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『恐竜再生』ジャック・ホーナー

恐竜再生
著:ジャック・ホーナー、ジェームズ・ゴーマン
監修:真鍋真
訳:柴田裕之
日経ナショナルジオグラフィック社
2010.10.7
★★★★☆

 エボデボという言葉をご存知ですか。
 この本の序文で登場する言葉です。私は、なんか聞いたことあるなー、バイオテクノロジーかなんかじゃないっけ、くらいの知識で読みはじめました。エボデボの具体的な、詳しい解説はないまま話は恐竜発掘シーンの第1章から始まります。高名な古生物学者・ホーナーの携わってきた研究の歴史を追う感じです。ティラノサウルスの発掘、科学的な分析アプローチ、化石骨から見つかった血液らしきもの。前半のクライマックスは第3章「分子も化石になる」です。化石骨をカルシウムを取り除く薬品で処理すると意外なものが! これはアマチュアでも試せるのかな? ぜひ試してみたい。
 そして後半は前半を土台にしたエボデボの話。タイトルの通りの恐竜再生へのアプローチで「ニワトリから恐竜を作ろう!」という夢のある話に大まじめに取り組んでいます。
 序文の説明やそれ以前からの先入観ではエボデボを遺伝子工学の一種と思っていたのですが、この本で紹介された実験手段はもっと荒っぽいものでした。発生中の胚を切った貼ったし化学物質に晒すような物理・化学的手段による発生のコントロールが実践手段だとか。おおお。面白い! この発想は古くから馴染みがあります。『ドクターモローの島』をはじめとすると大昔のマッドサイエンティストがやっていたこと。あるいは1997年刊の『生物は重力が進化させた』(西原克成)の中で著者が軟骨魚であるサメの中に硬骨組織を生じさせたりするような実験にとても近い。『恐竜再生』の中で紹介された“エボデボ”は初期発生の段階に集中して操作しよう、というだけで精緻なモデル構築よりも実験でなんとかしてしまえ!という発想にマッドサイエンティストの血を感じたのでした。

 この本を読んで“エボデボ”なるものに興味を持ったのですが、進化発生生物学エボデボを専門に解説した本というのがあるのかないのかよくわからない状態で、Wikipediaを見ても独立した項目はなく「発生生物学」という項の一部で触れられているのみの上に記述も曖昧です。(2011.7.7現在)
 「なんとなく」程度の予感ですが、遺伝子工学の知識をベースにした“荒っぽい”方法は一時的で、いずれホメオボックスのような制御遺伝子群の機序解明とともに再び遺伝子工学に吸収されてしまうのがエボデボなのではないか、なんて思えたのでした。

 恐竜再生の、明日はどっちだ!

 ニワトリの胚操作でミクロラプトルみたいなものを作り出せたら、それはそれで楽しい気はします。“チキノサウルス”かぁ。原著は2009年刊ですが“チキノサウルス”は今どうなっているのかな。

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