映画『言の葉の庭』
少し前にアニメーション映画を見てきました。新海誠監督の『言の葉の庭』です。
劇場はバルト9です。事前情報何もなしでバルト9で見たのですが、大正解。なぜかというとこのお話の舞台は新宿御苑がメインで、新宿バルト9は御苑から道路を挟んだ向かいにあるからです。加えて、映画を見た当日は雨。劇中でも雨のシーンの多い『言の葉の庭』にぴったりの環境で見ることができたのでした。あらかじめ知らずにいたことも含めて感慨深い映画となりました。
『言の葉の庭』のストーリーはシンプルです。雨の日に学校をサボって新宿御苑の休憩ベンチで過ごす高校生の男の子と謎の女性との出会いをしっとりと描いた話です。それ以上の知識は無用。新海誠のこれまでの作品のように「えっ」と思う(ちょっぴり違和感のある)SF設定もない落ち着いたドラマが展開します。あ、公式サイトでやっている予告編ムービーは見てはいけません。知らなくてよい、とくに内容の期待を膨らませるようなものではなく、ネタバレだけをするたちの悪い予告です。落ち着いたラブストーリーであることだけ知ってそこに期待して見に行くのが吉です。
お勧めしたい理由がいくつもあるのでそこだけ。
まず、この映画、見所の一番は映像にあります。駅などで見かけるポスターの彩度の高い独特な緑色、あの美しさがそのままアニメーションとして動きます。まず間違いなく、この紹介を読んでイメージしたものよりも美しいものが劇場で見られるはず。Blu-ray? 大画面テレビ? ホームシアター? それも良いですが、大きなスクリーンと美しい光景に息をのむ観客たちの作る空気は劇場でしか感じられないもの。それを実感するために劇場上映をお勧めしたいです。
細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』もアニメーションの新しい時代を感じさせる素敵な映像でしたが『言の葉の庭』にも写実寄りのセンスで『おおかみこども』と比べても進化した、実写では撮ることのできない理想の——まるでスチル写真の奇跡の一枚かのような光景が動きます。
そうスチル写真的なのです。ただスチルが動いて動画になっているのではなく、動くことでスチル写真の空気が生まれます。静と動の逆転があります。
スチル写真的な側面との符合は舞台となった新宿御苑とも重なります。御苑は写真好きが集まる都会の撮影スポットとして有名な場所です。
そしてこの作品では「おっ!?」と思う3DCG的なシーンもあります。“的”ではない明確に3DCGが使われたシーンも。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズにもジブリのアニメにもなかった映像としての新しさが、けして奇抜ではない実写的なセンスの生むものではありますが、アニメーションにはこれまでなかなか描くことのできなかった何かが感じ取れるはず。
バルト9で見られる方は早めの上映回を、できれば雨の日を選んで、上映後には新宿御苑を散策されてみられることもお勧めです。御苑の入場は16:00までです。
同時上映であった「だれかのまなざし」がYoutubeで公開されていました。
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