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『NOVA6』大森望編

NOVA 6
編:大森望
川出書房新社
2011.11.5
★★★☆☆

  • 斉藤直子「白い恋人たち」
  • 七佳弁京「十五年の孤独」
  • 蘇部健一「硝子の向こうの恋人」
  • 松崎有理「超現実な彼女 代書屋ミクラの初仕事」
  • 高山羽根子「母のいる島」
  • 船戸一人「リビング・オブ・ザ・デッド」
  • 樺山三英「庭、庭師、徒弟」
  • 北野勇作「とんがりとその周辺」
  • 牧野修「僕がもう死んでいるってことは内緒だよ」
  • 宮部みゆき「保安官の明日」

Nova6 Living of the Dead 以上を収録したSF短編集です。今回は気に入ったの少なかった……。

 印象に残ったものだけ感想を。
 期待して読みはじめたのは七佳弁京「十五年の孤独」。軌道エレベータを人力登攀するお話だというのを事前に見知っていて、軌道エレベーター好きとしては読むっきゃない!と読みはじめました。う〜ん、う〜ん。ひたすらケーブルを昇っていく自転車(足漕ぎエレベータ)というストーリーなのでどうしても単調になってしまうのはわかります。そこに元彼女や風宙鳥ふうちょうという伝説を絡めて単調になることを防いでいて、成功していると思うのですが、軌道エレベータ登攀もあまりにも普通で、風宙鳥の設定・描写も普通で、あまりにも地味でした。地味なのは好きなのですが、地味なりにゴリゴリの技術臭のする谷甲州のようなものを期待してしまったので「う〜ん」という印象に。作者さん、頑張れ。もっと頑張れ。題材も好みで、真っ向から正攻法で立ち向かう姿勢は気に入ったので応援したいです。
 もう一つとても期待を持って読んだのが船戸一人「リビング・オブ・ザ・デッド」。これ、演劇ネタで百合で哲学的ゾンビに近いテーマ、と私の好みに完璧に一致していました。二十四年組少女漫画的な要素です。文章はとっつきにくく、必ずしも美しくはなく、詰め込み過ぎ感さえ感じるほどにギュー詰めになっていて「おおお!?」という感じ。百合と言っても今の百合漫画みたいにわかりやすくて楽しい話ではまったくないです。テーマ的には演劇の比重が大きかった。『ロボットとは何か』を読んだ人であれば、平田オリザ×石黒浩のロボット/アンドロイド演劇に端を発したSFなのだな、と思えるのではないでしょうか。このお話の中にロボットは登場しませんが……。ガチSFです。ハードSF的な要素は皆無なものの、最新テクノロジーとの対話という意味で見事にSFしていました。そして間違いなく力作。傑作かもしれない。こういう密度のもの、私も書きたいっ。NOVA6一番の収穫でした。他の作品が霞みました。
 右の四コマ漫画は「リビング・オブ・ザ・デッド」導入部の紹介です。

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