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e3paper 雑学コンテスト&ツイートコンテスト

 e3paperというデジタル同人書籍販売サイト主催のコミPo!のコンテスト二つに参加しました。

雑学コンテスト&ツイートコンテスト

 結果は……

雑学コンテスト雑学×保健室佳作
ツイートコンテスト時給60万円の仕事:タイムマシン佳作

とダブルで佳作をいただきました。

 雑学コンテストの賞品はコミPo!の3Dアイテム三点。

  • ハードル
  • ビーチバレーセット
  • バドミントンセット

 こちらはツイートコンテストの賞品、ポスター&絵はがきは昨日届きました。

ツイートコンテスト賞品

 コミPo!のパッケ絵のポスターが来るのかな〜と思っていたのですが、開けてみたらいまざきいつき氏のコミPo!イラストでした。これ、カッコいいです。ポスターは紙っぽくない素材(店頭に長期飾られているような厚手のシート?)に印刷されていて稀少グッズっぽいかも。絵はがきは実用になりそうなフキダシ付き。

 次は少し長めのストーリー漫画に挑戦してみようと思います。って3Dアイテム作りと平行して(不足アイテムは空白のまま)作りはじめてみたのですが、学園物でも作りたい話を作ろうとするとアイテム製作でいっぱいいっぱいになってしまいますね。それでも丸ごと手描きで漫画を描くよりはずっと楽なのは確か。3D背景や部活用小道具はいくら作っても足りなさそう。
 「雑学×保健室」を作っているときにも思ったのですが、コミPo!は10ページを越えるあたりから操作の重さが気になりだし、15ページを越えるとめっきり動きが悪くなってきます。画像出力でもコケることが多くなってきました。

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『絶滅したふしぎな巨大生物』川崎悟司

絶滅したふしぎな巨大生物
川崎悟司
PHP研究所
2011.5.28
★★★★☆

 ページのほぼ半分がイラストで埋め尽くされた古生物本。大きさは13×19cmでA5より一回り小さいくらいのソフトカバー。208ページすべてカラーのきれいな本です。

 著者は「古世界の住人」というサイトで最新の古生物知識をイラストで解説していらっしゃる方で、この本にも古生物研究の最新情報を反映させた復元イラストがたっぷり収録されています。横書き体裁の本で、見開き左側には解説文が、右側にはイラストが来る構成。取り上げている生物のバリエーションも豊かで、テーマである“巨大生物”のスケールの妙とヘンテコさ加減が楽しめます。
 面白いのは姿形のヘンテコさだけではなく生物としてのヘンテコさが古生物学研究の成果とともに紹介されていることです。研究そのものの魅力をわかりやすい図解で盛り込んでいて、地球環境の変動の歴史をさらりと紹介していたり、対立仮説を並べて比較したり、仮説の変遷を追ったりとただ単に「デカイ生き物がいたんだよ」図鑑で終わっていない古生物学へのラブがぎゅう詰め。イラストの比重の大きな本ですし、解説文もボリュームが限られているためにさっくり読めてしまうのですが、何気なく情報密度スゴイです。

 今回の本で一番気に入ったのはプロトタキシテスという巨大キノコ。扱いは小さめだったものの(ナウシカの)「腐海だ!」と嬉しくなってしまいました。これ、化石の実物が見てみたい。キノコの化石って残るものなんだな〜。胞子とか植物にこびりついた状態の模様として残っていたりサルノコシカケの仲間は残りやすいって何かで読んだけど、菌類のマクロな形が単体で残っているというのは興味深いです。大きくなるために堅く、強い構造を取っていたのが残りやすさに繋がったのでしょうか。

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Safari5.1が日本語縦書き表示に対応

Mac OSX Lionのリリースに合わせてSafariがバージョンアップ。新SafariはSnowLeopardにも対応です。
 新機能は色々あるようですが

  • 日本語縦書き表示に対応

 小説創作系サイトとしては重要なバージョンアップです。SafariのエンジンになっているwebkitはGoogle Chromeのエンジンでもあるので縦書き表示を採用するサイトも増えるのではないかと思います。

縦書きテスト

 まずはサンプル。

山路やまみちを登りながら、こう考えた。

に働けばかどが立つ。じょうさおさせば流される。意地をとおせば窮屈きゅうくつだ。とかくに人の世は住みにくい。

夏目漱石『草枕』より

 Safari5.1以降であれば上の部分は縦書き表示されているはずです。恐らくはIE9以降でも。タグは以下の通り。

<blockquote style="writing-mode: vertical-rl; max-height: 20em; -webkit-writing-mode: vertical-rl; font-family: "HiraMinProN-W3", "@MS 明朝", serif, sans-serif;"> <p><ruby><rb>山路</rb><rt>やまみち</rt></ruby>を登りながら、こう考えた。</p> <p><ruby><rb>智</rb><rt>ち</rt></ruby>に働けば<ruby><rb>角</rb><rt>かど</rt></ruby>が立つ。<ruby><rb>情</rb><rt>じょう</rt></ruby>に<ruby><rb>棹</rb><rt>さお</rt></ruby>させば流される。意地を<ruby><rb>通</rb><rt>とお</rt></ruby>せば<ruby><rb>窮屈</rb><rt>きゅうくつ</rt></ruby>だ。とかくに人の世は住みにくい。</p> <p style="text-align:right;"><cite>夏目漱石『草枕』より</cite></p> </blockquote>

 対応していないブラウザであれば通常の横書きに見えるはずです。

 行間の調整(ルビのある行とない行とで本文行間を一定にする)というのもできるはずですがやり方不明。

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映画『コクリコ坂から』

 ジブリ映画の『コクリコ坂から』を見てきました。

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 原作は1980年の少女漫画だとか。

 主人公は松崎海。下宿の世話係も兼任の高校生・海(愛称:メル)はある日、学内誌“カルチェラタン”を発行している風間俊と印象的な出会いをする。“カルチェラタン”——老朽化したクラブハウスの取り壊し計画を阻止すべく行っていたデモンストレーションで屋根の上から目の前の池に飛び降りてきたのが俊だった——と始まる恋愛ストーリー。

 良かったポイントはレポ漫画に任せて気になった点など。
 海、船、経済成長期、“戦後”が色濃く残る学生文化、学生運動を感じさせる自治意識、と昭和ノスタルジーを前面に押し出したジブリらしいお話でした。この昭和中頃の香りは現代の若者たちにどう感じられるのだろう。
 “カルチェラタン”取り壊しの危機に際して「古いものを壊すのは過去の記憶を捨てることと同じ」というようなセリフが登場しましたが、これが作り手側の懐古趣味の自己弁護っぽく響いてしまい「海も俊も高校生なのに……」と釈然としない気持ちになりました。伝統を愛する若者がいたっていいけれど、未来は?と。海も俊も将来の志望はあるようですがそこには焦点が合わされないまま、歴史ある“カルチェラタン”を守ることと海と俊の出自を辿るという過去に向かう話で物語は進みます。未来に向かうために過去を整理……ということなのかな?
 最後は「めでたしめでたし」なのですが、素直に良かったと思えないのです。だって「めでたし」になる前に発されたインパクトのあるセリフの、その前提が失われてしまうのです。フリダシに戻った二人の間に、恋は成立するのだろうかと心配になります。
 演出の面では考えることを求められる場面が多かったです。シーンの切り替えで状況が途切れる演出が多く、合間ではこういうことがあったんだ、と頭の中で想像し納得しながら次のシーンを見ている状態になって没入感が得にくい作りになっていました。納得の行かないシーンはなかったのでこの没入させない作りは意図的なものなのかも。海の呼び名が前置きなくメルになっていたりするのもこの一部でした。「海と俊の関係の変化を象徴しているのだな」と頭の中にロジックが働くわけです。観客をがっちり掴んで引きずり込むなりふり構わない力技の宮崎父と距離感を保つ宮崎吾郎監督。技量の差なのかもしれないけれど、スタンスの違いのような気もします。

 不満も挙げちゃいましたが、トータルでは「良かった」です。
 前向きで悲壮ぶらない誠実な登場人物たちを見て、こういう青春を過ごせれば良かったのに、という気分で胸いっぱいになりました。

 『ゲド戦記』で不評であったらしい宮崎吾郎監督。『ゲド』でも私は割と楽しめた方なのですが、今回の『コクリコ坂から』で評価も挽回できたのではないかと思います。ジブリ作品の中で一番雰囲気が近かったのは『海がきこえる』かな〜。

 DVD/Blu-rayも出たようです。映画版『コクリコ坂から』

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Mac mini late2009のメモリを増強

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 新型Mac miniが登場した今日この頃ですが、旧型miniのメモリを強化することにしました。

 私の使用しているのは白アクリル天板の最後のMac mini(late2009)。標準で2GBのメモリが搭載されていました。2GB→8GBにしよう、ということです。
 用意したのは以下のアイテム。

 いよいよ分解開始。

Mac mini分解準備サムネイル

 いただきま〜す。

Mac mini分解中サムネイル

 かぱっと開いたところ。2010年モデルより前のMac miniでは分解にスクレーパ(ヘラ)が必要です。分解手順は解説サイトがたくさんあるので探してみてください。スクレーパーはひとつで十分でしたが、力加減がよくわからなくてハラハラしました。

 分解は……VAIO type Pに比べると簡単だったものの、ユーザによる分解が想定されていないのは旧Mac miniも同じなので家電やメカ物の分解・組立に慣れていない人にはお勧めできない感じです。

 メモリを入れ替え、仮組み状態で起動してみると……。
 Beep! Beep! Beep!
 うわわー、失敗? と組み直し。再度Beep! およよ? なんでだろ。新しく買ってきたメモリと旧メモリを混在させてみると——動いた。新しいメモリの側だけ入れ替えてみるとやはり動く。つまり、新メモリはどっちも健全?
 二枚とも新メモリにして幾度か抜き差しを繰り返してみたら無事に起動しました。

メモリ増設成功サムネイル

 OSを起動して確認。
 8GB認識。

 組立はBluetoothアンテナコネクタの取り付けにちょっぴり苦労した程度ですんなり終わりました。

 効果のほどはというと、あまり変わらないかも。
 MacではwebブラウズとTwitter、メール、文章書きくらいしかしないのです。iTunesやiPhoto、OpenOffice.orgなど、利用するソフトを全部同時に起動しても重くならないのは良かった。

 これでMac OSX Lionを入れても大丈夫。たぶん。

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『コミック百合姫』2011年9月号

コミック百合姫2011年9月号
一迅社
2011.7.16
★★★★☆

 いつも通り、各々短めの感想。


表紙 ガールズアップライジング/深見真/カズアキ

 今回の表紙は銃&少女ではなく一息入れているシーン。小説の内容も夏休み風にほのぼのしていて今号は夏休み特集号。


裏表紙 ゆるゆり/なもり

 命名。あかり=見返しヒロイン。


もくじイラスト さかもと麻乃

 少し意外な感じの水着イラスト。さかもと麻乃の露出度の高い絵ってあまり記憶にないかも。肉感的な丸顔キャラ×2で来るとは……。


ロケット★ガール 田仲みのる

 巻頭カラー。新連載。うわー。読んでみると確かに田仲みのるらしいんだけど、毎回“違う”ものを出してきて、そのギャップが毎回大きくてびっくりする。今回も田仲みのるの新しい面が見れたー。
 音楽ネタ。路上でギターを手に歌っていた鈴原奏の前に現れた美少女がいきなり……と、のっけからこちらのハートを掴みに来ます。ずばっと切り込んでくるキャラに弱いかも。古街キッカの『ナイフエッジガール』のときもソレ系のキャラに心ワシ掴みされたっけ。タイトルページのカッパー色の特色カッコエエな。次回以降も楽しみ。


ulacoi かずまこを

 冒頭の「考えとく」のモノローグ、誰のセリフだろうと気にしながら読み進めて、なるへそ!と腑に落ちたとたんにヒロインの片割れがとても可愛く見えたのでした。


宵待群青姫王子 テクノサマタ

 前号オアズケになってしまったテクノサマタの待望の続編。てんぱりキャラのいちこのテンションと軽く天然ぼけの入った王子様キャラエミュレータ装備のるりの組み合わせで独特のリズム感。そして“To be continued.”の文字。やったー。三回目もあるみたい。


ふ〜ふ 源久也

 おや? 今回は四コマだ。中身はいつもと同じゲロ甘に恥ずかしい「ふ〜ふ」でした。


Roundabout 乙ひより

 乙ひより、久々の気がする。ちょっぴり変化球。冒頭3ページ目のタイトルページでの主人公のモノローグがいきなり「だからそろそろ振ってやろうかと思う」って。えええ。乙ひよりキャラっぽくないんじゃ、とおろおろしながら読み進めることに。・・・・た、たらしめぇぇぇぇ。と思わず拳を握った読切りでした。


はんぶんこ 大北紘子

 前号でファシズム的な世界設定を描いた作者。今回の世界とは繋がっているのかいないのか。戦後という設定で多少封建的な雰囲気はNHKの朝ドラで見る昭和初期のよう。今回は絵の印象も前回とは少し違いました。


大人の女は無理をしない 天野しゅにんた

 天野しゅにんたと森島明子は百合姫の社会人百合双頭。今回も大人キャラの話で読ませる! この作者、お笑いの血が流れているというか、おっさん的センスというか、しょーもな!と突っ込み来そうなネタを仕込んでいるあたりに昭和を感じます。


魔女は言葉を投げ捨てる 森田季節/小山鹿梨子

 作者の森田季節は『不動カリンは一切動ぜず』で初めて知り、その伝奇色の濃さにびっくりさせられたのですが、今回も伝奇というか民俗の香り濃い話に仕上がっていてとても納得しました。『百合姫』1月号よりも民俗というか柳田國男的かも。作中の呪術のありようから民俗スキスキ光線が出てます。


恋語インタラクティブ かもたま

 女子校の文芸部を舞台にしたお話。絵柄の濃さどちらかというと男性向けの萌えタッチorギャグよりで投入されるネタはところどころで際どかったりするのですが、パワフルでイケそうな感じ。百合姫9月号と同日発売の同作者の単行本は存在を知らずに買い損ねてしまったのですが(公式サイトあたりで事前に告知して欲しい……)読んでみたくなりました。小説わなび的にはポメラ+電子辞書専用機を小道具として登場させるあたり「グッチョイス」なんて思いました。丈夫で持ち運びできて使いやすくて、学生向きだな〜と。細かいところですが。


きものなでしこ 八色

 何やらほのぼのした日常四コマになっております。キャラも掴めて来たしのんびりしたノリも「まんがタイムきらら」系っぽくていい感じ。でも、キモノは〜? 和服着せましょうよう。七月発売なら七夕……は発売日的に二週間遅れ、なら、夏祭りとか花火大会で浴衣が見たかったなー。次は秋の収穫祭あたりでぜひ。


夕暮れ、オレンジ、咲く花は 大沢やよい

 第五回百合姫コミック大賞の受賞者。掲載作は新たに描かれたもののようで瑠璃賞受賞作「落ち葉のゆくえ」とはタイトルが違います。絵も安定していて余白の使い方なんかもうまく作画の視点も多様で新人っぽさは薄めです。話も友情と同性愛者に対する周囲の目とを組み合わせたナイスなもの。期待できそうな気がする。


Raubritter 再田ニカ

 むむ。これは単行本買ってたので中身知ってたぞ。アニメ『ゆるゆり』を見て初めて『百合姫』を手に取った人向けかな?


あまいゆびさき 宮木あや子/ロクロイチ

 宮木あや子の小説第四話。ふと思ったのだけれど、この百合的な定石からほど遠い貧しく荒れた環境でのこの話、『百合姫』読者からの受けは良いのかな。巻頭の「ガールズアップライジング」のようなライトノベル世界ではなく、『荊の城』のようにゴシックが薫るわけでもなく。げっそりするような荒んだ環境で育っていくヒロインが描かれていてどうにも夢が描けないと思うのです。小説好きとしてはこういう「うわー」と思うような設定もおいしくいただけるのだけれど、百合コミック誌でこの内容が読者がついて来ているのか心配になります。せめて一迅社文庫での百合モノの扱いがもう少し良ければ百合姫との連携もできたのでしょうが、一迅社文庫は少年向けも少女向けもラノベのお約束のの範囲を外れるようなものを出せないようで、現在『百合姫』に掲載されている小説のどれも一迅社文庫からは出せなさそうな内容に思えます。「ガールズアップライジング」がかろうじてライトノベル的ではありますが……。


恋愛遺伝子XX 影木栄貴/蔵王大志

 けっこう話が進んでいた気がしたのだけれど、ここに来て初めて親友というワードでいちゃこらかいっ。影木・蔵王組らしい話ではあるけれどこの展開は予想外でした。


sweet desire 竹宮ジン

 インパクトのあった前編。今回の後編は収まるところに収まったという感じで納得のオチ。これは分けて読まずにまとめて読める単行本の方が評価高くなりそう。新刊『キラキラ』が出たばかりだけど、次の単行本が楽しみ。


レンアイ女子課 森島明子

 ぉ。ぉぉぉ。なんと。連載もけっこう長いこのシリーズですが、アリス×咲でもう一山来ました。しかもかなりデカイ山。落着したかに思っていたペアの話に爆弾投下です。うわー。これは気になる人はレビューとか読んじゃダメです。とっとと今号の『百合姫』を買うか、単行本2巻が出るまで関連する話題が出そうなところは回避するのが得策。森島明子のチャレンジを見た気がします。


妻になる人 藤原栄

 第五回百合姫コミック大賞瑠璃賞作品。オリジナリティあって完成度も高いキャラ作画。背景が童話的だったり魚眼的だったりパースが効いていたり平面投影的だったりとキャラ絵の完成度に対して違和感もあるけれど、コマ割りや構図、話の流れのわかりやすさ、テンポ、情感表現のどれをとってもレベル高っと思いました。百合専門誌の新人賞としてはアンハッピーなエピソードでちょっと不利だったのかも。この出来で瑠璃賞って百合姫コミック大賞、キビシイ。


himecafe

 リニューアル以降、二色刷りページでヒメレコと並んで掲載されていた読者コーナー、今回は巻末のモノクロページ。その理由は……本誌を読んでのお楽しみ。ゲストは倉田嘘。「百合男子」といい『百合姫』ではどつかれ役で漫才をする巡り合わせのようです。不憫……でも面白いからいっか。


百合男子 倉田嘘

 今回は百合オンリーの同人誌即売会ネタ。百合漫画にあるまじき男子率! 32ページのうち女子はわずか数コマ。なんという男祭り。しかもイケメンばっかり! でもこれ、間違いなく百合姫の中で一番尖っていて「百合ってなんだろう」という部分に正面からぶつかっている漫画だと思います。誌面では「ヒドイ扱い」の悪ノリ演出をされていますが、このヒドイ扱いも含めて百合漫画の男性読者の戯画化された自画像なわけで、そこに切り込めているのは勇気というものでしょう。八月の単行本が楽しみ。いずれ百合小説ネタの回もあるといいな。


ゆるゆりアフレコレポート ねこ太

 作者は百合姫コミック大賞から出た方。収録現場、すごく楽しそう……。


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『リカちゃん生まれます』小島康宏

リカちゃん生まれます
小島康宏
集英社
2009.4.24
★★★★☆

 タイトルや表紙で瞭然かもしれませんがリカちゃん本です。着せ替え人形のリカちゃん。初代リカちゃんを世に送り出した担当者が当時のことを振り返ります。バービーやタミーといったファッションドールが人気を得ていた時代、タカラの社長・佐藤安太はそれらのドール用のキャリングケースを作ることを決意します。結果、生まれたのはケースだけではなく、ケース(リカちゃんハウス)と組み合わされる人形――リカちゃんもでした、と始まる開発譚。プロジェクトの責任者であった著者ならではの苦労話がリカちゃんに対する愛情、おもちゃ作りへの真摯な姿勢とともに綴られます。年少の読者を意識したかのような文章もまた、幼いユーザたちに向けて長年モノ作りをしてきた人のものなのだな、と思わせられたのでした。
 自分のしてきた仕事に誇りを持っていることがよくわかる素敵な本です。リカちゃんに親しんできた層が読んでも夢を壊されることのない、開発者魂たっぷりの本。リカちゃんファンにオススメ。

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『量子もつれとは何か』古澤明

量子もつれとは何か
古澤明
講談社ブルーバックス
2011.2.22
★★★☆☆

 よくわからなかった。

 説明が下手とか、難し過ぎるとか、そういうことはないです。読み進めていきながらワンステップずつの説明でわからないということはありませんでした。ところが読み進めていっても一向に「わかった」という実感が得られませんでした。

 目次を引用します。

序章 量子力学とは
第1章 テクノロジーの進歩と量子化の必要性
第2章 振り子の量子か
第3章 光の量子化
第4章 レーザー光と量子ゆらぎ
第5章 量子エンタングルメント
第6章 量子光学を用いてEPRペアを生成するための準備
第7章 量子光学を用いてEPRペアを生成する
第8章 量子光学を用いた量子エンタングルメント検証実験
第9章 単一光子状態の生成
第10章 量子テレポーテーション
第11章 多量子間エンタングルメントと量子エラーコレクション実験

古澤明『量子もつれとは何か』もくじより

 なぜわからないのだろう。
 量子力学は根本にある「量子の位置と運動量は同時には定まらない」という不確定性原理が具体的なイメージに繋がらないからではないかと思うのです。数式も他の物理学で正しいとされていることと矛盾せず、実験をしてみても実証される。ただし、使われる数式が行列や微分方程式であったりするので式を見ても感覚的な理解に繋がらないし、数字を実際に入れて計算してみるのも困難。ゆえに数学部分は完全にすっとばされます。すっとばされるのに

|0〉A|0〉B+|1〉A|1〉B

なんて形で示されても|0A〉がどんな意味を持たされているのかが実感にならない。|0A〉は量子状態で演算の中身はテンソル演算でしょうし、この表記に引っかからずに消化するのはキビシイ気が。「これはエンタングル」「これは厳密にはエンタングルしていない」と示されても理解とはほど遠く、丸呑みするしかありません。これで「わかった!」が得られる人は理系の学者になった方がいい気がします。
 量子もつれの具体的なイメージはうまく掴めないまま、それでも存在確率の雲がどんな条件でどんな風に展開するのかは読んでいけば掴めますし、紹介される実験の説明もとても具体的でよくわかります。量子テレポーテーションが光におけるラジオの通信に相当するものであるという説明はわかったし、量子コンピュータに必要な量子におけるエラー訂正の仕組もわかりました。でも、やっぱり、不確定性原理がどんな場合にどのように働くのかは、ニュートン力学のような具体的なイメージとなってくれないのです。電波通信には電磁気の「波」というイメージがありましたが、量子もつれの状態にある量子の間に働いているのはいったい何なのでしょう? それは電磁波のように光速で伝わるものですか? 媒質は何ですか? 「場」のように距離の二乗に反比例しないのですか? こういう古典的なイメージと繋がらないのはなぜですか?

 結論としては「数式や演習抜きで理解しようなんて無理」となってしまうのでしょうが……。

 わかった!が得られないのは筆者の責任ではないと思いつつも、一点だけ。
 「別の著作を参照」をあちこちに散らすのはズルいです。「はじめに」において前著で門前払いをしてしまった、という反省が挙げられていましたが、第10章近辺で頻出する別著参照のポインタも同じ種類の門前払いではないでしょうか。
 著者の行っている研究の紹介にページを割くくらいなら、説明方法を見直した量子テレポーテーションの再説明に取り組んで欲しかったです。

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『ななめの音楽Ⅰ』川原由美子

ななめの音楽Ⅰ
川原由美子
朝日新聞出版眠れぬ夜の奇妙な話コミックス
2011.7.7
★★★★☆

 久しぶりの川原由美子だ〜。

 飛行機モノです。
 川原由美子というと『観用少女』シリーズ、あるいは昭和世代SFファンには『たったひとつの冴えたやり方』の表紙のイメージが強いかもしれません。少女漫画らしい絵柄、色彩。しんみりしたり静けさ感じることの多い読後感。ですが、今回は絵柄も雰囲気も変えてきました。表紙に“based on non existent novel written by Michiaki Sato”の文字があります。そう、佐藤道明とのコラボのようなのです。
 読みはじめるまでは「佐藤道明原作なのかな」と思っていましたが、一読して単なる「原作」ではない、と思ったのでした。コマ割り、少し飛躍のある説明の少ない話の進行、構図。川原由美子の作品であることは確かなのですが、佐藤道明っぽさもギュウヅメです。
 かつて、佐藤道明が荒巻義雄と組んだ『要塞』シリーズという架空戦記小説がありました。その中にさらに「イラストストーリー」という派生シリーズがあって佐藤道明の漫画&イラストがメインのものでした。そこで見た佐藤道明テイストと川原由美子の作風とが組み合わされたものが『ななめの音楽』のページの中にありました。

 なんだこれは。

 少女漫画家・川原由美子のファンはぎょっとするかもしれません。私の中の少女漫画ファンの側面もぽかーんとしていたように思います。ですがSFメカファン、佐藤道明ファンとしての私の側面は「うわぁ」と歓喜に転げ回っていました。最高!

 主人公は伊咲いさきこゆる。対置されるのは光子・グラーフィン・フォン・グリーゼ。学園内の日常シーンから始まり、エア・レースの世界へと誘ってくれます。黒く塗りつぶされた枠外。フルの横幅に縦を四分割したコマ割り。漫画演出では定番であるはずのマンプや集中線もなく、フキダシも角を丸くしただけの単なる四角。黒ベタの余白と横長のコマは……映画のスクリーンのよう。動きの演出を廃した画面からは静謐な雰囲気に満たされたヨーロッパ映画を連想しました。
 光子を追って日本を離れ、空の世界へと踏み込むこゆる。少しばかり現実離れした観のあるこゆるはファンタジーの担い手。“ななめの音楽”とは何か。レースの行方はどうなるのか。あちらこちらに覗く剣呑な伏線。八月に出る『ななめの音楽Ⅱ』が待ち遠しいばかりです。

★ ★ ★

 飛行機ネタの蛇足など。
 登場する機体はFw190D-11にHe299B、etc。D-11なんてあるの、と思ったら6機だけ試作されたとネットに記事がありました。D-9に与圧キャビンを装備したものだとか。ほえ〜。なんでTa152やTa153じゃないんだろう、と思ったけれどスピードレーサーには軽いD型系列の方が良い、という設定かな。He299Bは正体不明の機体。He219と似ているのだけれど機首と機尾が切り詰められて前輪式から尾輪式になっていたり、そのあおりでか双垂直尾翼が前進して接地しないよう傾いていたりと謎が多いです。尾翼周りのデザインはHe219よりHe162に近く、エンジンと主降着脚はBf110風カウリングではあるもののエアインテークが大きくてプロペラも三枚ではなく四枚羽根。操縦席はHe219風背中合わせの複座。
 “ななめの音楽”はどこで奏でるのかな。

 『ななめの音楽Ⅱ』の感想も書きました。

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『女の子×女の子コレクション2』ロクロイチ

女の子×女の子コレクション2
ロクロイチ
松文館シガレットコミックス
2011.6.28
★★★★☆

 ロクロイチのTL風百合漫画シリーズ三分冊の二巻目です。

 エロ有というかエロメインの短編集。
 困った量の宿題が出て、年上の幼馴染の双子姉妹に手伝ってもらおうとしたら対価はカラダでした、と導入部のあらすじだけ書くととてもロクでもない設定に見えますが、陰惨であったり犯罪チックになったりせずにほのぼのするのがこの種の漫画の良いところ。上記の「生贄ちゃんが行く!」シリーズが四作、独立した部活モノが一作の計五話。いずれも『女の子×女の子コレクション1』とはストーリーの繋がりはないようですが、各話の間に挿入されるカットに『1』のキャラがいたりします。

 『女の子×女の子コレクション1』が気に入った人はこちらも問題なく楽しめるはず。成年コミック指定ですので大人向け。さほどハードな描写ではありませんが、えっちシーン主体の話なので成年指定は妥当かと思います。

 三巻が楽しみ。

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『恐竜再生』ジャック・ホーナー

恐竜再生
著:ジャック・ホーナー、ジェームズ・ゴーマン
監修:真鍋真
訳:柴田裕之
日経ナショナルジオグラフィック社
2010.10.7
★★★★☆

 エボデボという言葉をご存知ですか。
 この本の序文で登場する言葉です。私は、なんか聞いたことあるなー、バイオテクノロジーかなんかじゃないっけ、くらいの知識で読みはじめました。エボデボの具体的な、詳しい解説はないまま話は恐竜発掘シーンの第1章から始まります。高名な古生物学者・ホーナーの携わってきた研究の歴史を追う感じです。ティラノサウルスの発掘、科学的な分析アプローチ、化石骨から見つかった血液らしきもの。前半のクライマックスは第3章「分子も化石になる」です。化石骨をカルシウムを取り除く薬品で処理すると意外なものが! これはアマチュアでも試せるのかな? ぜひ試してみたい。
 そして後半は前半を土台にしたエボデボの話。タイトルの通りの恐竜再生へのアプローチで「ニワトリから恐竜を作ろう!」という夢のある話に大まじめに取り組んでいます。
 序文の説明やそれ以前からの先入観ではエボデボを遺伝子工学の一種と思っていたのですが、この本で紹介された実験手段はもっと荒っぽいものでした。発生中の胚を切った貼ったし化学物質に晒すような物理・化学的手段による発生のコントロールが実践手段だとか。おおお。面白い! この発想は古くから馴染みがあります。『ドクターモローの島』をはじめとすると大昔のマッドサイエンティストがやっていたこと。あるいは1997年刊の『生物は重力が進化させた』(西原克成)の中で著者が軟骨魚であるサメの中に硬骨組織を生じさせたりするような実験にとても近い。『恐竜再生』の中で紹介された“エボデボ”は初期発生の段階に集中して操作しよう、というだけで精緻なモデル構築よりも実験でなんとかしてしまえ!という発想にマッドサイエンティストの血を感じたのでした。

 この本を読んで“エボデボ”なるものに興味を持ったのですが、進化発生生物学エボデボを専門に解説した本というのがあるのかないのかよくわからない状態で、Wikipediaを見ても独立した項目はなく「発生生物学」という項の一部で触れられているのみの上に記述も曖昧です。(2011.7.7現在)
 「なんとなく」程度の予感ですが、遺伝子工学の知識をベースにした“荒っぽい”方法は一時的で、いずれホメオボックスのような制御遺伝子群の機序解明とともに再び遺伝子工学に吸収されてしまうのがエボデボなのではないか、なんて思えたのでした。

 恐竜再生の、明日はどっちだ!

 ニワトリの胚操作でミクロラプトルみたいなものを作り出せたら、それはそれで楽しい気はします。“チキノサウルス”かぁ。原著は2009年刊ですが“チキノサウルス”は今どうなっているのかな。

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『だいすきっ』月石

だいすきっ
月石
少年画報社ヤングコミック
2011.6.24
★★★★☆

 六月末はエロ有の百合物が複数出てほくほくでした。この『だいすきっ』と同著者の『こいごころ』、ロクロイチの『女の子×女の子コレクション2』、むっちりむうにいの『純潔ロマンス』と四つも。

 性表現は上に挙げたタイトルはどれも同じくらいでした。唯一ロクロイチのだけが成年指定ですが、成年コミック——いわゆるエロマンガに比べると大人しいもの。とはいえ、人前で読むのがはばかられる程度にはベッドシーンも濃く頻度も高い(毎話必ず絡みがある)ので、15禁くらいのつもりで読むのが良いような気はします。権力で表現規制をすることには欠片も賛成できませんが、ヤングコミックやチャンピオンREDいちご、コミックすもも、あるいはTL誌の多くや百合姫のGirls Loveのような実質的なポルノを非ポルノ枠で売ろうとするのはどうかと思うのです。
 おっと、脱線。

 のっぽの桜と小柄なひかる。とりあえず色々すっ飛ばしていちゃエロシーンから始まります。絵柄は可愛いし、エロ描写も引いてしまうようなエグさや下品さはないしでクォリティ高いです。収録作品には同人作品も含まれているそうでストーリーが重複しかかっている部分もあるのですが、各話の独立性がそれなりに高いので違和感はないかな。色んなシチュエーションで主役の二人をいちゃつかせてみました、というのが基本のもよう。一応、互いに「好き」を表明しあうことがテーマとはなっているのですが、毎話いちゃついているので言葉のインパクトは薄くなっちゃってるかな。
 明るく楽しい百合えっち漫画。この作者のエロなしのお話も読んでみたいと思ったのでした。

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『14歳の恋』水谷フーカ

14歳の恋
水谷フーカ
白泉社
2011.6.30
★★★★☆

 水谷フーカの新刊です。『楽園』に掲載されていた恋愛モノで、一話目は雑誌で読んで傾向が掴めていたし、前作『GAME OVER』が良い感触であったので楽しみにしていたもの。百合ではなくて男女カプのお話。

 ほのぼのとした少しおとぎ話的な空気。ミドルティーンの頑さ。プライド。純情。そんなものが描かれます。青春ってキレイゴトばかりじゃないぞ、という人にはちょっと耐えられないだろうこのほのぼの感。

 14歳。
 性に対する好奇心で頭の中がいっぱいの子もいれば、プライドの高さ故に性的なものへの感心を表に出せない子もいる。様々だけれど水谷フーカのお話では生臭さを良い加減に削ぎ落としていて現代のメルヘンのように仕上がっています。だからこそ生きてくる、何気なく配された色気。ん。いや、14歳にとっては、特に男子にとっては“何気ない”どころではなく作用しそうな種類のフェロモン。でも14歳の女子にはまだ影響力がピンと来ない。そのギャップがドキドキさせてくれる。
 一方で“女”の武器を自覚している大人の女性も登場して14歳組との違いを際立たせていたりも。ほのぼのとした絵柄で、ハダカもないけど、14歳モードに引き戻されてドキドキできるシーンがいくつもありました。
 たぶん、現役の14歳にはちょっと物足りなくて。
 青春ってなんだ? 振り返るってことさ。みたいなフレーズがしっくり来てしまう大人たちに楽しい14歳像なのだと思います。

 と感想を書いたけれど、ここで紹介したよりもほのぼの、のんびり、コミカルなタッチに思えるんじゃないかな。

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『アナザー人類興亡史』金子隆一

アナザー人類興亡史 〜人間になれずに消滅した“傍系人類”の系譜〜
金子隆一
技術評論社知りたい!サイエンス
2011.4.21
★★★★☆

 猿が苦手です。人に近いケモノだからでしょうか。たぶん同じ理由で、ヒトに近いけどヒトじゃない原人や猿人に苦手意識がありました。

 ヒトの起源絡みの話題では“イーダ”が記憶に新しいと思います。今回の『アナザー人類興亡史』にも“イーダ”は取り上げられますが、四千数百万年前と時代を遡りすぎたお猿の時代の話である上にどうやら傍系らしいということで扱いは小さかったです。
 タイトル通りヒトの進化史、あるいはヒト属系統仮説の変遷を概観した内容です。新たな化石の発見があるたびに定説が覆り続けているホットな領域だけに、この本でも複数の系統仮説を並べて紹介していてちょっとばかりややこしいことになっています。その混乱を象徴するのが口絵の三つ折りカラーページ。ヒトの系統が樹状図で示されるのですが、一般的な樹状図と違い枝分かれした先で再度合流して「?」マークが打たれています。あちこちに。
「こりゃ、仮説も相当混乱してるな」
とニヤニヤしながら読み進めたのですが、最後に近づくにつれ樹状図が混乱している具体的な理由らしきものが示されていき「おおっ」となりました。
 著者の金子隆一は恐竜本でも大胆な仮説をプッシュしてきた人なので今回この本で紹介された仮説もまだ定説になっていない大胆なものかもしれません。強い印象を受けたことだけは確かです。
 口絵の樹状図をはじめ図表・写真が多用されていて、こなれた文章と合わせてとてもわかりやすく説得力のある本でした。

 面白かったです。けど、やっぱり今のヒトに限りなく近いヒト属の姿が苦手なのは変わりませんでした。

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『化石から生命の謎を解く』化石研究会

化石から生命の謎を解く 〜恐竜から分子まで〜
化石研究会編
朝日新聞出版
2011.4.25
★★★★☆

 「科学的アプローチ」をテーマに章ごとに異なる著者が執筆した化石分析の最先端の話題がぎっしり詰まった本です。化石研究者というとハンマー片手に荒れ地をさまよう「化石ハンター」のイメージが一番に立ち、その化石の見た目から元の状態を想像して〜というような研究が想像されるのですが、この本を著した化石研究会の面々は化石研究に現代科学的なアプローチを持ち込もう、という研究者たちなのだとか。「CSI化石捜査班」?
 紹介されている研究もアプローチの方向もとても多様です。ケンタッキーフライドチキンを食べて骨を観察しよう!という話から、足跡化石、微化石、原生メタセコイア発見までの過程、真珠養殖etcとバリエーション豊富。微化石の堆積状況から古地理を解き明かしてマンモスやナウマンゾウの移動ルートを推測、なんてもはや微化石の研究なのか化石ゾウの研究なのかわからなくなってきますし、真珠の研究などは生物の鉱物化という点で化石とは繋がっていてもその視線の先は現代の真珠養殖技術の革新に向かっています。メタセコイアやデスモスチルス研究の紹介はどちらかというと研究史を振り返ったもの。大勢の著者が原稿を持ち寄っているので悪く言えば「まとまりがない」のですが、現代科学の手法をあちこちから持ち寄るという総合科学として古生物学の姿も見えてきます。現代の古生物研究はまさにCSI並に広範な知識の集大成へと向かっているのだなー、というのが実感できる本でした。
 難点を挙げるとすれば文章かな。研究者たちの書いた原稿ということもあって基本的に「カタい」です。その固さを和らげようと部分的にこなれた/くだけた表現を投入する工夫がされているのですが、基本的な論調の固さまでは抜けなくてちぐはぐになっている章もちらほら。でも、そんな取っ付きにくさを補って余るくらい楽しいサイエンスのエッセンスがぎゅう詰めになっていたのでした。

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