中学生くらいで読んだらだだ泣きしちゃうかも。どうなんだろう。今の現役中学生もいじめというのはやはりよくあることなのだろうか。


ほかほかたんぽぽ組 南国ばなな

 幼稚園モノです。なんて不健全な園児たちなんだ……。


永遠に少女 天隠ギド

 よくある幽霊ものか〜と思って読みはじめたのですが、完璧でした。あるべき場所に全部のピースが吸い寄せられていくようにきっちりと話が収まります。なんだろうこの快感。すごい。面白い。しかもとても素敵な話。オチもいい。


私の嫌いなおともだち 雁須磨子

 百合漫画では共感のお話が多いのだけれど、絶妙なディスコミュニケート感。『どいつもこいつも』で初めて知った雁須磨子らしさは百合誌でも健在。


あなたと彩る世界の色 カザマアヤミ

 百合モノでは彼氏のいる設定は割と忌避されそうな印象なのですが意外とあるようです。この話もそう。そういえば小説『丘の家のミッキー』シリーズも主人公にはボーイフレンドができるものの百合好きに愛された名作ですね。


バニー♡カフェ 仙石寛子

 バニーさんのいるカフェよりリアルうさぎのいるカフェに行ってみたい。


シスターストロベリー 橋本みつる

 独特の絵柄でインパクトある橋本みつる。今回はvol.3の続編。寮の同室者から寄せられる恋愛感情。深みにはまる前にと離れることにした二人なのだけれど、友人としての距離もまた失うのは辛く……。GJ! GJ! GJ!


青味泥 藤たまき

 アオミドロの漢字表記が“青味泥”とは知りませんでした。詩のようなモノローグを中心に紡がれる8ページ。藤たまきの絵柄ともよく調和して、「青味泥」の語感や漢字表記の違和感がアクセントになって、面白い。


おとなりのせんぱい ささだあすか

 うんうん。おっちょこちょいの人を眺めるのって楽しい。


ラプンツェル witch meets knight 犬丸

空気を読まない変わり者の内藤さんと口数が少ない唯地さん。周囲が勝手に作り上げていくイメージとは裏腹な内面。髪の毛に触れるのってちょっと淫靡な空気があっていいな。


Droppin Drops 文:一穂ミチ イラスト:雨

 『ひらり、』に掲載される百合小説は割と独特の方向性のものが多くて私には新鮮。毎回違う作家さんなのだけれど、少し尖った雰囲気で同じ誌面に掲載されている漫画たちとは異質な感じがする。心にざっくり来る感じ? この路線は貴重。小説コーナーはこれからも続けていって欲しいなぁ。


みみみこ 遠田志帆

 vol.1〜3までの表紙を担当していた遠田志帆が漫画を描いてる! ひゃー。カラーイラストは神秘性を感じさせるタッチですが漫画はポップなノリで低頭身キャラが飛び回る楽しいもの。いいもの見ました。


下着屋の娘 大沢あまね

 これは良い下着漫画。ストーリー四コマ。vol.3の「図書室の姫ちゃん」の脇役が今回の主人公。


under one roof 藤生

 作者ブログによるとvol.3掲載の「under one roof」は「短い!」という声がたくさん寄せられたとか。無事に続いて第二話。うわー。うまそう、おいしそう、食べたい、飲みたい。前回も食べ物がおいしそうに登場していましたがどうやら「餌付け百合」というジャンルの開拓をしているのかもしれません。


箱庭コスモス 桑田乃梨子

 ふしぎ研究会=ふしけんは今回もあまりふしぎを研究できずにのほほん空間を展開します。


ピンクラッシュ TONO

 最初はサナとマールがらぶらぶになるまでを描くのかな、と思ったのだけどサナのお気に入り標本箱になりつつある予感も。新キャラの「そういう子いるいる」っぷりも素敵。マール可愛い。


きれいなあのこ 吉田丸悠

 第1回ひらり、GLコミック大賞グランプリ受賞作品だそうです。ぉぉぉ。これ新人? 『トトロ』のメイ並に表情豊かなキャラにがっちりコントラストの効いた絵柄とお話。起承転結の「転」も予想していなかったところにガツンと来ました。大賞もなっとくの32ページ。


 スカーレット・ベリ子と前田ともも読みたかったな。
 次号予告にある木原音瀬はBL小説の人だ。やったー。小説コーナー続くっぽい。

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コミPo!+Metasequoiaで3Dデータ自作 3

 少しだけ進捗ありました。

輪郭線入り3Dモデルのサムネイル

Fatty Polygonというプラグインで裏面ポリゴンを使用した輪郭線描写を試してみました。NAL.3氏のブログ「CoralOcean」で公開されている物です。
 手綱とサドルも装備させてみました。蹄のあたりや足の付け根、キバのあたりに輪郭——が入っているのがわかるでしょうか。この輪郭線はテクスチャではなく片面ポリゴンを利用した物です。

豪徳寺の招き猫の写真 招き猫の3Dモデリング化第二弾には「2号」サイズを試してみることに。現在はこんな状態。

モデリング作業風景のサムネイル

 ポリゴンの段階ではそれなりに作業の仕方も掴めてきました。萌えろ!CG道場+のイノシシチュートリアルがすごく役に立っています。
 あまりうまくできていない部分もあります。

  • UV展開
  • テクスチャ作成

 チュートリアルはとても注意深く構成されていたため、自作モデルを試して初めてテクスチャ作成の難しさを実感することになりました。
 UV展開というのはポリゴンモデルから展開図を作る作業のことで、テクスチャ作成には必須です。テクスチャは「塗装」です。3Dデータでは折り紙を開くように3Dモデルを開いて平らにした展開図を作り、その展開図に合わせて色を塗ります。これが難しいです。

★ ★ ★

コミポ自作3Dアイテム・イノシシのサムネイル

 コミPo!のユーザ3Dデータに対応したver.1.5がリリースされ、イノシシの動作確認ができました。足が食い込んでしまうのが判明したためにイノシシ君には少しウェスト周りのダイエットを試みてもらい、二・三の微調整をしてみました。
 キャラは「逆向きに座る」のポーズを取らせ、座卓上にイノシシを載せて位置・向き・大きさを調節すると右画像のようにきちんと乗ってくれました。
 そしてver.1.5アップデートと同時に「私服」もアップデートされ、レザーパンツが履けるようになっていました。なんておあつらえ向きのアップデート! これは自作乗り物シリーズを充実させていくしかない? 嬉しい更新でした。

 イノシシと招き猫の3Dデータを置いときます。

 コピー・再配布・改変etcご自由にどうぞ。使用時の著作権表記も不要です。

 追記。
 サンプル画像で人を乗っけている設定例です。ポーズは「逆向きに座る」です。

Hogrider_setting Hogrider_lefthand Hogrider_righthand

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『野ばらの森の乙女たち』白沢まりも


野ばらの森の乙女たち 1、2
白沢まりも
講談社コミックスなかよし
2010.11.5 2011.3.4
各440円
★★★☆☆

 なるほど『なかよし』だ。

 百合漫画です。『なかよし』誌掲載です。スタンダードな女子高もので少女漫画ど真ん中の絵柄。背景は花とレースだらけ。非現実的なゴージャスな校内風景。こてこてだけど、少女漫画はこうじゃなくっちゃね!という夢の世界。百合漫画なので王子様役ももちろん女性。白馬ですよ。ストロベリーパニックみたいですよ。お姫さまだっこですよ。わは。
 とテンションが高くなってしまいますが『マリみて』以外で王道の学園物百合少女漫画は今は『野ばらの森の乙女たち』と『ブルーフレンド』だけ。テンションを上げずにはいられません。同時期に二つもど直球の百合少女漫画連載があるだけでも時代が変わったというべきなのかも。

 舞台は伝統あるお嬢様学校・音羽女学院高等科。主人公は初美。幼馴染の親友・さくらとともに入学し、寮も同室。そこに王子キャラの泉やお姫さまキャラの繭子が絡み、憧れの学園生活は波乱だらけに! 出だしこそ幼馴染との友情が描かれますが1巻の第1話で少女同士のキスシーンが展開し、百合まっしぐらでブレがありません。キスの寸留めや押し倒され構図もふんだんに?投入されるイマドキな少女漫画テイストで気恥ずかしくなるようなシーンが次々と展開されます。
 大人の視点からすると「えっ。そこで肌見せるの!?」と小中学生の読者が心配になったりもしますが表現としては目くじらを立てるようものでもなく。ええと、なんというか、生活指導の先生になってザマスメガネで「あなたたちハレンチざます! おつきあいは交換日記からになさいませ!」とキーキー叫びたい感じ?

 というわけで読んで理解のない大人ごっこをするのにお勧め。……じゃなくて、現代的な表現でまとまった純正少女漫画百合を楽しみたい方にオススメ。あとがきによると3巻も出ることが決まっているみたいです。楽しみ。

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『恋愛彼岸 猫目堂ココロ譚』東雲水生

恋愛彼岸 猫目堂ココロ譚
東雲水生
一迅社IDコミックス百合姫コミックス
2011.4.18
900円
★★★★☆

 猫目堂シリーズ完結巻。

 収録内容は百合姫連載分+描きおろし後日譚3P+あとがき3P。表紙カバーは猫目堂シリーズ共通の紙と印刷、デザインで良い感じです。猫目堂シリーズは『百合姫』Vol.12 2008spring号からの連載で三年間連載してきたことになります。

 嫌われることが怖くて本心を出せないヒロインの「リナリアの憂鬱」、引っ込み思案の子と積極的な子のギャップを描いた「紅色らせん」、双子の姉妹と猫目堂の主人を対比させた「心路戀情」。どこか懐かしい感じのする少女漫画らしい絵柄とお話が魅力です。
 今回のお気に入りは双子。ぱっつん前髪の黒髪ロングなんてストライクゾーンど真ん中過ぎてゴロゴロしちゃいます。

 あとがきでは「またいつかどこかで」と締めくくられていて寂しさを感じました。ああ、猫目堂終わっちゃったんだ、と。

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コミPo!で感想・映画『エンジェル・ウォーズ』

Diary20110420

 映画『エンジェル・ウォーズ』を見てきました。字幕版です。

 ネタバレなしの軽い感想行きます。

 テレビCMや公式サイトの予告編ではアクション的なシーンを中心にアピールされている通り、売りはアクションシーン。押井守的な日本アニメのノリで、女の子が刀を振り回し、銃を撃ちまくります。激しくぶっとばされてもダイジョーブ。トム&ジェリーというかドラゴンボールというか、瓦礫をえぐりながらぶっ飛んでも平然と立ち上がり、戯画化されたサムライやナチス兵士をばったばったと倒します。アクションパートだけでも見る価値があるはず。
 時代設定はちょっと古め。1950〜60年代くらい? 遺産相続に絡んで継父に精神病院に押し込まれてしまったヒロインは、病院での過酷な状況に抗います。抜け出すための策と辛い現実からの離脱がアクションパートとなるわけです。ロボトミー手術やショウクラブといった時代がかった設定がてんこ盛りで、記号的な要素で画面にぐいぐい引き込んでいくあたりもアニメ的。ストーリーは「感動の物語」的なオチをつけてはありましたが『300』同様インパクトのある映像を味わうという楽しみ方でOKだと思ったのでした。

 主役は『ゴーストシップ』で幻想的な少女を演じたエミリー・ブラウニング。『ゴーストシップ』では儚い印象でしたが今回はタフな感じの女性に育っていました。医師役のブルー——オスカー・アイザックはジゴロ的な役割も振られているのですがこれが笑っちゃうくらい似合っていました。

 アメリカンポップスの音楽の魅力と日本アニメ的演出、ゴシックホラー的こてこて設定がミックスされていて、ヘンテコな愛すべき作品に仕上がっていると思います。

 蛇足。
 原題は“Sucker Punch”。“sucker”や“punch”といった単語を調べてみたものの、意味の多い単語でニュアンスが掴みづらいです。“sucker”はちゅうちゅう吸うイメージでタイトルはフルーツポンチ的な語感なのかな? punchはヒンディ語で“5”を意味するそうなので少女5人組の戦隊モノ——日本のオタク文化的にはゴレンジャーの少女版みたいなものかもしれない、と思ったのでした。“Babydoll”や“Blondie”といった少女たちの呼び名からするとプレイメイトたちがガンアクションを見せる『グラマー・エンジェル危機一髪』のような映画たちの末裔でもあるのかもしれません。

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『つぼみ』Vol.11

つぼみ Vol.11
芳文社
2011.4.12
980円
★★★★☆

 『つぼみ』の帯は毎回ナゾな感じなのですが今回はナゾ度MAXです。“少女おねがい、さきっちょくもってミチとの遭遇いじわるカガミ”。カイドクモトム。

 短く感想。


表紙 衿和一

 毎号交代なのがもったいないなー。


扉イラスト 箸井地図

 ぼんっ。


星川銀座四丁目 玄鉄絢

 いきなり一ページ目から新キャラ。波乱の展開。始まったときは乙女の可愛さを愛でて先生のダメな大人っぷりを楽しむ感じだったのだけれど、先生の同級生が出てきたあたりから恋愛物らしい複雑さが出てきた気がします。塾の先生と塾仲間にどんな役割が与えられるのか楽しみ。


ひみつのレシピ 森永みるく

 話の進行とともに変な子になっていく若槻。珍しく若槻が花を背負っているシーンなんかもあったりして。びしっと堅く編んだ棒三つ編みの若槻いいな。さーどうなる合宿編。


ネガポジ

 盗撮投稿写真的キャパの女の子を主人公に据えるあたりは『つぼみ』は少年誌というか少女漫画じゃないのだなぁと改めて思ったのでした。カメラネタは好きだけど共感を持ちづらいゾ。ヒロイン?の子が謎キャラ化して次回に続く。


prism 東山翔

 整然とした雰囲気の絵柄の中にやはり整った印象のギャグが折り込まれて独特の雰囲気。テーマ的にも同性愛の難しい部分にアプローチしてきている感じで絵柄と合わせて“理”の骨格を感じます。


花と星 鈴菌カリオ

 たこチュー! ぶう。


苺カーディガン モロやん

 ワンレンうりざね顔の先生には和服を着せたい……。セリフ少なめだけど空気の良く伝わってくる話でした。


とりどりの花 塚井ヨウ

 四コマ。導入部がいきなり男子に「カレカノにならない?」と言われてOKのシーン。百合漫画誌的にアリなのかー!と思いきや……。アリでした。しかもなんだこの展開ーっ。面白いじゃないか。『つぼみ』誌の誌面サイズだと四コマには窮屈気味なのが惜しい。


魚の見る夢 小川麻衣子

 こ、これは。と内容に触れるとバレてしまいそうなので感想書きづらい。><


レンアイマンガ コダマナオコ

 最終回。盛り上がり方は劇的というよりは穏やかに。良い感じに落着。コダマナオコはこのシリーズ以前は『あまだれ!』の印象だったのですが、良い意味でイメージが変わりました。


キャンディ 鈴木有布子

 今回は引きの回。次回どうなる!と気になる要素を積み上げてありました。癖の少ないプレーンな絵柄で、何気ないポーズや構図が立体的な視点でびしっと決まって気持ちいい。


べことてくてく 三谷知子

 牛〜。舞台はどのあたりだろう。お国言葉全開なのがめっちゃ素敵です。土地の人以外にもわかる文脈、言葉を選んでいる匙加減も絶妙。イカ墨で染めたべこパン食べたい。


恋するシュガーコットン 天堂きりん

 一部で物議をかもしていた話みたいだけど……なんで? 面白いよ、これ。百合というテーマは紛れもなく性的マイノリティテーマなわけで、この話に出てきた主人公——異性装の小学生の男の子というのも間違いなく地続きの題材だと思う。百合要素が主人公ではなくて対置される女性キャラ側のストーリーであることが百合専門誌的には変化球ではあるかもしれない。


わんらぶ 杉浦次郎

 このシリーズ、端から読者を選ぶ気まんまんの犬好き漫画。涎、鼻水、お漏らしとワンコ要素満載の超こってり。明確に次回へ繋がる終わり方は初めてかも。


かずといずみ トランスフォーム・ガール

 小野さんは普段どんな保険委員やってるんだー! ほけんしついきたい。


プライベートレッスン ナヲコ

 じわじわと少しずつ話が進んでいっているプライベートレッスン。連載の最初の回は長調でばーんと鳴らし、それ以後は単調のパートが多かった気がします。たまごのテーマはもどかしさのテーマかな。


しまいずむ 吉富昭仁

 なんという花粉症。


 全体に次回へ続く!の引きの強い話が多くなっている気がします。一方で次号予告がなかったりして「これ続くの?」とやきもきさせられる話もあったり。

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『海月姫 07』東村アキコ

海月姫07
東村アキコ
講談社KISSコミックス
2011.4.13
440円
★★★★☆

 前巻はクラゲ服を売り出すぞ、とじたばたし始めたところで終わって07巻は天水館でのファッションショーのエピソードで始まります。いや〜、蔵之介がカワイイ。毎度のことだけど。ファッションショー回は眼福って感じでした。
 ストーリーはショーを終えていよいよブランド「Jellyfish」が稼働しはじめる段階に差し掛かりますが、インド人キャラが出てきたりして今後ははっちゃけエピソードが期待できるんじゃないかな、なんて思ったのでした。単なる脇キャラかもしれないですが。
 今回は蔵之介と修兄の少年時代にもスポットが当たり、これまた良い感じのエピソード。奇想天外な過去ではないけれど、こういう素敵なエピソードを次々と用意できるのが東村アキコのすごいとこ。月海の生い立ちもまだ謎が残されている気がしますし、ばんばさんやじじさまもきっとそのうち脚光を浴びるに違いない、なんて期待してしまいます。

 蔵之介の作っていた簡単スパゲティ・カルボナーラはとてもおいしそうでした。

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コミPo!+Metasequoiaで3Dデータ自作 2

四コマ漫画時間泥棒のメタセコ

 前回作業していたイノシシ、テクスチャに影を入れたものはコミPo!上でこんな風に表示されるようです。今回もともろー氏に表示サンプルを出していただきました。お忙しい方なのに恐縮してしまいます。

影付きテクスチャモデルのサムネイル

 イノシシはコミPo!のユーザ3Dアイテム対応版までにはテクスチャをもう少し進化させたいところ。

イノシシ3D練習モデル最新状況

 現状は右上枠みたいな感じでハイライトを入れてみたけれど失敗クサイです。

★ ★ ★

 メタセコイアにも慣れてきたので、当ブログの柱の一つ・招き猫をモデリングしてみることにしました。一口に招き猫といっても色々なタイプがあり、豪徳寺タイプはネット上のフリーのモデルでは見つからないようです。というわけで自作してみることに……。

  1. 招き猫の実物を用意する
  2. 前・横・後ろ・上から撮影する
  3. 3Dモデリングツールの“下絵”に表示してモデリング
  4. 写真からテクスチャを起こしちゃおう

 こんな目論見で作業を始めました。現在はモデリングが概ね済んで、テクスチャを作ろうかなという段階です。三面図風の下絵写真があればなんとかなる、かも。

 でも、テクスチャが難しい。

 写真のレタッチに使っていたシンプルなフリーソフトでは思ったように加工できずに挫折しました。現在、レイヤー処理の使いやすい画像加工ソフトを探索中。

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Scansnapと連携する読書環境・brc+bReader

 以前に、「iPod touchとScansnap」という記事で“イマイチ”と評したiPod touchでの自作電子書籍活用、条件付きですが“使える”環境もありました。
 まずは、iPod touchのスクリーンショットを見てください。

Brc_sampleBrc_sample2

引用元:『出撃!魔女飛行隊』ブルース・マイルズ著 手島尚訳 学研M文庫

 bReaderというiOS Appとそのおまけソフトであるbrcを利用してスキャンした文庫本を表示してみたものです。スキャンデータなのに、文字サイズを変えてリフロー表示できています。

 brcはMac版とWin版の両方があります。

 bReaderはiPhone/iPod touch用の電子書籍ビューワです。ePubや青空文庫形式、PDF、テキストなどの様々なフォーマットの書籍を読むことができるアプリで、bookYARDという電子書籍投稿サイトとも連携しています。

 Scansnapなどのドキュメントスキャナで作成した電子書籍には弱点がありました。iPhoneやiPod touch、あるいは昔のPDAのような小さな画面の端末に表示させたときにとても読みづらくなってしまうのです。スキャナで読み取ったものはただの画像なので、小さな画面に表示させると文字が小さくなるか、ページの一部しか表示できなくなってしまいます。“リフロー”ができないということですね。
 これを解決するには二つの方法がありました。

  • OCRでテキスト化する
  • MeTilTranというツールであらかじめ読みやすい文字サイズ・配置にリフローした画像を作っておく

 前者には認識率の問題があります。使ったことのない人が想像するよりはずっと認識率は高いですが、半端に誤認識が出るために純粋なテキスト化はめんどうです。後者は「画像を文字単位で切り出して(昔の新聞切抜脅迫状のごとく)並べ直して好みの版組に直すというツールで、設定の難しさもあってマニア向きでした。
 ところがbrc+bReaderという環境ならば

  1. スキャンデータのJPG連番ファイル群をZIPで一つにまとめる
  2. brcというツールにDrag∧Drop
  3. ZIPファイルに解析情報が格納される(サイズはほとんど増えない)
  4. iTunesでiPhone/iPod touchに転送しbReaderで表示する

 これだけでリフロー可能な電子書籍となります。なんてイージーなんだろう、と驚きました。

  • 罫囲いされていたり装飾的な体裁の本ではうまく機能しない
  • 縦書きの本専用

 など、不完全な部分もありますが(ver1.01beta11)、今のところiPhone/iPod touchでスキャンした縦書きの本を読む、ということのもっとも手軽で快適な環境であると思います。

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コミPo!+Metasequoiaで3Dデータ自作 1

 コミPo!の次バージョン・1.30からユーザ作成3Dデータの読み込みに対応するとのことで、3Dモデリングツール・Metasequoia——通称メタセコの練習を始めてみました。「萌えろ!CG道場+」というサイトのチュートリアルをなぞってみたものです。

メタセコで作業中
Metasequoiaで作成したイノシシ
コミPo!上で表示したMHRイノシシ

 上が制作途中で、真ん中がメタセコ上での(暫定)完成型。下はコミPo!製作スタッフのともろー氏が表示してみせてくださったもの。(私は先行テスターではないので自前ではまだ試せない)
 六角大王をちょろっと触ったことがある程度のまったくの3Dモデリング初心者で、ここまでで休日丸一日分くらいの時間がかかりました。

 眼と牙が片方しかないのは「ミラーリング」解除を部分的に忘れていたから。右側面のDUCATIの文字は正常ですが左側面は鏡文字になってしまいました。“テクスチャ”というものの扱いがまだよくわからないです。コミPo!ではモデル自体に影を持たせて(テクスチャに描き込み)表示するそうなので、影ナシで作ったイノシシはのっぺりしてしまいました。
 また「輪郭線はテクスチャに描き込んだ方が良い」らしいのですがこれがよくわからなかったり。ただポリゴンの稜線に黒線を入れただけだと邪魔な線が増えるだけだし……。輪郭線を構成して欲しいポリゴンの稜線に縫い代みたいな帯ポリゴンを黒で立てればいいのかな?

 影はペイントツールで付ければ良いのですが、レンダリングしたデータを元にテクスチャに描き込ませる方法もあるはず、と調査中。テクスチャの作成はお絵描きスキルに近いものが要求されるようなので絵の下手な私には難関です。メタセコによる3Dモデリングもチュートリアルに沿って作業するならばさほどヘンなものにならないようですが、オリジナルの立体物は相応のスキルが必要になる予感がします。

 とりあえず手動ペイントで影をつけてみました。(4/11追記)

メタセコ+コミポで自作3Dモデルのテクスチャに影を入れる作業

 三諧調で影だけのレイヤーを矩形で塗り、ぼかして、透明度設定して、元のテクスチャに統合。大雑把なやり方ですが↓にまとめてみました。

 自作小説を漫画化したい!と思い、登場するメカの3Dモデル自製を目標に始めたメタセコ。道のりは長そう。

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第28回福島正実記念SF童話賞・結果

 4/8に帰宅してみると岩崎書店からの封書が届いておりました。今回はどうだったかな、とワクワクしながら覗いてみたところ見事に一次落ち。第26回(一昨年)に投稿した話よりも面白いものにできたと思ったのですが。残念。
 次はどんなものを書いてみようかな。

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『きんいろモザイク』原悠衣

きんいろモザイク1
原悠衣
芳文社まんがタイムKRコミックス
2011.3.26
860円
★★★☆☆

 『ラッキー・ブレイク』と一緒に買ってきた物。どちらも百合コミック読者のブログや掲示板から百合クラスタ?の人々に広がっている模様。

 『ラッキー・ブレイク』とは違って学園物。海外からの転校生をキーに金髪・欧米萌えの主人公とその友人たちで構成するゆるふわ四コマ。登場人物が女性ばかりでふわふわした空気感ということで確かに百合コミックファンにも受けそうな気はするし濃いめの友情も登場しますが百合漫画ではないです。

 絵柄は可愛いし、お話も毒がなくて安心してほのぼのできるしで割と良い感じ。こちらもやはり絵を見てぴんと来る人向け、かな?

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桜前線@豪徳寺

Comipodiary_20110404

 豪徳寺の桜も咲き始めていました。
 というわけでコミPo!でレポート。狛犬の乗った香炉の近くの枝垂れ桜はかなり花が開いていて三分咲き。正門の近くの桜はまだつぼみ。招き猫のお堂の東側にある赤門の桜は五分以上咲いていました。招き猫奉納所のすぐ後ろにある桜は八重で、こちらは今月末が満開になると思います。

R0015653

 こちらは八つ橋が供えられていた招き猫奉納所。
 食べ物はカラスが棚を荒らしにきちゃいそうな。だいじょぶかな?

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『ラッキー・ブレイク1』平つくね

ラッキー・ブレイク1
平つくね
芳文社
2011.3.26
860円
★★★☆☆

 Amazonのオススメに出てきて絵柄が好みっぽかったので買ってみた一冊。買ったのは近所の書店ですが。

 職業モノです。美大に入学したヒロインですが実家の経済状況が傾いて学校を辞めることに。バーテンとしてアルバイトしていたところにひょんなことからお仕事ゲット!と始まるお話。絵柄は可愛いし、描き込みもぎっしりで力が入ってるのがよくわかります。単行本だと雑誌よりサイズが小さいせいかキャラの判別に少し戸惑うのと、描き込みが細かくてわかりづらい部分も。職業モノとしてはストーリーと業種との絡みがやや薄いかな。
 絵柄とキャラの可愛さは文句なしなので表紙を見て気になった人には合うと思います。

 登場人物は女性ばかりで、女性同士のセクハラギャグは多く、女子好きキャラも設定されていますが百合要素は薄いです。百合物ばかり買ってるAmazonでなんでオススメに入ってきたのかな。

 この漫画には「かまぼこ」とヒロインに名付けられたぬいぐるみが登場しますが、あるキャラがこのかまぼこを呼ぶときに先頭に「お」をつけ、敬称に「ちん」をつけて呼んでいたのが妙にツボにはまってしまいました。

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『コミック百合姫』2011年5月号

コミック百合姫2011年5月号
一迅社
2011.3.31
★★★★☆

 東日本大震災の影響で発売日が3/18→3/31とずれ込んでいた『百合姫』が無事に発売されました。大きなシェアを持つ東北の製紙工場やインク工場が大打撃を受け、当面は出版にも影響が出るとの状況でよく二週間の遅れでも出すことができたな、と思います。次号の出る五月には状況も立ち直っているのでしょうか。


表紙&カバーノベル

 中二病全開の妙にカッコイイお話&イラストの第三回。やはりオムニバス形式で行くようで今回も新キャラが主人公。連れない話だな、と思ったら……。小説としてはショートショートという感じのボリュームなのに毎回驚きの展開が仕込まれていてほへーとなります。


扉イラスト タカハシマコ

 今回も目次は透けのある紙なのですが、部分透けではなくて唐草模様的なトーンでの縁取りでイラストが覗きます。イラストの次のページの印刷が響いてしまって淡いトーンが少し惜しいことに。>< いつか出るであろうCOLOR ART WORKS2に収録されるといいな。


もし婚活中のアラサーOLが塩田酒造の『六代目百合』を飲んだら

 タイトル長いよっ、『もしドラ』のパロディかよっ。タイトルページのイラストも『もしドラ』の構図だよっ。作画担当の八色って四コマで新人賞取ってた人ですね。カラーの絵柄も親しみやすいなー。イラスト付きのショートテキストです。文を書いている人は「NOV」ってなってますが正体不明ですね……。


ゆるゆり なもり

 アニメ化決定の「ゆるゆり」は今回5話60ページ。巻頭にはアニメ資料と思しきカラーページもありました。5、6、7巻毎月連続刊行って大丈夫なんだろうか。


あたしはお姉ちゃん ロクロイチ

 ロクロイチはこういう話も描けるのか、と意外でした。妹がばか過ぎて可愛い……。自作漫画でラブレターとか恥ずかし過ぎるぅぅぅ。


百合男子 倉田嘘

 今回は見事なバイオレンス?シーンがあります。百合男子はネット評を見ると「面白い!」という人と「最悪!」という人にきっぱり別れるようで、バイオレンスシーンは「最悪!」派を代弁させたシーンなのではないかなー、などと思ったのでした。倉田嘘は少年誌ばりの格闘シーンも決まるんだなーと新たな発見。


Rose letter 慎結

 うわー。こっぱずかしいじゃないかー。慎結は絵柄もストーリーも純正少女漫画。


スターティング・オーバー 南崎いく

 Wildroseではよく登場していたけれど百合姫本誌では初掲載。もっと早く本誌に呼べば良かったのに、と。面白いじゃーん。4/18発売予定の単行本『Sweet Little Devil』はWildrose掲載作品の収録のようです。描き下しや百合姫系以外の掲載作はないのかな?


Vampire girl 田仲みのる

 田仲みのるは芸幅が広いなー。今回は吸血鬼ネタの前振りから入り、少し意外な感じのする展開のさせ方。そう来たか!みたいな。


あまいゆびさき 宮木あや子

 第2話。前回で完結したのかと思ったけど続編キタ。今回は中学編。お話的には一段落しているけど【続】で終わってる。ヤター。


パーラーゆりひめ 藤生

 藤生先生、すごい犬っぷりです。


恋愛遺伝子XX 影木栄貴+蔵王大志

 今回は恋愛遺伝子XXも恥ずかしいオーラが。春ということで編集部がぽわぽわ恥ずかしチケットの配布でもしたのでしょうか。エトワールが特権階級らしいことはわかったけどまだ設定面の謎が多い感じ。


ふ〜ふ 源久也

 今回は主役ペアの姉・かななさんの話。モテモテのはずのかななさんにも弱点が……。


心路戀情 猫目堂ココロ譚 東雲水生

 最終話。あぁ、なるほどこういう設定だったのか……。長く連載してきたような気もするけれど季刊誌だったこともあって三巻分。猫目堂もこれでお別れなのかな。寂しいな。単行本が楽しみ。


レンアイ♥女子課 森島明子

 今回はバブリーな世代の二人。城王主任と鐘古デザイナーはビジュアル的にもメイクばっちりな感じの大人キャラ。プラス、新キャラも一人加わってそれぞれの関係が動き出しそうな? 次回も城王主任と鐘古デザイナー+新顔のハトちゃんでお話が進みそう。城王&鐘古世代のヒロインの百合話が読めるのなんて森島明子だけの気がします。この二人、カッコいいなぁ。鐘古デザイナーの鉄壁笑顔ぶりがコワくて切ない。


或る少女の群青 百乃モト

 電車の中での百合カップルWatchが日課になっていた主人公、ある日、その百合カップルと会話を持つきっかけを得て……。面白かった。同時にお話のその後を思うと苦しくなった。約束は果たされるのだろうか。現実の前に押し流されはしないか。口にしてしまった言葉に縛られてがんじがらめになりはしないか。と先のことを案じてしまうのはきっとこの話の痛みとか重みの部分に共感したからなんだろうな、とじんわり思った。


3秒ルール かずまこを

 うはー。ヤラレタ。わずか12ページでなんなのこのキレの良さ。きゅ〜。今号のMVPはコレ。


愛しい人 竹宮ジン

 陽子とナナの話の三回目。今回は少し時間が経過した大学生の陽子の視点でエピローグ的なアプローチ。


むげんのみなもに 高崎ゆうき

 なんとなくずうっと続いていきそうな気がしていたのだけれど前号のラストシーンから緊迫&核心に触れつつあるような。そもそもの謎——カギリやみなもの時間にまつわる特殊設定が明らかになっていくのかな。


SSを書こう

 対話形式の百合SS入門ガイド。これは「百合男子」の啓介妄想シーンとの連動企画かな。しっかりしたガイド記事だけど、これ、きっちりやるのは難しいことを求めている気はする。「中島梓の小説道場」みたいなのの百合版できないかな。


 次号、テクノサマタのリニューアル号掲載作の続編が予告に。これは嬉しいな。「飴色紅茶館歓談」も続きが。今号で「もしドラ」風のイラストを担当していた八色も四コマ連載開始で和物、服ネタ好きには嬉しい。

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『高校生のジェンダーとセクシュアリティ』

高校生のジェンダーとセクシュアリティ
須藤広(編)
明石書店
2002.10.16
★★★★☆

 タイトル通り、高校生に向けて書かれたジェンダーとセクシュアリティの本。ジェンダーって何? セクシュアリティって何? というところから、高校生が直面している性の健康の問題、フェミニズム、性的マイノリティ問題までを幅広く紹介。日米中の高校生たちを対象にしたアンケート調査なども含め、高校生の性の現実と課題を五人の専門家が五章構成+αにまとめたもの。
 以下に目次を引用。

第1章 高校生のジェンダー意識についての国際比較 須藤廣
第2章 高校生の就業意識とジェンダー 窪田由紀
第3章 高校生のジェンダーとセクシュアリティの現状 劔陽子
第4章 産婦人科医から見た思春期のセクシュアリティ
第5章 トランスジェンダーの社会学 鈴木健之
グループ討議 高校生と語るジェンダーとセクシュアリティ 三村保子/力武由美 ――さまざまな“性”と“生”を自ら選びとるために
コラム
  高校生のジェンダーと親子関係 野依智子
  思春期の性 大庭智恵

『高校生のジェンダーとセクシュアリティ』目次より

 トータルとしては「ちょっと物足りない」でした。
 第1章と第2章はフェミニズム寄りの視点から。第3章と第4章の内容はかなり共通していて比較的な生々しい現実の問題、フェミニズムや思想からは少し距離のあるフィジカルな内容です。狭義のセクシュアリティ(ジェンダー的視点に寄った)を期待して読みはじめたので広義のセクシュアリティ——ヘテロセクシュアル前提のリプロダクション・ヘルスに属する話題は「あれれ?」でした。でも、高校生に向けた「性」の本ならば、これで良いような気もします。

 ジェンダーを扱った本を読んでいつも思うのは「なぜ、世界と敵対してしまうのだろう」ということです。ジェンダーだけじゃないかな。在日外国人差別問題や少数民族問題、障害者問題、つまりマイノリティを取り上げた本では必ず今の世の中を敵視し否定するところから始まる本が多い気がします。大勢から現実に弾かれているから、疎外されているからそれを批判する声を上げるのは当然——ではありますが、対立構図を描いてしまってはマイノリティの意見がメジャー化した暁には、今度は逆方向の差別・偏見の温床になってしまいそうな気がして受け容れ難い。もちろん、この本の中でもかつての攻撃的なフェミニズム運動が問題を生んだことは紹介されていて、むやみに煽り立てることには批判的ですが、やはり筆者らが「迫害されている特別な立場」をアイデンティティにしているように見えてしまう記述も1、2、5章からは感じました。
 男性社会におけるヘテロセクシュアルの“男らしい”男性(=マジョリティのど真ん中にいそうな人)であっても「男性原理万歳。世界は俺を祝福しているぜ」なんて順境に感じているとは思えないのです。誰にとっても敵はどこにでもいる。だって、エゴが100%充足される現実世界なんてどこにもあるわけがないのだから……。などと思ったのでした。

 私が読みたかったもの、期待に近い、と感じたのは1、2、5章で、多少物足りない気はしたのですが、高校生が初めて手に取るジェンダーやセクシュアリティの入門書としては逆に重かったかな、とも思います。男らしさ女らしさの話から社会に置ける役割分担の話はロジックの繋がりがすっきりとせず、男女平等という結論が浮いてしまっていたような。
 同性愛についても取り上げられてはいるのですが、私がこの本に期待した「高校生になって同性愛的な自己の感情に直面し、悩んだ時に読む本」としてはあっさりしていて用語の解説と基本的な概念の紹介に終わっていたのが残念。
 巻末の高校生を交えたトークは高校生のセクシャリティの現実を感じられたし、紹介されていた書籍類も収穫にはなりそうなものの手放しには褒めたくないかな。でも「考えるファーストステップ」としての役割は十二分に果たしていると思います。ジェンダーやセクシュアリティに興味を持ちはじめた方にオススメ。

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