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ひらり、GLコミック大賞受賞者一覧

ひらり、GLコミック大賞受賞者

 新書館の百合漫画誌『ひらり、』で開催されている新人賞「ひらり、GLコミック大賞」の結果を集計したものです。






ひらり、GLコミック大賞一覧
作者 タイトル 掲載号
第1回 グランプリ 吉田丸よしだまるゆう かわいいあのこ vol.4
第1回 奨励賞 更夜こうやしき こんなの全然ぜんぜん本気ほんきじゃない ——
第2回 期待賞 一席 フジコ 少女林檎しょうじょりんご ——
第2回 期待賞 二席 安堂あんどうまり りかちゃんの計画けいかく ——
第3回 奨励賞 麻友まゆ紗央里さおり コピーフレンド vol.7
第5回 準グランプリ あくた文絵ふみえ 妹ができました。 vol.9
第5回 期待賞 佐々山ささやまあき ホットケーキの火曜日 vol.14
第7回 期待賞 きよたとも こいする☆ぽっちゃり vol.11
第9回 期待賞 なかざと 逆転ぎゃくてんディスティニー ——
第10回
期待賞 道野みちのほとり ガラ子ちゃんとスマ子ちゃん vol.14

賞の種類一覧





















賞の種類
グランプリ 賞金20万円+誌上掲載
準グランプリ 賞金10万円+誌上掲載
奨励賞 賞金3万円
期待賞 賞金1万円


更新履歴

2014.8.1 第10回の結果を追加
2014.3.31 第9回の結果を追加
2013.8.1 第7回の結果を追加
2012.12.2 第5回の結果を追加
2012.1.1 「もう一歩」のデータを削除
2011.12.29 一覧作成

関連記事

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『ひらり、』vol.6

ひらり、 vol.6
新書館
2011.12.23
★★★★☆

 今号も良かった!


表紙 釣巻和

 カラーのカバー絵を見ただけだと気づかなかったのですが、釣巻和は『つぽみ』Vol.1の「鳩居的懐古録」の人だっ。「鳩居〜」すごく良かったのに、アンケも推しで出したのに続編来なくて寂しかった…。『ひらり、』でも漫画載せて欲しいな。webアンケで推しとこっと。油絵具の香りが染み付いていそうな二人です。


扉絵 水上カオリ

 『ひらり、』には合うと思っていました水上カオリ。共用マフラーにシミちょろ。表紙もぜひ!と思ったけどコバルトと間違えるかもしれない。


女の子の設計図 紺野キタ

 これは読切りなのかな? 続きがあるなら読みたい。ぜひ読みたい。『ひみつの階段』とも『百合姉妹』に掲載された作品とも『cotton』ともちょっと違う紺野キタ。予告の段階では尖った“少女性”みたいな方向で来るのかなと予想していたのですが『つづきはまた明日』で備わった日常の雰囲気とブロらしさみたいなものが同居している印象でした。こんな見え見えのツボを押されたって〜と斜に構えようとしてコタツの中でジタバタしてしまいました。ヤラレタ。次号予告にも紺野キタの名前があって楽しみ。


ひらがな線、あいう駅より 雨隠ギド

 ひらがな線とかあいう駅とかネーミングからほのぼの。プリン頭でヤンキーっぽい後輩と打算的な主人公との意外にハートフルなお話。


口先女と鉄壁の処女 四ツ原フリコ

 四ツ原フリコの百合漫画は久しぶりに読む気がする。あ〜、いるいる。本人大まじめなのに何言っても本気にしてもらえない人。小雪、あわれなり。


白いことが多いドレス 仙石寛子

 おかーさん、ドレス攻撃は卑怯です。強力です。そして……ヒドイ!と笑ってしまいました。賞味期限気にしない人の冷蔵庫には期限切れのモノが他にもあると思う。


私の嫌いなおともだち 雁須磨子

 続編というわけではなさそうだけれどvol.4の話とシリーズの模様。ぶきっちょタイプが二人のこの緊張感。こういう空気が表現できるのか。これは誰かに勧めたい。この面白さはどんな人に勧めれば良いのかちょっと悩みます。百合漫画というジャンルではかなり異質。


貴女のためなら 佐藤沙緒理

 異質という点ではこの話も『ひらり、』では異質かも。バイオレンスっぽいギャグでノリノリ。茶巾寿司とか懐かし文化! ジャイアントスイングかよっ! みたいな。最後の選択肢は①〜③に加えて④として「香りを楽しむ」をオススメしたい。



COROLLA2 スカーレット・ベリ子

 演劇ネタ。vol.3掲載作と同一舞台設定のようです。この作者のお話は演劇のハレ感と相性いいな。


はじまりのことば ささだあすか

 『ひらり、』らしい掲載作は?と訊かれたら一番にイメージするのはこの作者。今回もおっとりほのぼの。独り上手っ子の主人公がなぜかいきなり同級生から「好き」と言われて……。


under one roof/parlor 藤生

 今回はミゼットⅡという車をネタに。ちょっと変わったちっちゃな車なのですが、なるほど!みたいな。parlorの方は……ぶは。おなか痛い。


witch meets knight 犬丸

 今回は四コマ。メガネを題材にガールズトークというか学生のにぎやかな雰囲気。


スニーカーと加瀬さん 高嶋ひろみ

 加瀬さんの私服がキュート過ぎるぅ。もうそれだけで今回は満足でした。太腿見つめて鼻の下が伸びてる加瀬さん最高です。


月の下の雅ちゃん 平尾アウリ

 不思議だ。箱庭コスモスのふし研に研究して欲しいくらい不思議ちゃんな作風だ。


さろめりっく 袴田めら

 表現したいテーマがあって、面白くするための工夫もされていて、“袴田めら”だけの絵もあって。あともう一押しで『最後の制服』に代わる新代表作が出てきそう。がんばれ、袴田めら。


ハルノート 大沢あまね

 香水ネタで来ました。下着屋の話でも思ったのですが、この作者、蘊蓄的な要素を話に絡めるのが生きてる気がします。モノローグも効いてる。……う〜ん。文章で良いポイントを挙げてみても大沢あまねの漫画から受ける印象を伝えられてないような。


箱庭コスモス 桑田乃梨子

 百合漫画誌の掲載で双子なのに、ちっとも百合漫画らしい空気にならないこの双子。今回は双子に焦点を当てた回。


蜜よりも甘い 三嶋くるみ

 わわ。こ、これは後編というか続編来るよね? きっと。


ラスト10ミリ 茉崎ミユキ

 バスで偶然乗り合わせた人のリップクリームの忘れ物。あ〜、これは惚れる。惚れないわけないシチュ。


オルガンのお姉さん 前田とも

 わ〜い、vol.2以来の前田ともだ〜。扉絵のコントラスト素敵だ〜。デジタルイラストの技術が普及してパースの通った絵や写実的な絵も漫画では珍しくなくなったけれど、美術としての写真との近さを感じさせる背景を描く人はあまりいなくて。キャラも含めて好きな“絵”。話も静かめで少し緊張を含んだ空気がいい感じ。


 vol.5は352ページで今回は368ページ。
 小説作品がなくなったのは残念。漫画といっしょに載せてしまうとアンケで圧されちゃうのかな。『コバルト』みたいな比率で絵と小説が載った百合小説誌——なんて無理なのでしょうか。
 第3回★ひらり、GLコミック大賞の結果も発表されていました。(受賞者を一覧にまとめました

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『瞑想する脳科学』永沢哲

Comipodiary_20111224瞑想する脳科学
永沢哲
講談社選書メチエ
2011.5.12
★★★★☆

 脳科学とBMIの本を探していて手に取りました。ぱらぱらと眺めた限りではとっつきの悪い、文系向けの香りのする哲学の本のように見えました。欲しかったものとは違いそうだとわかって躊躇たものの読んでみました。当たり外れは読んでみないとわからないので。

 読んで良かった。

 脳科学という文字がタイトルに含まれますが、著者は瞑想の側の人のようです。それでも脳科学の知識の消化はばっちりで、チベット仏教に関する知識と脳科学やBMI——ブレイン・マシン・インターフェイスに関する知識とを非常に冷静な視点から結びつけてみせてくれました。説明は文系らしい繊細、かつ明晰な言葉で綴られ、最初にチラ見したときの「何が書いてあるのかチンプンカンプンな本かも」という予感は外れました。冒頭から追いかけていくと違和感なくチベット仏教や脳科学の言葉に馴染める優れた本です。論理の展開もわかりやすく、文献の示し方も要点を得ていて説得力があります。チベット仏教や瞑想には詳しくなかったのですが、最新の科学と照らし合わせて説明される禅の世界の先進性にくらくらしました。
 仏教哲学が科学の力を得て身近に、現実的になるといいな。
 また、この本では“慈悲の瞑想”をキーにして荒廃が進むであろうこの世界を救済する方法を提案します。示されるのは予想される未来図に対してちょっと能天気じゃない?とも思える考え方なのですが、ベーシックインカムのような考え方が注目されたこの数年を考えるとあながち頓狂でもないようにも思えました。

 ただし。
 この本は瞑想で得られる境地について無批判です。瞑想から直感的に得られるチベット仏教の宇宙観は現代宇宙論との共通点も多く見て取れるものの、その宇宙観が間違いでないと証す方法もないはず。瞑想で得られるものはそういう見方をするものではない、というのも想像はつきますが科学の視点でメスを入れるならば避けては通れない問題に思えます。また瞑想による超人的なエピソードの紹介にも疑問を感じます。寒中で凍え死なないトゥムモの瞑想は「すごい」ですし、遺体現象の進行が異なるゾクチェンも「何が起きているのだろう」とは思いますがそれらは物理を逸脱した奇跡ではなく、象徴的に扱うことには違和感を覚えます。

 そうそう。この本ではBMI関連ではレイ・カーツワイルの著作、世界の展望についてはジャック・アタリの著作からの多数の引用をしていますが、これら元ネタとなっている本もとても面白いものばかり。巻末の参考文献リストから手繰ってみるのも楽しいと思います。


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『つぼみ』Vol.15

つぼみ vol.15
芳文社
2011.12.12
★★★★☆

 一週間遅れだけどvol.15の感想です。


表紙 玄鉄絢

 「星川銀座四丁目」との連動表紙、かと思ったら体格差があれ? 裏表紙見たら金髪の子のが頭ひとつ大きくて年齢差逆転設定の星川銀座? 解説求む〜。


扉絵 林家志弦

 玄鉄絢、林家志弦、袴田めら、吉富昭仁と今号お休みの森永みるくまで揃うと『百合姫』の同窓会のよう。林家志弦は『はやて×ブレード』『楽園 Le Paradis』でも絶好調。カラー扉絵から一ページめくったところのオチが素敵です。


星川銀座四丁目 玄鉄絢

 今回は番外編6ページ。風邪ひきの那珂川先生と乙女のショートエピソード。ほんとにもう先生はダメな大人です。乙女ちゃん甘やかし過ぎ。


WALK WIT ME 宇河弘樹

 前編よりもさらに重い設定が明らかになった後編。舞台は太平洋戦争直後のアメリカであったようです。最後のシーンで頭の中にローリングストーンズが流れた気がしました。マザー・ロード。


prism 東山翔

 作中は真夏です。いいなぁ、夏イベント。小さな波乱もあったけど、幸せな夏の記録。


少女サテライト はみ

 星座擬人化かな?という感じの超越者的少女たちによるミニストーリー16ページ。主に同人で活躍している作者さんの模様。


くらいもり、しろいみち 由多ちゆ

 明確な起伏のあるストーリーはなく詩のように綴られてきたお話も今回で最終回。これは評価が分かれそう。抜群に面白いという類じゃないけれどどこか心に引っかかる。しょうに共感できる要素を持った人のためのお話だと思います。


神さまばかり恋をする 一花はな

 ぐぐっても作者情報が見つからず。でも、絵、こなれてるなー。縁結びの神様だという少女と小さな仲違いをした少女二人のお話。プラス番外篇。


総合タワーリシチ あらた伊里

 ずっと高いテンションが維持されていて少年漫画みたいだ、などと思ううちに負けず嫌いの主人公と悠は微妙に良い感じに。


トラにツバサ モロやん

 組み敷いたシーン、虎嶋さんが恐怖を感じそうなシチュに思えてしまった。次回はカメラ話に進展しないかな、などと写真好き的に期待してみたり。


エデンの東戸塚 袴田めら

 三回目にもなって思うのですが、このタイトルはなんなんだー。二話掲載。前回なんで漫研だったんだろうと思ったのですが、そういう展開というか設定だったのか、でした。


むすんでひらいて イコール

 丸い、丸いよ!


恋結びリミット やとさきはる

 引っ込み思案の子と図書室のユーレイみたいな子と。予告編っぽい雰囲気でした。


わんらぶ 杉浦次郎

 間欠的に連載してきた「わんらぶ」も最終回。見事にわんこだったけどヒトのお話になった。いい感じにまとまったと思う!


しまいずむ 吉富昭仁

 今回もまさかの新キャラ。だんだんホラー漫画度もアップしてきているような。『つぼみ』での吉富昭仁は徹底して変化球で先が読めない〜。『百合姫』では思い切り正統派の百合していたのに。このギャップ。


 次号予告では表紙は鳴子ハナハル。以前のハナハル表紙はすごく評判よかったですね。次回も期待。一花ハナの名があるのは今回の神さま話の続きかな? そしてコダマナオコの名前が。わーい。二輪モノの「GIRLS RIDE」は予告にないけど次号掲載あるといいなぁ。
 そしてwebコミック開始のお知らせ。21日公開だそうです。何を載せるんだろう。

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『魔女系 〜タカハシマコ短編集〜』タカハシマコ


タカハシマコ
双葉社アクションコミックス・コミックハイ
2011.12.12
★★★★☆

 タカハシマコの新刊です。『コミックハイ!』と『COMICすもも』に掲載された短編九つをまとめたもの。

 掲載誌が男性向けであったからでしょうか。「魔女系」シリーズでは百合モノや少女漫画で見るタカハシマコよりもノリが軽くてパロディ要素があったり、旧『COMIC HIGH!』に掲載された「エーベル851」では「あれ?」と思うような表現があったりで他の作品群と少し印象が違います。『エオマイア』『ニコ』も同じ双葉社ではありますがこの二つとも違う感じ。タカハシマコらしい内容には違いないんだけど、こういうタカハシマコもあるのか、みたいな。掲載時期が比較的バラけていることもあって各話ごとの印象もバラけているような気もします。絵柄はよく見れば「あ〜、(ニコ)の頃に近いかも」「あ、最近の絵」と思えなくもないものの絵自体はあまり変わってないかも。

 装丁は『乙女ケーキ』みたいな非光沢の紙が合ったんじゃないかなーなんて少しだけ思いました。

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『宇宙ヨットで太陽系を旅しよう』森治

宇宙ヨットで太陽系を旅しよう
森治
岩波ジュニア新書
2011.10.21
★★★★☆

 すごいぞ、イカロス君。

 ソーラー電力セイル実証機IKAROSのプロジェクトリーダーが書いた、IKAROSの解説本です。岩波ジュニア新書の読者をターゲットにソーラーセイル宇宙機計画のスタートから成功までを語ります。

 面白い。

 すでにネットでIKAROSが完璧な、予期以上の成果を上げ続けているのを知っていたこともあって開発途上の失敗談や懸念が描かれても安心して先を読むことができました。順調過ぎるくらい順調だったIKAROSは本当に良かったな……と思えます。「オモリの刑」なんてことになったらプロジェクトに関わった人々は立ち直れないようなショックを受けたことでしょう。成功したからこそ、過去の杞憂を楽しめる気持ちの良い本でした。

 木星系探査の前哨となったIKAROS。今も後期運用の真っ最中で、もう間もなく姿勢制御用の推進材が尽きてしまうはず。一年半に渡ってワクワクする話題を提供し続けてくれたイカロス君。液晶デバイスによる姿勢制御で長期運用が継続すると面白いのになぁ。
 この秋にはIKAROSのガンマ線バースト偏光観測のデータによってガンマ線バースト発生のメカニズムがシンクロトロンであることが明らかになったと発表もありました。ダストカウンターによる内軌道のダスト分布などもデータを蓄積できたはず。世界初をいくつも達成したのがあかつきのオマケとして大急ぎで開発されたソーラーセイル実証機というのも面白い話です。

 この本では後半にIKAROSのような「小型計画」への危惧が強く述べられていました。大きなプロジェクトの前に小さなプロジェクトをやって実現可能性を実証しよう、という方式への苦言です。本来ならば事前の試験的計画を山のようにやって、その中から見込みのある技術を拾い上げていく——というのが小型計画の意義だと思うのですが、日本のように少ない予算で行われる宇宙開発では小型計画はその後に続くはずの大型計画の予行演習でしかなくなっていて、しかも、その予行演習が失敗すると大型計画も御破算になるという仕組のようです。軌道上でエンジンのみ、通信機のみ、セイルのみと要素技術の実証実験をするのが“小型計画”に当たるはずなのですが、JAXAでは安い実用探査機/衛星で試験も兼ねて……となっていることが歪みを生んでいるように思えました。あかつきのセラミックスラスタにしても軌道上で試験が行えていれば防げた可能性が高いはず。
 なるほど、小型計画は技術者としてはやりたくないよな、と共感しました。おかしいのは小型計画が失敗したらあとに続く大型計画がぽしゃる部分ですね。小型計画で出たトラブルを後続の計画に生かせるような体制が必要なのでしょうが、JAXA内部の足の引っ張り合い材料にされちゃっているのかな。

 防衛費で運営されてしかるべき情報収集衛星に年間500億円を分捕られ、はやぶさの成功をもってしてもはやぶさ2の予算が危ぶまれる日本の宇宙開発。木星系探査のソーラー電力セイル計画は今のところまだ形も見えてきていない段階です。いったいどうなるんだろう……。

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『白百合 Girls Love Paradise』

『白百合 Girls Love Paradise』
オークス
2011.12.9
★★★☆☆

 『紅百合』に続く成年指定の百合アンソロジーコミックシリーズ第二弾。
 の数は今回も三つですが、前回の限りなく二つに近い三つと違って四つに近いです。好印象でした。

 今回もほとんど消えてない薄消しの性器描写がありましたし、断面図もありました。汁ダクや噴水的な表現は成年漫画としてはお約束なのかもしれませんが、エロスよりも笑いを呼んでしまった気も。

 今回のお気に入りは北尾タキとりーるーの二人。北尾タキは描写面ではとても大人しかったのですがエロスを感じました。りーるーはデフォルメ強めながら確かなデッサンで人体をぐりんぐりんの視点移動で見せるダイナミックな描写の筆力と感情表現の豊かなキャラが魅力。この二人がまた描くなら読みたいな。

 前回の『紅百合』に比べて明確なレベルアップを感じます。今回、前回と同じような印象であったらもうこのシリーズは買うのをやめようと思っていましたが、これなら次も期待できるかも。次回『桃百合』は三月発売予定だそうです。

☆ ☆ ☆

 今回の『白百合』は好印象ではありますが品質では『百合姫Wildrose』シリーズ『Girls Love』シリーズに分がありますし、ロクロイチの『女の子×女の子コレクション』シリーズも絵もお話もしっかりしていて読み応えがあると思います。今回と前回紹介の『×百合』シリーズは成年向け描写のある百合コミックをもっと色々読みたい、という人向けかな。

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シルバーハライド 第03話

 コミPo!漫画「シルバーハライド」第03話を公開しました。

 これまでの公開分はこちら。

 第03話では主人公・ねぐせちゃんがフィルム現像に挑みます。ストーリー漫画というよりは銀塩写真解説漫画という感じかな。(自作でない)ユーザ3D/2Dアイテムも多数使わせていただきました。アイテムを提供してくださった製作者の皆様には感謝を。

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『モーターサイクルの設計と技術』ガエターノ・コッコ

モーターサイクルの設計と技術
ガエターノ・コッコ
STUDIO TAC CREATIVE
★★★★☆

 第一印象は「訳が酷い」でした。

 以前から気になっていた本です。書店では定価3800円の趣味特化本はビニールでシュリンクされていてそうそう中身を見ることができません。それで購入をためらっていたのですが、ようやく手にしました。
 結果が、冒頭の「訳が酷い」です。

 ですが、まだ見切るには早いです。
 確かに訳はあまり褒められたものではありませんがこの種の本に取り組もうとする人には問題がないはずです。なぜならこの本の主役は数式と図解だから。数式を眺め、図解を見ればきちんと意味が汲み取れます。そういう意味ではまったく問題がない。むしろ、二輪の力学に必要な情報だけを的確にピックアップした良書でした。

 この本を良書というためには前提が必要です。

  • 大学機械系学部一、二年程度の数学・物理学スキル
  • 理工系訳書にありがちなおかしな日本語に耐性があること

 これらを前提とすると『モーターサイクルの設計と技術』は類書のない良著です。ステアリング、前後サスペンションのたった三つの自由度で、ただ車体が傾くというだけなのに複雑になってしまう二輪車の力学を、とてもわかりやすく説明しています。
 バンクさせると勝手に切れるステアリング周りを持つ二輪車は力学的にけっこう面倒臭い代物です。キャスター角を備え、円に近い断面を持つタイヤを履き、サスペンションのストロークによってキャスターもトレールも変動する。これらをどう扱えば良いのか、慎重に考えをまとめていかなければ混乱します。工学部一、二年の若者が「これから二輪車の開発の道に進もう」「二輪の挙動を解き明かそう」と気合いを入れて臨む場面で最初に役に立つであろう本、だと思います。

 文系ライダーのライテク向上には、たぶん、役立ちません。
 読み物として楽しむのには向かない翻訳文です。断言します。文章に深い含蓄なんてありません。この本の翻訳はそんなレベルにはないのです。本の中で示されている力学を訳者が理解しているとは思えない訳文です。
 とはいえ、理系スキルがないと歯が立たないかといえばそれはNOで、高校物理のF=maやら矢印やらがなんとなく掴めていれば、この本が示しているイメージも掴めると思います。ニュートン力学は日常的な感覚に沿う直感的なものですし。原著のままの英語の解説図ですが、翻訳文と違ってエッセンスがぎゅう詰めになっていて頼りになります。

 理系ライダー向きではありますが、この本は二輪の力学シミュレータを作るには少し内容が不足してもいます。バンク角とフロントタイヤ周りの反応、加減速による姿勢変化といった部分部分の要素はしっかり解説してくれるものの、それらを統合的するメソッドがないのです。
 一番大きな問題は「ライダーをどう扱うか」です。多くの関節を持ち、手足から二輪車をコントロールするための入力をしてくる人体を力学的にどう扱うか——。
 バネ上と前後の車輪だけでもすでに三体問題と化している二輪車に、多数の関節を持ち質点が分散している——多体問題を構成している人体が加わります。どこまで単純化するか。どんなモデルを作るか。そこから先は学部生の知識では歯が立たないでしょう。精密なモデル化にはもう一段上のスキルと走行状態の二輪車からのデータ取りが必要になってくると思います。
 そのあたりをまとめた、最初から日本語で書かれた工学書が登場すると素敵なのにな。

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明治大学博物館刑事部門

 明治大学には付属の博物館があります。有名なのが刑事博物の展示でギロチンやニュルンベルクの鉄の処女。見てきました。

 R0015867 博物館は地下一階から始まり、学校史の展示等もあるのですが目玉はさらに地下へと降りた先のここ。
 天井から下がる青っぽい看板の「刑事」の文字。法律と刑罰に関する展示があります。

R0015852 刺股や十手といった捕縛用の道具がまず目に入り、次いで目を引くのがこの抱き石再現。
 三角の木材の上に正座をさせられ腿の上には石。再現展示以外にも当時の書物(や複製品)が展示されていて、浮世絵風の生々しい説明も読めます。

R0015837 こちらもレプリカですが、え〜と首だけ出す木箱とノコギリをぶっ立ててある俵。う〜ん。ほんとにこんなのやってたのかな?

R0015840 晒し首用の台。再現展示よりも背後に置かれていた写真パネルの方が衝撃的です。この博物館の刑事部門展示はレプリカというか文書からの再現品が多いのですが、写真は実際にあった情景ということでリアリティが段違いでした。


R0015848 刑事部門展示の目玉らしい“ニュルンベルクの鉄の処女”と“ギロチン”。どちらもレプリカですが、鉄の処女の方はどうも見せ物のように思えました。ウィービングのある溶接痕などがあって近現代の工作です。レプリカ故の工作痕なのかなぁ……。鉄の処女に関しては実際に使用されたものがあるのかすら疑わしい、という話も刑具・刑罰の本にはあるようです。

R0015849 そしてこちらは鉄の処女の内部。長〜いトゲが。ぞっとする感じではありますが、これ、中に人が入った状態で閉じるのは人力で押したんじゃ無理そうです。蝶番の扉に固定されたまっすぐなトゲって、閉じようとすると横に肉を引き裂くし骨に引っかかったら進まなくなってしまう……。

 考古部門の展示は(ボリュームはあまりないけれど)学問としての色合いも強くありましたが、刑事部門の展示は見せ物的要素が中心で、むしろ書物や立て札、写真パネルのような地味な展示の方が法についての良い資料になっていたように思います。

 展示を見る前に読んでいくとより興味深く、あるいは別の感慨を持って眺められるかも。


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