コミック百合姫 2013年01月号

一迅社
2012.11.17
★★★★☆
表紙
パステルカラーで少女漫画調の表紙だ〜。こういう路線はリニューアル以前ぶり。ネットで表紙画像が出たときから折り込みの見返しがありそうだぞ、と予想はつけていましたが今回もありました。ギミック。可愛らしい絵柄の表紙に合わせた可愛らしい仕掛けが。
citrus サブロウタ
前号で三本も新連載あったのに今号もさらに新連載。TL漫画的なキャラと絵柄の巻頭カラーで表紙のパステル調乙女トーンと合わせて今号の印象が一気に乙女雑誌に。スタートも年長組少女漫画的な「衝撃の展開!」シーンで攻めて来ました。これはインパクトあるなぁ。
犬神さんと猫山さん くずしろ
今回はカラオケネタだ〜。このシリーズ、カプ固定なのかな〜と最初は思っていたけれど、いや、確かに基本カプはあるのだけど、毎回本命?カプ以外の組み合わせでも展開があったりして「ぉぉぉぉ〜?」と目が離せない。杜松さんはクセモノのようです。
月と世界とエトワール 高上優里子
王道的女子校モノで今の連載陣では一番「少女漫画」らしい設定、絵柄、展開の第二回。巻頭カラーのサブロウタとともにこういう少女漫画らしい百合漫画が好みなのです。初回から妖しい人であった海百合さまはますます一筋縄では行かなさそうな“敵”のオーラを見せつつ、岸辺世界とのお揃いの指輪の謎も馬のニンジンのごとく見せつけられたまま引っぱられます。これよこれ。少女漫画はこうでなくっちゃ〜という展開。作者さんご自身の手によるこの作品の素敵イラストがpixivで公開されてました。
沼、暗闇、夜の森 さかもと麻乃
うわ〜。今回のさかもと麻乃には思い切り振り回されました。えええ〜っ、という展開に。死んだ人を見、死人と話す主人公は生身の人との交流が苦手で。うーん。この話は説明は野暮かな。
センチメンタルダスト 河合朗
不協和音に満ちた世界はこの作者独特な感じでとても尖った印象。百合姫コミック大賞の紫水晶賞からの抜擢だけどいい人選んだな〜という印象。歩とひさ子の関係、もちょっと引っぱるのかな〜と思ったけれど意外と展開も速そう?
少女惑星 柏原麻実
かしまみの連作は前回が変化球だったので今回も警戒?しつつ読んだのですが今回は直球な感じでほっと安心。不器用っ子のお話です。かしまみの作風自体も一般受け度の高そうな絵柄の割に必ずしも器用な感じではなくて、でもその感じが今回みたいなお話とはバランスしている気もしたのでした。
ダークチェリーと少女A ちさこ
特別でありたい自分と日常と。ああ、あったあった、と十代の頃の自分を思い出してじたばたしてしまう話でした。少女時代真っ最中の子が読むとどんな感じがするのだろう。
丘上の約束 大北紘子
異世界設定の印象が強力な大北紘子は今回は日常的設定。日常だけど、でも、この人の描く世界はトクベツ感がある気がする。パリッとした絵のせいかな。読者の側にべったりくっついてくるウェットなところがなくて、距離感を保っていてつつ、でも独特の情の濃さみたいなものもあって。とても好み。今回のお話は読み終えてタイトルページに戻ると「おお!」な感じなのでした。
心、咲ク季節 慎結
美大の日常の中でちょっと甘い、ううむ、実はかなりゲロ甘なお話でした。なんだよ「ちらっ」って。も〜。可愛いじゃないかちくしょー。
ゆるゆり なもり
ちょっとちょっと。今号の付録は「ゆるゆり」の過去作だったけどミスったと思います。年の変わる一月号で、本編でこのネタなら付録はこれしかない!というものがあるじゃないですか〜。
あまいゆびさき 宮木あや子/ロクロイチ
無事完結。や〜、これは一冊にまとまるのが楽しみ。宮木あや子は読者をどん底に突き落とすような話も描く人なのでハラハラしたけど落ち着くところに落ち着いた気がします。
この愛の不幸は ふじはら
第8回百合姫コミック大賞瑠璃賞作品。これはストーリーを紹介してしまうと台無しかな。少女の不安定さや狂気を描くというのも百合漫画・少女漫画が備えている魅力のひとつで、『百合姉妹』スタート時にはそういった話の比重も高かった気がします。この受賞作はそんな部分を強く描いたもの。
名前はまだない かずまこを
シリーズものとして定着したらしい第3話。ゆったりとした空気感。長髪さんの方はずっと「名前はまだない」なのかな。
私の世界を構成する塵のような何か 天野しゅにんた
むむ。芽流のビデオ出演を見つけた人と情報拡散し続けてた人は別だったのか。登場人物の多さと状況の複雑さでちょっとややこしいシリーズですが今回で状況は一段落、かな? そもそもの発端のレポートは大丈夫なのでしょうか……。
きものなでしこ 八色
今回はキモノ蘊蓄回。TPO別にキモノ着せてお出かけとかも読みたいでござる。今回はかの子が感情面で積極的な感じです。これまで紗綾→かの子分強めなのかな〜と思っていたのでちょっぴり意外。かの子はキモノのお勉強をするみたいだけどこれからのキモノネタ強化になるのかな。楽しみ〜。
ツミキズム 井村瑛
井村瑛、絵柄が今回ふわふわ可愛いタッチなっていて印象がずいぶん変わりました。百合姫コミック大賞からの登場当時は鉛筆?っぽいトーンを多く使っているように見えたのですが前々号からかな、ペンのみになってすっきりしてきたかも。
第8回百合姫コミック大賞結果発表
前回は蒼玉、紫水晶、翡翠賞に加え瑠璃賞も四つ並びましたが今回は瑠璃賞が三つ。選評もけっこう厳しいことが書かれています。歴代受賞リストも更新しておきました。
ストレンジベイビーズ 大沢やよい
短編「ブラックヤギーと劇薬まどれーぬ」からのスピンアウト的連載ですが、短編でのエピソードは100%こちらにも引き継がれていると考えて良いのかな? などと悶々としたところで「To be continued.」なのでした。あ〜、もう〜、三月号ま〜だ〜。
ふ〜ふ 源久也
今回は指輪編。や〜、毎度ながらゲロ甘でした。って次回予告の柱が「ラブ2クライマックス」ってさらに盛り上げるのか。さらにゲロ甘なのか。ブライダルサロンは森島明子の「レンアイ女子課」で合作とかは無理かな〜?
めかくしのこい(前編) 竹宮ジン
前髪ぱっつんキャラのヒロインは『百合姫』での竹宮ジン的には目新しい感じ。タイトルページ前からすると本編は過去編みたいなのだけどなんだかいっぱい設定ありそうなこの話、後編で全部はっきりするのでしょうか。
チェリーなカノジョ 森島明子
三回掲載ものの第二回。写真部の暗い主人公・ネガとヒロイン・月宮さんのお話シリーズ。相思相愛が明らかになって晴れてカップルの二人だけど、基本的にネガティブなネガは自信が持てなくてやっぱりネガティブ思考に。写真好き的には写真部活動シーンもっと多くても嬉しいのですがそうなると百合漫画的には偏りすぎちゃうかな? 完結予定の次回が楽しみ。
メタモルノイズ 黒霧操
ちさこと黒霧操はそれぞれ作風は違うけど、でも私は勝手に「百合本流」と思っていたり。吉屋信子の頃からの“少女”をテーマにしてきたお話たちの末裔としての百合漫画、という意味で。今回も成長と絡めて“少女”らしさを描きに来ていたように思います。
Cirque Arachne 再田ニカ
サーカス方向をもっと押し出してくるのかな、と予想していたけれどテティとロッテの関係にまとまって比較的コンパクトな恋愛物の印象となりました。ちょっともったいない。隔月刊の連載だとスポ根的な方向には盛り上げにくかったのかな。もっと長期のお話で読みたかったな〜。脇役さんたちにもそれぞれドラマ回があって、うまくいかない技を主役二人で乗り越えて、みたいな。最終回は暖かく穏やかな感じでまとまって良かっただけに。
ウタカイ 森田季節/茂田家
決勝戦で大いに盛り上がるのか、と思いきや意外と勝負はあっさりとついたもののラスボス戦が待っていました。しかも何じゃこのお笑いほのぼのオチは〜。異能バトルでズゴゴゴゴを予想していたのですが良い意味で裏切られました。イチャつきバトルじゃないですか。えーと、感想は「ごちそうさま」。
百合男子 倉田嘘
今回はスキー合宿。今回は白啓介と黒啓介が出てきましたが、ここはあれです。白と黒でヌードフェンシング(©安永航一郎)でも繰り広げてくれないかななどと思いながら読んでしまいました。……すいません、下品で。そして謎の思わせぶり女子キャラは今回は完全スルーだったのでした。ふと思ったのだけれど、百合男子は女子パートってやらないのかな。リアルのセクシャリティとは別に百合漫画が好きな女子。なかなか出てこない女子キャラはそのあたりのためにスタンバってるのかもしれないなんて妄想をしてみました。
次号予告にはタカハシマコと百乃モトの名が久しぶりに。小説二つがともに最終回を迎えたようなのでその枠がどうなるのかも気になるところです。また小説が載るといいなぁ……。