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『ひらり、』vol.9

ひらり、
新書館
2012.11.30
★★★★☆

 今回も良かった『ひらり、』。『百合姫』で馴染みの作家さんたちも顔触れが増えてきたのは嬉しい反面、一迅社や芳文社とは違う作家陣を知ることができたのも『ひらり、』の楽しさでもあって。「ピュア百合」の方針と新書館に縁のある作家さんをこれからも教えてくれるアンソロであるといいな〜と願ったり。今号もボリュームある424ページ。

表紙&お姫様の鏡 森永みるく

 『ほうかご!』にも掲載のあった森永みるく。今回は表紙とタイアップ。アクシデントから人気の上級生となんちゃって恋人シミュレーション。

おべんとうと加瀬さん。

 単行本、『ほうかご!』と「加瀬さん。」シリーズを読んでいたせいかもっと話が進んでいたような気がした今回・告白後からの日々。おや、あれ、前半のこのむっつりモードな加瀬さんとの擦れ違いはイベントの予感!となりつつも今回はタイトル通りのお弁当話で健全……いや、やっぱり加瀬さんはむっつりだ、という結論に至ったのでした。

少女プラネタリウム 雨隠ギド

 雨隠ギドはvol.1に掲載されたときの三角関係の話で「わ〜、この絵好きだ」と刷り込まれて以来お気に入り。今回はプラネタリウムネタ。読んでいいな〜と欲しくなっちゃうグッズというのがあったりして悩ましい漫画でした。

聖純少女パラダイム 森島明子

 『百合姫』では柱といっていい森島明子、『ひらり、』では少し雰囲気を変えていてキャラの天真爛漫度?コミカル度?が高まっている印象です。葵とリリの関係はどんな風に進んでいくのかな。

少年 紺野キタ

 「少年」や「少女」をキーワードにしたお話を作る紺野キタはやっぱり大好きだぁ〜。しかも『ひらり、』発売前日あたりに何気なく「心のオヤジ」に触れていたりして、あああ、確かに明治期に女学校制度をぶったてて幻想の女の園を作り出したオヤジ心は百合を愛でる感情となんか繋がってるかもしんない、と勝手な解釈をしてごろごろ悶えてしまいました。や〜、それにしても音楽室のシーンいいな。密くんのハートを鷲掴みにする魅力的なはずのシーンが、読者にとってもハート鷲掴みになるというのはもう幸せというかなんというか。

ストロベリーショートケーキの感染 袴田めら

 幽体離脱をきっかけに家族のマイブームが感染して、という話。これはもう一捻りした続編が作れそう、とちょっと妄想してしまいました。

ふたつの世界 橋本みつる

 甘酸っぱい青春の一ページ。告白とそのリアクション。好き嫌いがはっきり分かれそうなアクの強い絵ですが尖った部分のある少女漫画の香りが魅力だと思うのです。ストーリーはしっとり。

しのびのいろは ささだあすか

 単行本『ふわふわのきもち』同日発売。ささだあすかは今回みたいなほのぼの忍者も作風にぴったり。

おみ足を此処へ 大沢あまね

 やはり単行本『彼女×彼女』が出たばかりの大沢あまねは靴屋……靴職人のお話。これはアレだ、シンデレラ!

ほんとのかのじょ 今村陽子

 一話目で手探りな感じもありつつインパクトもあって四話目になってみたらもえの変態度設定がかなりぶっ飛んでるのが明らかに。変な方向に濃いです。ピュア百合アンソロジーに咲くディシプリンの花・キュアS&M。

under one roof/parlor 藤生

 ぉ〜。なんというか、ドリーム漫画というか。4ページくらいずつ進むストーリー漫画と四コマの中間みたいな感じでじりじり前進。後半のエッセイ漫画も楽しそう。palor中でも同行していた森島明子先生のレポもpixivで公開されてます。

妹ができました。 芥文絵

 ひらり、GLコミック大賞準グランプリの作品。絵もお話も丁寧で綺麗でこれで新人賞作品なのか〜と感心しまくり。『つぼみ』vol.12、vol.20にも掲載のあった方でサイトでも(百合オンリーではないですが)素敵な漫画を公開されてました。

犬と猫 藤こよみ

 vol.3の「プルケリマ」と『ほうかご!』の馬術部ものの作者さんですが三作とも印象が違います。作風の幅が広い〜。今回はケモ耳キャラによる娼館の用心棒話でレビューサイトやAmazonレビューを見ると賛否がはっきり分かれた模様。私は「賛」派。ガチ恋愛縛りがないのが『ひらり、』の良いところだと思うのです。

健康診断、ふたりきり カザマアヤミ

 か、かわいいな。ワンコっぽいキャラ。うちにも以前ゴールデンリトリバーがいて、まさしくこんなキャラでした。ちょっと涙が。悲しいお話じゃないですが。

おにあいのわたし ユキムラ

 憧れの洋子さんに写真を撮ってもらうお出かけ。山に行くということで森ガール的オシャレをしてきたのだけれど予想以上に本格的な「山」でというちょっとドジっ子属性っぽい主人公と写真好きの洋子さんとの話。最近は写真への関心が高まっているのか、百合漫画でも写真ネタが増えてきて写真好きとしては嬉しかったり。

リミフレ ふかさくえみ

 これはヤラレタ。頭身低めの四コマっぽい絵柄で期間限定の友人のリミフレというお手軽感のある設定で。あー、もう何を書いてもネタバレになりそう。とにかく、まっすぐなとこがスコーンと気持ちの良い話でした。

木立 藤たまき

 藤たまきはvol.7に載っていた「この世にただひとり」という小学生の話が好印象でしたが、今回は大学生主人公。強烈なガテン系とーちゃんが出てきたり、特段技能のない女子の生計の話が出てきたりと、先の養蜂家の子の話同様、児童小説的な気配の作風でありつつ現実を感じさせてくれます。

誘われ温泉 雁須磨子

 OL二人の箱根旅。雁須磨子の話は作者の独特のリズムに合うとすとんと落ちてくるので「よくわからない」という人はゆっくり読んでみるのがお勧め。微妙なディスコミュニケーション感というかコミュニケーション力低めのキャラの面白さがじわーっと。

ピンク×ラッシュ TONO

 TONOの漫画は油断できない。このままマールとサナがずっと付かず離れずなのだろう、と安心したところでとんでもない設定が来そうな気がして毎回恐々としていたり。人食い妖怪の話になったりしないだろうか、か。

箱庭コスモス 桑田乃梨子

 そろそろ、そろそろ本物のふしぎ研究を見たいふし研。いつもながら風和当人というか、作者が一番不思議だよなぁ……。

ヒミツノハナゾノ 犬丸

 犬丸の演劇部のこのシリーズのお話は登場人物も多めで、キャラ間の関係もわりと複雑っぽいので単行本でまとめて読むと映えてくる気がします。群像劇ならではの感じがあって。今回はゆいっちと内藤さんの話でした。

 帯の見返しには三月に紺野キタとふかさくえみの単行本が予定されているとありました。楽しみ〜。
 新人賞は今号に掲載の芥文絵と期待賞の二人。

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