森島明子『女の子合わせ』+『初めて、彼女と。』
二冊同時刊行された森島明子の百合短編集の感想です。
女の子合わせ
『女の子合わせ』の初出一覧から。
女の子合わせ 百合姫Wildrose Vol.1 2007.11 恋のいいなり 百合姫Wildrose Vol.5 2010.3 思い出結び Girls Love 2011.2 聖夜のアガペー 百合姫Wildrose Vol.4 2010.1 海風が薫る 百合姫Wildrose Vol.6 2010.9 天使なカノジョ 百合姫2012年11月号 チェリーなカノジョ 百合姫2013年1月号 彼女のカノジョ 百合姫2013年3月号 女の子合わせ修行編 描き下し 森島明子『女の子合わせ』初出一覧より
描き下しは四コマが4ページ。描写は全体に『Wildrose』系のものに合わせた感じで『百合姫』掲載作もすべて(妄想シーンも含め)性描写アリです。
『Wildrose』系のものはそれぞれ独立したお話でえっちシーンを中心にお話が進みます。一話ごとのページ数も少なめ。「女の子合わせ」の「おっぱいのチュウ♥」は可愛らしさ爆発の名シーンでこれが収録されていだけでも嬉しかった。後半の『百合姫』掲載の「カノジョ」シリーズは高校写真部が舞台のお話で、メインは内向的なネガとフェミニンで明るい月宮さん、副旋律的にイケメン女子・慶とお洒落な奈々が対置されます。
「カノジョ」シリーズでは写真部という設定から暗室作業風景なども何気なく入ってきますが写真マニア向けな排他感はなく、しっくりしっかり百合恋愛漫画しています。手探りになるティーンの性、同性同士であれば尚更で恋愛自体も手探りに。いっぱいいっぱいでぎこちなく関係を進めて行く十代の甘酸っぱい人間関係に、思春期ならではの性への強い関心とイメージが先行しがちなあたりを描くのも森島明子らしく思えます。
初めて、彼女と。 森島明子
一言にすると「森島明子作品番外編集」。
一冊丸ごと描き下しです。森島明子がこれまで描いてきた作品の補完とでもいうべきお話たち。ページの都合で、ストーリー構成の都合で、さらっと流された部分をしっかりと埋めてくれます。あとがきには「本編を読んでいない人にも楽しめように作ってある」旨書かれていましたが、でもやっぱり先に『楽園の条件』『瑠璃色の夢』『レンアイ女子課』の三冊は読んでおくと「あのキャラのあのときの心情が!」とより楽しく読めると思うのです。既読の方も読み直し推奨……するまでもなく『初めて、彼女と。』の読後には復習したくなるはず。
久々の三国さんのかっちりしたOL感が好ましかったり、蜜姫&香の高校生時代が見れて嬉しかったり。あとがきで明かされる衝撃の事実?に笑ってしまったりも。
森島ワールド総決算というか一段落というか、節目に当たる一冊ではないかと思います。
まっさらな状態からこの『初めて、彼女と。』を読んで森島ワールドに触れた人にはそれぞれの話はどう見えるのだろう、と少し気になりました。読む順番によって印象が変わりそうです。
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