『ひらり、』vol.8
ひらり、 vol.8
新書館
2012.7.28
★★★★☆
今号も面白かった『ひらり、』。
花と稲妻 袴田めら
表紙、扉ページカラーと連動の今回の『ひらり、』は袴田めら特集っぽい仕立ての28ページ。
すごく良かった!
袴田めらはデフォルメやパースで大胆な試みをすることがあって、“めら節”に慣れていないと違和感に繋がることもあるようです。それは良い個性であると思うのですが今回は抑え気味に、会話や演出、ストーリーの流れでも大胆さは控えめに、細やかで丁寧に仕上げてきたのが「花と稲妻」という印象です。
結果、“めら節”が希薄になってしまったかというとそうでもなく、純正少女漫画調でありながら『最後の制服』や『さろめりっく』とも少し違う袴田めららしさが現れてきた気がします。
群れにいて微妙に噛み合っていない主人公・椿と、群れに加わろうとしない菊花の邂逅のお話。
きつね姫 ユキムラ
大正ロマン的な時代設定。女学校。コントラストが高くシャープで力強い絵柄。「狐憑き」と言われるハルとカリスマであるらしい千代子。狐憑きという題材と絵柄、話の雰囲気が調和していて好印象でした。
聖純少女パラダイム 森島明子
『百合姫』を代表する作家といえば森島明子。ポップでコミカルないかにも漫画らしいタッチの作者らしさはそのままに『ひらり、』の少女漫画的雰囲気に合わせてきた印象。遅れて入学してきた主人公・葵は昔ながらの女子高文化とイマドキの同居する入学先に戸惑いつつ、女の子好きを公言し告っては玉砕を繰り返す浮沈の激しいリリという友人を得て……。一、二ページ単位の小ネタを継いでストーリーに展開して行きます。誌面には明記されていませんが連載の模様。
わたしのオディール 磯谷友紀
vol.5で産毛ネタで来た作者の今回はバレエ。今回もフェチぃです。背景や主人公の花嫁修業的な言動からすると女学校文化の残る校風の女子高か過去が舞台なのでしょうか。制服は現代的なデザインかな。
月化 橋本みつる
ファザコン成分あるお話?と思ったけれどそうではなくてタイトルの「月化」と月明かりを浴びて眠ることが最後のシーンに繋がるのであろうお話なのでした。
ライカ、パブロフ、ポチハチ公
『ひらり、』掲載作ではとても絵柄が丁寧というか繊細になった印象の四ツ原フリコ。今回のは需要と供給というお話……かもしれない。相性というのはあるんだな〜と。お花のコマ「わは♥」という感じでした。
ほんとのかのじょ 今村陽子
vol.7の続編。二話構成。今号の『ひらり、』はフェチというか百合成分以外でも微妙に偏った話が多い気が。しかし、ゆーかさん、なんか手遅れ気味です。
放課後ナイフ 佐藤沙緒理
vol.6でバイオレンス+ギャグな感じだった作者。今回もギャグ成分はあるけれどしんみりシリアスでぐっと来る教師×生徒モノ。
やわらかな夜 平尾アウリ
一過性のものとなりがちな女子校での恋愛と、同性にしか興味を持てない者とのギャップが切ない。こういう平尾アウリは好きだ〜。
女の子の設計図 紺野キタ
全三話の完結編。vol.7では
ミニスカートよさようなら 吉田丸悠
ひらり、の新人賞から出てきた吉田丸悠。広角レンズのようにぐっと寄ってる感じの迫力。
ピンク*ラッシュ TONO
マールはもういっそサナとおつきあいしちゃえばいいのにと毎度のごとく思うのであった。
under one roof/parlor 藤生
じわじわと進むルームシェアのお話はなんだかちょっと良いカンジに。日記漫画風の方は今回は恐怖のギョーカイ身内売り?話。餌食は青木光恵先生でした。楽しゅうございました。
little by little 雁須磨子
vol.6「私の嫌いなおともだち」の別視点ストーリー。
春の終わりの夜の夢 犬丸
出番少ないけど火ノ見先輩みたいなタイプむ〜か〜つ〜く〜。とはいえこういう人がいるから話が動いて面白い。
泣き虫王子様 大沢あまね
この人、キャラ立てるのがうまい〜。扉ページの四コマでしっかり掴んでくる。魔法のよう。メンタル・フェミニンな王子様とメンタル・マニッシュなお姫様。
きらきらのなつ ささだあすか
うーわー。萌えとかそういうんじゃなくて、同性愛とかフェミとかもおいといて、なごむー。六年生の夏休みに田舎に転校したすず。その田舎町で秋から唯一の女子の同級生になるらしいひなた。二人で過ごす小学校最後の夏休み。
箱庭コスモス 桑田乃梨子
ふし研の研究は進んでいるのだろうか。いっそ「不思議が集まらないふし研の不思議」を研究の対象にすべきなのではないかと思えてくる今日この頃。桑田乃梨子は今回も平常運転。
予告etc
次号は11月。森永みるくも参加するようです。次回も好きな作家さんが並んでて期待。10月には『キラリ、』なる部活女子アンソロが予定されているようです。どんなのになるんだろう。楽しみ。
第4回ひらり、GLコミック大賞は賞なしの「もう一歩!」二つ。
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