『荒野―14歳 勝ち猫、負け猫』『荒野―16歳 恋知らぬ猫のふり』桜庭一樹
桜庭一樹の「荒野」シリーズ二・三冊目。
純正少女漫画のような、というよりもずっと昔の少女小説を思い起こさせるお話。もちろん現代風ではあるけれど“少女”のイメージを追いかけているあたりが明治、大正〜昭和前半に通じるものがあるような気がします。
二冊目ではアメリカ滞在中の悠也は手紙の中の存在で、荒野の父は相変わらず
三冊目では悠也は荒野の比較的身近に戻ってきてはいるものの、ストーリーではあまり出しゃばらず、蓉子さんや父・正慶の生身のヒトとしてのゴタゴタが中心となって、“女”へと近づいていく荒野の姿が描かれます。
少し残念であったのは少女らしい尖った感性を示していた荒野が大人に近づくにつれ、どこにでもいそうな普通の女性になっていくこと。だからこそ少女時代の輝きは大切なものなのだ、とも思えるのですが、大人の視点で読むと「あぁ……」と嘆息する寂しい話に感じられもしました。荒野と同年代の少年少女が読むとまた違う印象となる話なのかもしれません。
同じタカハシマコ×桜庭一樹でコミカライズされた『青年のための読書クラブ』がコミック版・原作版共々最後まで演劇の世界のようなきらめきを保っていたのに対し、こちらの『荒野』シリーズではノスタルジーよりも現実への諦念のようなものを感じてしまうしんみりとした読後感となりました。
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