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コミック百合姫himecafe登場作家リスト

himecafe登場作家リスト

 『コミック百合姫』の読者投稿コーナーhimecafeのゲスト役一覧。

2011年1月号 森島明子
2011年3月号 なもり
2011年5月号 田仲みのる
2011年7月号 竹宮ジン
2011年9月号 倉田嘘
2011年11月号 かずまこを
2012年1月号 源久也
2012年3月号 さかもと麻乃
2012年5月号 なもり
2012年7月号 大沢やよい
2012年9月号 八色
2012年11月号 ちさこ
2013年1月号 柏原麻実
2013年3月号 くずしろ
2013年5月号 タカハシマコ
2013年7月号 河合朗
2013年9月号 高上優里子
2013年11月号 サブロウタ
2014年1月号 コダマナオコ
2014年3月号 ねこ太
2014年5月号 黒霧操
2014年7月号 井村瑛
2014年9月号 倉田嘘
2014年11月号 天野しゅにんた
2015年1月号 なもり
2015年3月号 倉田嘘
2015年5月号 大沢やよい
2015年7月号 仲原椿
2015年9月号 merryhachi
2015年11月号 コダマナオコ
2016年1月号 春日沙生
2016年3月号 片倉アコ
2016年5月号 伊藤ハチ
2016年7月号 サブロウタ
2016年9月号 めの
2016年11月号 山田あこ
2017年1月号 コダマナオコ
2017年3月号 なもり
2017年4月号 大沢やよい
2017年5月号 サブロウタ
2017年6月号 tMnR
2017年7月号 未幡
2017年8月号 椋木ななつ
2017年9月号 広瀬まどか
2017年10月号 沼地どろまる
2017年11月号 伊藤ハチ
2017年12月号 べにしゃけ
2018年1月号 コダマナオコ
2018年3月号 merryhachi
2018年4月号 くもすずめ
2018年5月号 未幡
2018年6月号 tMnR
2018年7月号 土室圭
2018年8月号 野中友
2018年9月号 玉崎たま
2018年10月号 サブロウタ
2018年11月号 しろし
2018年12月号 大沢やよい
2019年1月号 黄井ぴかち
2019年3月号 竹宮ジン
2019年4月号 あおのなち
2019年5月号 椋木ななつ
2019年6月号 ゆあま
2019年7月号 コダマナオコ
2019年8月号 岩見樹代子
2019年9月号 竹嶋えく
2019年10月号 FLOWERCHILD
2019年11月号 tMnR
2019年12月号 なもり
2020年1月号 サブロウタ
2020年3月号 はづき

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『10万年の未来地球史』カート・ステージャ

10万年の未来地球史
著:カートステージャ
訳:小宮繁、監修・解説:岸由二
日経BP社
2012.11.15

 この本のタイトルを、帯を見て手に取った人がたぶん思い浮かべるのは、人為温暖化阻止を訴える本なのだろう、というイメージだと思います。

 ですが、違います。この本は温暖化阻止の行動を起こそう、今すぐに起こさねば間に合わない、と説く本ではありません。すでに手遅れであることを示し多少でもマシな撤退戦が可能であることを示します。即座に温室効果ガスの放出をやめるべきだとか、温暖化で街が沈むぞと読者を脅す本ではないのです。

 人為温暖化による危機を不必要に強調することもなく、温暖化説の問題点を厳しく追及しているわけでもありません。強調されるのは人類はもう莫大な量の炭素を大気環境に放ってしまい、その影響が解消されるまでには万年単位の時間が必要である、ということ。少なくとも計算を試みるならばそういう時間スケールで影響の残ることを我々人類文明はすでにしてしまっていると。
 そして温暖化による影響を具体的に示しますが、それは映画やアニメ、科学ドキュメンタリで見せつけられる「水没都市」のイメージではありません。すでに世界は温暖化による海水準変化以上のペースでの地盤沈下や隆起を経験していて、これから訪れるかもしれない海面上昇も同様に対応するだろうと語ります。東京湾沿岸のゼロメートル地帯、地盤沈下が原因ですが温暖化による水位上昇はあれよりもゆるやであるそうです。世界中の似たような土地の例を挙げ、私たちはコストを支払いつつも対応できてしまうだろう、と。
 海水準以外にも二酸化炭素濃度の上昇によって酸性化する海についても語ります。水温の上がった海は今の馴染みの海産物とは違うものを私たちにもたらしそうだと。氷の消えた北極海は豊富な水産資源の得られる海となり、pHの変わった水では殻を脱ぎ捨てた既存の生物が別の姿に育つかもしれないことを示唆します。

 ありきたりの温暖化説とも温暖化説批判とも違う視程の長さが魅力かと思います。SF的な感覚を刺激される本でした。


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森島明子『女の子合わせ』+『初めて、彼女と。』

 二冊同時刊行された森島明子の百合短編集の感想です。

女の子合わせ

 『女の子合わせ』の初出一覧から。

女の子合わせ百合姫Wildrose Vol.1 2007.11
恋のいいなり百合姫Wildrose Vol.5 2010.3
思い出結びGirls Love 2011.2
聖夜のアガペー百合姫Wildrose Vol.4 2010.1
海風が薫る百合姫Wildrose Vol.6 2010.9
天使なカノジョ百合姫2012年11月号
チェリーなカノジョ百合姫2013年1月号
彼女のカノジョ百合姫2013年3月号
女の子合わせ修行編描き下し

森島明子『女の子合わせ』初出一覧より

 描き下しは四コマが4ページ。描写は全体に『Wildrose』系のものに合わせた感じで『百合姫』掲載作もすべて(妄想シーンも含め)性描写アリです。
 『Wildrose』系のものはそれぞれ独立したお話でえっちシーンを中心にお話が進みます。一話ごとのページ数も少なめ。「女の子合わせ」の「おっぱいのチュウ♥」は可愛らしさ爆発の名シーンでこれが収録されていだけでも嬉しかった。後半の『百合姫』掲載の「カノジョ」シリーズは高校写真部が舞台のお話で、メインは内向的なネガとフェミニンで明るい月宮さん、副旋律的にイケメン女子・慶とお洒落な奈々が対置されます。

 「カノジョ」シリーズでは写真部という設定から暗室作業風景なども何気なく入ってきますが写真マニア向けな排他感はなく、しっくりしっかり百合恋愛漫画しています。手探りになるティーンの性、同性同士であれば尚更で恋愛自体も手探りに。いっぱいいっぱいでぎこちなく関係を進めて行く十代の甘酸っぱい人間関係に、思春期ならではの性への強い関心とイメージが先行しがちなあたりを描くのも森島明子らしく思えます。

初めて、彼女と。 森島明子

 一言にすると「森島明子作品番外編集」。

 一冊丸ごと描き下しです。森島明子がこれまで描いてきた作品の補完とでもいうべきお話たち。ページの都合で、ストーリー構成の都合で、さらっと流された部分をしっかりと埋めてくれます。あとがきには「本編を読んでいない人にも楽しめように作ってある」旨書かれていましたが、でもやっぱり先に『楽園の条件』『瑠璃色の夢』『レンアイ女子課』の三冊は読んでおくと「あのキャラのあのときの心情が!」とより楽しく読めると思うのです。既読の方も読み直し推奨……するまでもなく『初めて、彼女と。』の読後には復習したくなるはず。
 久々の三国さんのかっちりしたOL感が好ましかったり、蜜姫&香の高校生時代が見れて嬉しかったり。あとがきで明かされる衝撃の事実?に笑ってしまったりも。
 森島ワールド総決算というか一段落というか、節目に当たる一冊ではないかと思います。

 まっさらな状態からこの『初めて、彼女と。』を読んで森島ワールドに触れた人にはそれぞれの話はどう見えるのだろう、と少し気になりました。読む順番によって印象が変わりそうです。

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『月と泥』大北紘子

月と泥
大北紘子
一迅社コミックス百合姫コミックス
2013.5.18

 大北紘子の二冊目のコミックス。『コミック百合姫』掲載の2012〜2013年の作品6本と描き下し12ページ、あとがきを加えた百合短編集。

絶望、諦観、羨望、孤独――。
光のミエル先に、
希望なんてなかった。

男なんて、みんな死んじゃえばいい。

大北紘子『月と泥』コミックス帯より

 インパクトのある帯がついていますが男性そのものの否定に直結するお話はありません。
 宿屋の娘とそこを訪れた少女の逃亡を描いた表題作「月と泥」。
 裏切った軍の同僚との再会の一コマ「六花にかくれて」では女性だけの国を作り、女性優位のイデオロギーの支配する世界が設定され、そのイデオロギーに反するヒロインが描かれてむしろ帯の文言の逆であったり。
 これまでの作風からは意外な甘さの「好き」が描かれる学園物「好きの海の底」。もちろんトゲもあるけれどでもそれを超えてしまう「好き」のある話。
 現代OL物の「しあわせにしてほしい」も正統派百合漫画な感じ。
 丘の上に暮らす憧れの年上の女性の元に足繁く通う中学生少女。華やかなお話に見えて、でもそれだけでもない「丘上の約束」。
 異世界的な設定の踊り子の日々を描いた「鎖の斬手」。描き下しの「鎖の少女たち」もこの話のスピンアウト。

 お気に入りは「鎖の斬手」+「鎖の少女たち」。
 大北紘子の設定する異世界感は独特で、けっして奇異な設定ではないのに強いオリジナリティを感じさせてくれるのです。「鎖の斬手」では舞台役者の世界が描かれるのですが、その芸能の中身、価値観、背景世界に私たちの世界とは少し違う独自の異文化が備わっている気配があるのです。事細かに技術や政治の設定がされている、というのではなく設定された世界の質感が濃い。空気が違う。色が違う。それは今回の『月と泥』に加え前巻『裸足のキメラ』を含めた現代物以外の話でも同様で、濃い質感とすっきりと整理された絵柄とが読者との間に微妙な距離感を作りつつ、けれど距離を保っていることにより感情も世界も強く鮮やかに見えてくるという不思議な魅力があります。

 百合漫画誌に掲載されていて設定やストーリー的にも百合であることは確かですが、「百合漫画」といったときに思い浮かべやすいものとはかなりの隔たりがあるはず。少女という華やかな性があり、少女という虐げられる性が描かれるものの、共感は奥深くに引っ込み、百合漫画のお約束パターンは排除される傾向にあります。センチメンタルな同情も、ぱっと見には登場するのですがどこか一線が引かれているかの印象。多分に百合漫画的ではないけれど少女というテーマだからこそ現れてくるモノ。百合という引き金を引いて打ち出されて来た少女漫画、が大北紘子作品なのではないかと思うのです。

 百合ジャンルから出てはきましたが、少女をテーマにした心に刺さる漫画として百合オタク以外の層にも勧めたいです。

 以下はネタバレ

続きを読む "『月と泥』大北紘子"

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『コミック百合姫』2013年7月号

コミック百合姫2013年7月号
一迅社
2013.5.18

 今号はカバーの表面加工で何かやっているらしいとの事前情報で楽しみにしていた『百合姫』。実物を手にしてみると「なるほど!」と。
 同日発売の百合姫コミックスも五冊とお財布に痛い18日となりました。

表紙

 表紙加工は「グロスニス+はじきニス」という方法で行っているとか。以下にクローズアップ写真を。

Img_0013

 はじいてるはじいてる! UV硬化ニスをはじく下地インクを使った部分だけこんな感じにシワができるそうです。このシワのできた部分がザラザラした触感になり他の部分がツルツルになるようなのですが、この質感の違いは表紙画像では伝わらないはず。実体のある紙書籍ならではの可愛い演出。表紙を開いた見開き目次ページも続きになっています。

ボウソウガールズテキモウソウレンアイテキステキプロジェクト B.G.M.R.S.P 河合朗

  作者がTwitterに貼った一枚のイラストをきっかけに掲載が決まったらしい新連載。前作「センチメンタルダスト」はとてもウェットでタイトル通り“センチメンタル”感たっぶりでしたが今回は「アホっぽい百合」がコンセプト。(Twitterのイラストに付されていた言葉) 以前はバトル漫画にも挑戦していたという作者は少年漫画的なギャグ顔表現もこなし、デビュー二作目とは思えないこなれたタッチを見せます。主役二人を見れば落着点の想像ができる……のは恋愛漫画の宿命ですが、そこに至るまでにどんな“アホ”を見せてくれるのか。今作も割とウェットな背景設定がすでに覗いていて“アホ”一本ではなさそうです。
 ギャグ路線では『百合姫』にはすでに「百合男子」という強敵がいます。あちらは登場人物たちは思いっきりシリアスに“おばか”をやっています。B.G.M.R.S.Pともどもそびえ立つ“おばか”と“アホ”の双璧になるといいな。
 正式タイトルが長くて覚え切れなさそうな略称B.G.M.R.S.Pですが読者側には「アホ百合」で通りそうな気もします。

正しいぱんつの捨て方 ちさこ

 ぱんつに始まりぱんつに終わる。
 下着プレゼントは男→女だと想像するだけで「おっさんのダメプレゼント」のオーラ出まくりですが同性だと変なバイアスもなくて日常的な小物の範疇かもしれません。ぱんつネタも少年・青年漫画だとお約束フェチな感じが出てしまうけれど純正少女漫画タッチのこの作者で百合漫画であれば違和感もなく。ぱんつを握りしめた主人公で絵面的にほのぼのしたおまぬけ感が漂うのもキュートです。

くらやみのアスタリスク・前編 百乃モト

 工エェェエ工。ここで「後編に続く」なんですかぁ〜。連載物の引っぱりとは微妙に違う一段落ありつつの引きだけどすごい生ゴロシ感。次号に掲載予告あって良かった。でも待ち遠しいぞ。メインキャラの一人の“紘子さん”は『キミ恋リミット』にも登場したキャラと思われます。幸せになってくれるといいな。

犬神さんと猫山さん くずしろ

 新キャラ投入。日常ではなかなか見られない体を張ったぎりぎりのギャグが身上のキャラようです。このキャラは印象強い。後半・二話目では猫山さんのお姉さんもしっかり登場。

邂逅エフェクト コダマナオコ

 ちょっぴりWildroseっぽいベッドシーンの生きる大人テイストのお話。
 『百合姫』から『つぼみ』や『ひらり、』に描くようになった作家さんは幾人かいるけれど『百合姫』外の百合誌から『百合姫』に進出したのはたぶんコダマナオコだけ。百合漫画描きの発掘、という意味で野心的な印象の『百合姫』では例外的な存在なのだろうと思います。先の描き下し単行本『不自由セカイ』もすごく良かったし、今回のちょっぴり破滅的な香りのするまとめ方も「このあとの二人どうなるの」感も良かったし。次号にも読切の掲載があるらしく、予告ページにはぐっと来るカラー絵がありました。七月予定の新刊単行本も『百合姫』掲載作だけだと足りないんじゃ、と思ったけれど『Girls Love』シリーズに掲載したものが二本ありました。次号も単行本も楽しみ。

my sweet clover 慎結

 人間関係ちょっとややこしい三人のお話。ちんちくりん?の七葉を中心に出会い系サイトに出入していたヒイと高校生モデルのエリンが牽制しあうという構図に。あれ? でもちょっと待てよと、おいしいトコを突いて来ます。

美しくなる日 井村瑛

 異文化を描いた「熱帯のリリオン」やテビュー作「リバーサル」の印象が強く、作画が洗練されお話が『百合姫』スタンダードな現代恋愛ものに寄ってきているのがちょっともったいない気もします。今回のお話もフツーの女の子への切ないメッセージがあってこれはこれでとても良かったけど、井村瑛だけにしか描けないものが読みたいな。現代恋愛にしてもギリギリ感のあった「感情的日常」とかとても好みなのです。本誌と同日で単行本『ツミキズム』も発売。

おやすみsyndrome 蕗

 双子もの。絵もお話もまだ少しぎこちなさ漂いますが、でもデビュー直後のこの時期にしかけ描けないだろうお話であるような気もします。最後のページの「女の子だから双子だから」の部分を読んでふいに「男の子の双子でこの話だったら……」と連想してしました。

ゆるゆり なもり

 京子宅での鍋を囲むごらく部の面々。そこに停電が。嵐の山荘的シチュエーションの中ですがやはりごらく部なのでした。

インソムニアガール 大北紘子

 タイトルの“insomnia”は不眠症のこと。エグいと評してしまいがちな大北紘子のお話ですが、今回はハッピーエンドな気はしつつ。けれど設定や状況に覗くトゲの存在と「夢で会えるまでには時間がかかるらしい」というモノローグに「亡くなった母以外も指していたりはしないだろうか」と警戒したくなるのは作風に調教された身ゆえでしょうか。いえ、たぶん素直に読むのが一番だと思うのですが。同日発売のコミックス第二弾『月と泥』もとても良かった。

きものなでしこ 八色

 前号で一気に関係の進んだ観のあるサーヤとかの子。「ぎくしゃく」という話から始まる今回はまさにぎくしゃく。というよりもこのお話の進行のぎくしゃく感は作者が甘々シーンを描くのに照れていることがストレートに出ているのではないでしょうか。読んでいてなぜか妙に気恥ずかしくなりました。

恋に××は関係ないよね! まに

 百合姫コミック大賞紫水晶アメジスト賞作品。見やすく整った作画で丁寧さもしっかり感じられます。ぷに感のあるキャラデザも可愛い。三つ子の魂百まで的(三つじゃなくてもうちょい上みたいだけど)な刷り込み?のお話です。

コミック百合姫と区別企画ページ・ユリシィ

 何かの特集ページなのかなーと思ったのですが「ユリシィ」というタイトルからして何かのパロっぽい。なんだっけ、と考えること三十秒。結婚情報誌「ゼクシィ」のパロディなのだと気づきました。ちょっと前の「ゆるゆり」キャラの婚姻届の元ネタは「ゼクシィ」的なおまけだったんだ……と改めて気づいた次第。「ゼクシィ」は付録がヘンテコなことで定評のある雑誌らしいのです。記事のような微妙な感じ〜と思ったら『ふ〜ふ』の宣伝に繋がるという企画。どーせならイラストタッチともども「ゼクシィ」をパチったデザインにしてしまえと思ったのでした。

百合魂収録レポート 百乃モト

 百乃モトのアニメ塗りに近いタッチのイラストが新鮮でした。漫画だと割と泣いたり悩んだりのキャラが多いので笑顔ばかりの明るいレポートも物珍しく感じられます。

月と世界とエトワール 高上優里子

 巻中カラーは非コート紙で水彩っぽさがよく出ていて蛍光ピンク特色も華やか。読み応えたっぷりの40ページ。歌勝負の第一幕も終わり次の舞台に向けての助走が始まったのですが、おお、なんという少女漫画展開。波乱のシーンで次号へとがっちり引っぱります。

アッチ/コッチ/ドッチ 竹宮ジン

 那奈×さとみシリーズ。この二人の話ぎっしりの単行本が出せそう。意外とバイオレンス行動の多い那奈なので最終ページ付近でもぱしーんと来そうな気がちょっとしたのでした。

citrus サブロウタ

 あわや退学!?というところで突発イベントに救われたっぽい柚子。作中の小ネタに『ももいろ姉妹』ってなんじゃそれ読みたいわ!はるみんツワモノだな!などと呟きつつ。いや〜、押し倒し&寸止めに振り回されまくります。「月エト」と「citrus」の(中高一貫教育校でいうところの)外部生組の見せ場どんどこ盛り込んでくる話作りがたぶんこれまでの『百合姫』には少なかったのだと改めて思ったのでした。この「キター!」感が文句なしに楽しいのです。こちらも七月に単行本だそうです。

G.G.P 黒霧操

 Girls Guard Projectと題しティーンの妊娠による不幸を避けよう!と声高に叫んで避妊具をかざすキャラは百合姫的にはかなりインパクト。良い意味で“捻り”を効かせようという指向のある作者ならではの印象の強いお話しになりました。前号・前々号あたりから躍進著しい黒霧操、その進歩した漫画力とキレの良い題材と好循環が続いているように思います。同日発売の単行本『マテリアルキャンディ』の表紙の鮮やかさの素敵なこと。

楽園の条件 side:A side:B 森島明子

 同時発売のコミックス『初めて、彼女と。』からの切り出し掲載。感想は単行本の記事にしました。

ロケット★ガール 田仲みのる

 少し前に一時お休みしていて再開と同時に数年が過ぎていたり、今回も回想にどーんと飛んだりでめまぐるしいロケガ。回想回の今回はテンション上がる39ページ。そんでもってかなりハードな設定も明らかに。ぉぉぅ。でもこれでこそ次回が楽しみに待てるというもの。

私の世界を構成する塵のような何か。 天野しゅにんた

 見開きの扉絵のちびキャラ可愛いな。とてもこのお話のどろどろドラマを展開する子たちに見えな……。今回はなんだか思いがけないカップリングの予感が二組。いやその組み合わせ合わないだろうダメだろうと思いつつ組み合わせたらどーなるのか気になるのは読者という位置がレミに近いということなのかもなんて思ったり。

ストレンジベイビーズ 大沢やよい

 最終回。ヤギー&まど組はしっかり決着がついたけどココットとアリス側が不消化気味だ〜。ちょっぴりもったいない感じもしました。

百合男子 倉田嘘

 今回の百合男子は素敵回。啓介がうっかり格好良く見えるシーンがあったし、宮×藤的にも百合漫画らしい見せ場があったし。それにしても藤ヶ谷、百合女子開眼したのが原因なのか啓介っぽさが伝染してきてるような。そのうち手からビームが出るようになったりしそうで恐いです。今回のストーリー進展、松岡さんが内心でどう思っていたのか気になったのでした。

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 新刊の予告が続々と。

6/1ゆるゆり10巻 特装版 なもり
6/18steps 竹宮ジン
センチメンタルダスト 河合朗
月と世界とエトワール1 高上優里子
7/1ゆるゆりファンブック(仮)
ゆるゆりプレミアム(仮)
なもり画集(仮)
7/18ストレンジベイビーズ 大沢やよい
citrus サブロウタ
残光ノイズ コダマナオコ
百合男子4 倉田嘘
7/27百合姫Wildrose Vol.7
8/1大室家 (1) 限定版 なもり

と特に「ゆるゆり」関連がハイペースで画集まであっておサイフ直撃の夏に。百合姫Wildroseも久しぶりに出るようです。小説では雨降波近『ヒカルセカイ』も七月刊予定。こちらは情報がまだ少なめで著者と同名のミュージシャンがいらっしゃって音楽ネタであるらしく、一迅社文庫大賞アイリス部門への投稿作が元になっているとか。イラストはタカハシマコの模様。
 「恋愛遺伝子XX」がここのところ掲載が不安定になっているのが残念。次号予告にはあるので無事掲載を祈るばかり。

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『微化石』

微化石
国立科学博物館叢書
東海大学出版会
2012.7

 四千円近い本ですが「安い!」と思いました。
 印刷が良いです。判型は大きめの図鑑サイズ。印刷品質の良さと相まって大きく掲載された微化石の写真がとても見やすいです。内容は専門的ですが地質と化石の境界領域にあるという分野であるからでしょうか、一般向けの科学解説書に親しまれる人であれば専門用語でチンプンカンプンということもないはず。とりあえず単に化石が好きというだけで専門教育を受けていない私でも最後までしっかり読めました。
 ただし、内容は微化石研究の現状をまとめたもので専門度も高いので、微化石そのものに関心のある人でないと読み飽いてしまうと思います。科学論文ほどは細々とはしていませんが説明されている中身は「論文まとめ」的なものです。図版も豊富ですが文章量も多いです。読み通すにはそれなりに時間がかかります。
 2010年秋、国立科学博物館で「深海探査と微化石の世界」という展示が行われたのですが、その展示内容をより詳しくしたものという印象。

 微化石が気になっている人は大型図書館や店頭でぜひ一度中を覗いてみることをお勧めします。内容のボリュームに驚くはず。そして欲しくなるはず。私も図書館に入っていたのをチェックしてから購入しました。
 微化石ってなんだ?という人もぜひ図書館等で覗いてみてください。ミクロンサイズの驚異的な世界が待っています。ウイルスや細菌だと小さ過ぎて実感が湧きづらいかもしれませんが、砂粒サイズで骨格を持つ珪藻、ハプト藻、有孔虫たちの形の面白さは実感を持って迫ります。特に赤/青のアナグリフ画像は(メガネを自前で用意する必要がありますが)見応えあります。
 珪藻などはお弁当箱というかセイロというか「箱」そのものの構造をしていてびっくりですし、ハプト藻の『300』(スパルタを題材にした映画)っぽさも面白いですし、有孔虫の一種のグリフシード(『魔法少女まどか☆マギカ』に登場するアイテム)めいた形も感嘆モノです。収録されているアナグリフ立体顕微鏡写真も立体感がしっかり感じ取れるので赤青眼鏡もぜひお試しを。

 久々に、買って良かった、持っていて嬉しいと感じる化石本となりました。オススメ。

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『少年バンビ』タカハシマコ

少年バンビ
タカハシマコ
集英社マーガレットコミックス
2013.4.25

 『乙女座・スピカ・真珠星』に続いてのマーガレットコミックス。大人向け?のレーベルでの“毒”が控えめなのは『乙女座〜』同様ですが、今回はさらにストレートな少女漫画になってきたように思います。デコラティブな感じではなく、タカハシマコのBLものの方に近づいたような。あ、そうか。男子キャラを魅せる要素が強くなったのかも。主に眼鏡男子。

 収録は六編。あとがきが二ページあります。2010年から2013年にかけての作品たち。女の子が彼氏を得るまでの話が五編、身近な男子への恋の自覚というテーマで統一されているかも。ひとつだけ違う話がありますが。

 お気に入りは表題作の「少年バンビ」。主人公がとにかく可愛い。メーテル帽のワンポイントイラスト(カバー袖にはカラーで載っている)も可愛い。男の子も可愛いと見事に可愛いで埋め尽くされておりました。カワイー。

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『つづきはまた明日』紺野キタ

つづきはまた明日
紺野キタ
幻冬社コミックス
2013.4.24

 父子家庭の小学生兄妹の何気ない日常を描いたシリーズの完結巻です。

 今回は亡くなったお母さんの回想がしっかり描かれるエピソードがいくつかあり目頭の熱くなる回でした。何気ない日常が描かれてきたこれまでがあってこそ、はるかさやの母の喪失は読者の心に重く響きます。人の死を悲劇に留めず、平安な日常が宝石のように大切なものであることを実感させてくれるのです。遺された人には明日がある、と。ここにあるのは日常というファンタジー。小さな衝突はありますが、それさえも大切な日常の一部なのだなとしんみりと思わせつつ静かな閉幕を迎えます。そして読み終えたと同時に1巻からおさらいしたくなります。これまで読んできたデテールの積み重ねが読み手の中に作られていて、1巻時点がどんな状況なのかがよくわかり杳と清の日々に改めて目頭が熱くなります。こういう読み方のできる漫画って素敵だな。

 この巻には「li'l flowers」というたぶん「ひみつの階段」シリーズと同じ祥華学園が舞台らしき女子校物の短編が二本収められています。『カナシカナシカ』や『Dark Seed』、『女の子の設計図』で作風の変化も感じられ「li'l flowers」でも時代に合わせた観もありつつも「ひみつの階段」シリーズの作風でした。幅を広げてきていた、ということだったようです。

 新書館の『女の子の設計図』と幻冬舎の『つづきはまた明日4』の帯では互いに「紺野キタのコミックス、2ヶ月連続発売」と紹介しあっていて、こういう形のタイアップもするのだな〜と感心したり。あ、『つづきはまた明日3』のときも『カナシカナシカ』と連続刊行でタイアップしてたかも。

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『欠落少女コレクション』× 超文学フリマ

 小説同人誌の感想です。

 私も寄稿させていただいたサークル・ソウブンドウの『欠落少女コレクション』、超文学フリマの当日に刷り上がった実本をいただいてきました。自作以外の掲載作の紹介を兼ねた感想を。

 テーマは「欠落×少女」。

表紙 enu

 可愛らしくもゴシック感濃いイラスト。ソウブンドウ様の紹介ページに画像があります。これはぐっとくるハズ。超文学フリマの会場では大きなパネルになって通りかかる人々を魅了していました。

爪先に、結んだリボンをひっかける 七木香枝

 女学生の生活が描かれる導入部は華やかでありつつも家父長制の支配する封建的な世界の空気が香ります。その空気がもうなんというか素敵なのです。血と運命にがんじがらめにされた娘の閉塞感。そこから抜け出そうという密やかな足掻き。ひたひたと忍び寄る絶望感。ニコニコ超会議2の会場からの帰路、電車の中で夢中でページを繰りました。女学校の明るく華やかな側面の対極にある重い話ですが、読ませます。惹き付けてくれます。

銀鶏 志保龍彦

 支配階級の少女と下層世界で生きる殺人闘技の格闘家少女のお話。
 第二回創元SF短編賞で日下三蔵賞に輝いた作者の「Kudanの瞳」のKudanのイメージを頭に置きつつ読み始めたのですが、まったく異なる積極的に「戦う」少女が立ち現れます。格闘家少女・銀鶏のイメージの強さ、質感。その鮮やかさ、実在感の根源をあとがきで知り大いに納得させられたのでした。熱いです。とても。

みちる サモト

 ある日出会った少女の絵画。親近感を覚えたその絵の中の人物はなぜか妹であるかのように感じられ――。
 絵を描く人。何かに魂を捧げてしまった人。そんな業を背負った人を優しさを感じさせる柔らかな文章で描きます。異なる人々、心理的に異形である人々に対しては人間らしい温かな思いやりも往々に空回りする。優しく柔らかさを感じさせる視点と文体が穏やかに悲しみを伝えてきます。

感応グラン=ギニョル 空木春宵

 戦慄。読んでいてゾクゾク来ました。見世物小屋グラン=ギニョルのお話、ではあるのですが見世物小屋の猥雑なイメージのみを予想すると痛快に裏切られることでしょう。
 大正末〜昭和初期を思わせるエロ・グロを俗悪な魅力たっぷりに、それでいてどこか気高さを感じさせる描写で。「繭の見る夢」「女郎花織る蛛将」でもロマンや叙情の背後にロジカルで科学的な思考を感じさせた作者ですが、今回も“理”を備えていました。匂い立つような情感を兼ね備え。このイメージの豊かさはどこから来るのだろう……。すごい。とにかくすごい。

きみがいた月曜日 神尾アルミ

 明るさの中に漂うシリアス。華やかさ。SF分。繊細さ。
 通学の途中での自分と瓜二つの容貌を持つ少女との邂逅。もたらされる信じ難い説明。友情、思春期ならではの自意識、孤独。とてもとても内省的であるはずのテーマをSF的な設定の元に対話として立ち上げます。“わたし”に向かい合うお話はそのありよう自体が少女そのものに思えました。

★ ★ ★

 私事になりますが。
 読み終えて一番に、いえ、読み進めつつ思ったのは「この本に載せてもらえて良かった」でした。
 この本、読まれた方はスゴイを感じると思うのです。そのスゴイに作品を通じて立ち会えたことの幸せ。拙作はとりあえず棚上げにさせていただきますが「こんな話の書き手がいるんだ」という感動を共有していただけるのではないかと思います

超文学フリマ

超文学フリマ会場俯瞰

 ニコニコ超会議はかなりの人数を動員できたようで、幕張メッセのあの広い会場三棟にぎっしり人が入り、大盛況でした。超文学フリマのエリアはきっとガラガラなのだろう、と失礼な予想をしながら訪れてみるとそれなりに人口密度が高く、他ブースを目当てに来た人の中にも本を眺めて行く人が多かったように見えました。「ミク」のようなオタク文化からの盛り上がりイベントということもあって活字中心の同人誌即売会も決してアウェイではなかった気がします。
 会場は屋根が高く、大出力のスピーカーを使った出し物が多かったこともあり、超文学フリマのスペースでも普段の声量での会話が困難な喧噪に満ちていました。ブースでソウブンドウの方々とおしゃべりしようと思っても、複数人で話をするのが難しく要件のみ果たしてきた感じです。いえ、私がコミュ障ぶりを発揮してうまく話ができなかったのもありますが。

 「超文学フリマ」感想募集にトラバを打ってあります。作品、イベントの感想へのリンク集になっているようです。

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