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『アナザー人類興亡史』金子隆一

アナザー人類興亡史 〜人間になれずに消滅した“傍系人類”の系譜〜
金子隆一
技術評論社知りたい!サイエンス
2011.4.21
★★★★☆

 猿が苦手です。人に近いケモノだからでしょうか。たぶん同じ理由で、ヒトに近いけどヒトじゃない原人や猿人に苦手意識がありました。

 ヒトの起源絡みの話題では“イーダ”が記憶に新しいと思います。今回の『アナザー人類興亡史』にも“イーダ”は取り上げられますが、四千数百万年前と時代を遡りすぎたお猿の時代の話である上にどうやら傍系らしいということで扱いは小さかったです。
 タイトル通りヒトの進化史、あるいはヒト属系統仮説の変遷を概観した内容です。新たな化石の発見があるたびに定説が覆り続けているホットな領域だけに、この本でも複数の系統仮説を並べて紹介していてちょっとばかりややこしいことになっています。その混乱を象徴するのが口絵の三つ折りカラーページ。ヒトの系統が樹状図で示されるのですが、一般的な樹状図と違い枝分かれした先で再度合流して「?」マークが打たれています。あちこちに。
「こりゃ、仮説も相当混乱してるな」
とニヤニヤしながら読み進めたのですが、最後に近づくにつれ樹状図が混乱している具体的な理由らしきものが示されていき「おおっ」となりました。
 著者の金子隆一は恐竜本でも大胆な仮説をプッシュしてきた人なので今回この本で紹介された仮説もまだ定説になっていない大胆なものかもしれません。強い印象を受けたことだけは確かです。
 口絵の樹状図をはじめ図表・写真が多用されていて、こなれた文章と合わせてとてもわかりやすく説得力のある本でした。

 面白かったです。けど、やっぱり今のヒトに限りなく近いヒト属の姿が苦手なのは変わりませんでした。

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