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『無限振子 精神科医となった自閉症者の声無き叫び』Lobin H.

無限振子 精神科医となった自閉症者の声無き叫び
Lobin H.
共同医書出版社
2011.2.5
★★★★☆

 先日読んだダニエル・タメットの本に続く自閉症関連書籍。今回は精神科医となった自閉症スペクトラムである著者による手記です。タメットの一冊目の『ぼくには数字が風景に見える』と同様、幼少時からの成長の記録です。精神科医として実務を積んだ著者が、衝撃的な出来事を契機に初めて自閉症スペクトラムと診断された現在までを綴ります。

 読むのが辛い内容でした。
 文章自体は達者で、十分に読みやすく整理されています。辛かったのはその内容。自閉症スペクトラムに気づくことなくことなく過ごして来た半生は読むのがとても辛かったです。
 学力面でとても優秀で、精神科医になってしまった著者がコミュニケーションに困難を抱えるはずの自閉症であった、というのは不思議に思える話ですが、この本を読んでいくと「こんなこともありうるんだ」と重い気持ちになります。そして重い気持ちを増加させるのが自閉症スペクトラムとしての特徴の羅列で、著者のケースでは極端だとは感じるものの、あれ? これは私もじゃないか、と思わされるポイントが多いこと。試しに本書の中で紹介されていたAutism-Spectrum Quotientなるものを試してみたところ

あなたの得点は30点です。

社会的スキル
8点
注意の切り替え
6点
細部への注意
5点
コミュニケーション
6点
想像力
5点

という結果でした。上限は50点で、33点が自閉症スペクトラムのカットオフポイント。ちょっとでも内向的な性格であれば30点前後まで到達してしまいそうな質問が並びます。社交性の低い性格と自閉症スペクトラムは地続きなのだな、と納得する結果に。
 自閉症スペクトラムの境界があいまいなこと、自閉症スペクトラム中でも特性は多様なのだろうことは最近読んだ自閉症関連本でわかってきた気がするものの、自閉症スペクトラムという診断を下される人々の実際の困難――当人の苦しさ――は想像することしかできませんでした。でも、想像の手がかりにはなった……かな。

 子どもの頃から“仮面”的人格を作り続け、自閉症スペクトラムの診断を受けて初めて小さく押込められ未発達であった“私”=本来の自身を発見できた、というところでこの本は一段落しています。そのあまりにはっきりとした“仮面”と“私”の峻別が読んでいて不安になるくらいでした。自身の発見から“私”の成長が始まるのかもしれませんし、診断は本当に著者にとって救いになったのかもしれませんが、劇的な認識の変容が恐くもありました。

 自閉症関連書籍の一冊としてオススメに入れたいです。

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