コミPo!と記号と徒然
自作アイテムを多数投入して、今のコミPo!の制約のひとつ「素材不足」を解消を試みた「シルバーハライド」。
「あれ? 自作アイテム30点ってこんなもん?」と思ったのではないでしょうか。
コミPo!漫画の作り手としてはキャラもポーズも背景も小物も、豊富であればあるほど嬉しく、カスタマイズの自由度が高ければ高いほど良い。——はずですが、最高の自由度=自作、を試みてもインパクトは出なかったように思います。自作アイテムの出来、物量不足、演出、ストーリーと理由は多々あるかもしれません。
実は以前から漫画を面白くするためのツボはコミPo!ユーザの間でよく挙がる要望とはあまり関係がないんじゃないか、と思っていたのですが、自前で労力を注ぎ込んで実感しました。
素材不足はあまり重要じゃない、と。
たぶん、キャラバリエーションの不足やカスタマイズ性の低さも。
★ ★ ★
コミPo!の実質的な作業を追えば見えてくることもあります。
フィギュアを
- ドラッグ&ドロップし
- ポーズを取らせ
- フキダシと
漫符 を添える
こうして作られるのがコミPo!漫画です。とても明快な“記号”です。コミPo!のレイヤーリストを見ればコミPo!漫画が記号の塊であることに納得しないわけにはいかないはず。
手描きの漫画であれば“絵”の部分だけを取り出しても表現・創作を感じることもできますが、コミPo!で表示されるキャラクターやアイテムはどれだけよくできていても、カスタマイズを施しても記号の範囲を出られないと思うのです。
だって、コピペだもん。
コミPo!漫画の画面に登場するのは、漫画制作者が作ったわけではない(とコミPo!を知る読者に認識される)複製品です。美しい/可愛い/カッコイイキャラクターやアイテムはコミPo!の製作陣、もしくはユーザアイテム制作者の功績です。読者はコミPo!による漫画の実体が右に貼った灰色シルエットの漫画と変わらないものだと直感してしまうはず。
ネガティブですか? 某巨大掲示板のスレから拝借した意見のツギハギでもあります。
ですが、私は記号として見たコミPo!にこそ可能性を感じます。3Dアイテムの製作に力を注ぎ、自作アイテム乱発のデテール漫画をせっせこ作っている私の主張としてはおかしなことかもしれません。ですが……
ストーリーと演出だけで勝負できるのがコミPo!だと思うのです。
★ ★ ★
『「コミPo!」製作委員会 田中圭一氏が語る「作り手であること」の意味』という記事を読みました。内容についてはこれまで田中圭一があちこちで語ってきたことと変わっていないのですが、よくまとまっていてコミPo!の未来が見えた気がします。
記事の中で
まんが表現は体系的に構築すべきであるとは思っています。
から始まる段落にぐっと来ました。これをコミPo!に実装するとなると、キャラメイク機能を基点にしたシナリオプロセッサ的なものが思い浮かびます。ハリウッドシナリオ術的な漫画構築ツール! それってパーソナル版の大塚英志漫画塾みたいなものじゃないですか。
欲・し・い!
某巨大掲示板コミPo!スレやTwitterでユーザから挙がるのは作画の表現力充実やカスタマイズ性強化が中心なようです。けれど記号操作ツールであるコミPo!で作画要素を強化しても、読者の作者への評価になりづらい——のは上で述べた通り。
ならば記号として勝負のできるストーリー面と魅せ方を強化すべき、というのが田中圭一の発想ではないかと想像します。
構成作業のサポートツール。
小説やシナリオの世界ではアウトラインプロセッサ的なものも構成作業に使われたりもしますが、その実質は理想とはほど遠い単なるツリー構造化——目次作成ツール同然です。もし、田中圭一の示すコミPo!像が実現するならばサブカルチャーのターニングポイントとなるでしょう。
田中圭一の「手描きを置き換えるツールではない」という言葉が深く印象に残った記事でした。
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