『コクリコ坂から』高橋千鶴
コクリコ坂から
高橋千鶴
角川書店(文庫サイズコミックス)
2011.6.23
★★★☆☆
『コクリコ坂から』のコミック版を読んでみました。以前に書いた映画版の感想記事もあります。
ページを開いての第一印象は「えっ。こんなに時代がかってたんだ」でした。1980年の少女漫画誌『なかよし』に掲載された、との初出情報を見ても「80年ってこういう絵だっけ」と時代のイメージが一致しません。『パンク・ポンク』や『キャンディ・キャンディ』よりちょっと後ということになりますが……。ふ〜む。学生による制服の自由化運動がイベントに折り込まれていたりして、今からは想像しにくい時代かも知れません。ジブリの映画では時代設定が少し古くなっていた気のする1960年代半ば。原作漫画には映画のおんぼろクラブハウス・カルチェラタンのエピソードもガリ版のエピソードもなく、設定の一部が共通しているだけでした。もちろん徳間社長ヨイショもなく。
原作漫画とジブリ的なお話との一番の違いは風間×水沼コンビが生徒会費の使い込みを穴埋めするためにあれこれ奔走してるという、今の視点で見るとどうしても読者(視聴者)の共感を得られないであろう設定がされていたこと。このあたりは「漫画だし穴埋めしたんだし丸く収まればおっけー」とおおらかに笑える時代と今との倫理観の違い、でしょうか。
風間・水沼の切れ者生徒会コンビに海と基本的なキャラクター配置はジブリ映画も原作コミックも変わらず、風間と海との関係設定もそのままです。禁断設定がストーリーの要で、このテーマがどうしても浮いてしまいがちな気がします。作中であまり早くに設定をバラすと居心地の悪い葛藤がストーリーの中心となってしまうし、原作漫画やジブリ映画のように終盤で開示されるとストーリーがそこで分断されてしまう。映画では時代も小イベントもジブリ的なものに変えられますが、それでもなお映画と原作とで共通設定は「あれ? ここからお話別物になっちゃった」感となりました。宮崎駿がシナリオを組んだならばカルチェラタンの件と風間×海の件を完全にシンクロさせて解決しちゃう力技もできただろうになぜそうしなかったのだろう、と不思議に思いました。
映画版『コクリコ坂から』のDVD/Blu-rayももうそろそろ発売ということで予復習としてコミック版を読んでみたのでした。
NHKで放映されたドキュメント「ふたり/コクリコ坂から」も録画を見返したりも。
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