『コミック百合姫』2013年9月号
コミック百合姫2013年9月号
一迅社
2013.7.18
七月は『百合姫』本誌に加えコミックス四冊、ノベル一冊と百合姫関連の出版物の多い月。月末には『百合姫Wildrose』Vol.7や『ひらり、』 vol.11
、『ひらり、』発のコミックス『ライカ、パブロフ、ポチハチ公』(四ツ原フリコ)
、『さらば友よ』(橋本みつる)
と『つぼみ』からの『総合タワーリシチ3』(あらた伊里)
も控えています。
表紙
表紙画像が色ズレ風ですがこれはアナグリフという3D画像であるため。赤青メガネが綴じ込みでついてきます。いっそのことカラーページ、全部アナグリフにしてしまえば良かったのに。付録につけたメガネの活躍の場はもっとあっても良いはず。
表紙の3Dを楽しんだ後にはNASAの火星探査の画像などを見ても楽しめると思います。リンク先以外にも「stereo」でNASAのサイト内検索をするとたくさん立体画像がみつかります。オススメ。Google EarthのMarsもアナグリフに対応していて面白いです。自前のデジカメでもフリーソフトでアナグリフ写真を撮影・作成することもできます。
citrus サブロウタ
単行本1巻が同時発売の今号は巻頭カラー。39ページは隔月にしてもボリュームあります。副会長のツイン縦ロールは今回大活躍の面白キャラ。縦ロールは意地悪&引っ掻き回し属性という素敵伝統はいつからだろう。「大草原の小さな家」のネリーあたりからでしょうか。ネリーは両側二個ずつの縦ロールですが。こちらの副会長・桃木野さんも見事に引っ掻き回してくれます。
それにしても芽衣は見事に毎回誰かに迫られてて総ウケっぷり半端ない。時々反撃に出るのもナイス。
百合男子 倉田嘘
今回は小さく“YURI-JOSHI side:”と小題がついたショートストーリーが複数。魚屋の奥様・皐さんを師匠に百合女子初心者の沙織の悩みが描かれます。皐さんの変人度は魚屋の師匠以上の気がしてきた今回でした。でも藤ヶ谷も変人キャラの気もしてきた今日この頃。
姫さま林檎を召し上がれ 源久也
源久也の読切短編。白雪姫をモチーフにポップにお妃さまと白雪姫と鏡の精がらぶらぶします。「ふ〜ふ」でもそうでしたがこの作者はド甘いベタベタ展開が最高。
くらやみのアスタリスク 百乃モト
待望二ヶ月の後編です。今回はバーテンの紘子さんはどうなるのか。前編ではテンちゃん側視点でしたが今回は紘子さん視点でお話が展開します。感想を書いてしまうとネタバレになりそうで書くに書けない……。
わがままファズとぴかぴかさん 大沢やよい
背伸び&性に対する認識が軽めのキャラとちょっともっさりなおぼこいキャラとのお話で、脇役として出てくる男性の存在——というよりも男性に対するはなちゃんの姿勢が百合漫画にあってはかなりギリギリな感じでアレルギーが出てしまう読者もいそうな気がしました。前途多難そうな主役二人だな〜と思いつつ、大人になることを焦ったはなちゃんの心の成長アフターストーリーが思い浮かんだりもします。
コキュートス コダマナオコ
タイトルのコキュートスは地獄の最下層という感じかな。教室で孤立している子と接点を持ったら、というお話で後編へ続きます。同日発売のコミックス『残光ノイズ』も好印象だったし、今回の「コキュートス」も後編が楽しみだしでコダマナオコには良い風が吹いている気が。『百合姫Wildrose』vol.7にも掲載があるようでそちらも楽しみ。
犬神さんと猫山さん くずしろ
今号はプール回+牛×犬回。犬神さんは旧スク水より競泳水着が似合うと思うのです。でもこの「いいのこれ?」感もこれはこれで。猫山さんと杜松さんは似合い過ぎ……。眼鏡オフで髪アップにしたら猿飛さんが誰だかわからなくて犬神さんは試しに押し倒してみるべきだったのではないかと思います。何書いてるんでしょう、私は。八月のニコニコ百合姫が楽しみです。そして牛若先輩コワイ。たぶん牛じゃなくてバッファローとか牛魔王そういう系の生き物。犬神さんはわんこのはずだけど圧されると覿面にチキンなあたり鶏かもしれません。
キャンディトラップ ちさこ
表面的仲良し風女子の接近に彼氏の横取りを狙われているのかと思いきやターゲットは主人公自身だったのでした、というところから始まるお話。『百合姫』にはありそうな感じのする設定だけど、でも、振り返ってみると記憶にないぞ。導入部のインパクトもありました。
ゆるゆり なもり
おまえも蝋人形にしてやろうか〜、とはちょっと違いますが絶好調です。
ヒカルセカイ 雨降波近
書き下ろしノベル単行本『ヒカルセカイ』からの導入部抜粋掲載。掲載部分は冒頭なのですが、このお話、前半と後半で印象が変わってきます。割とライトでポップな展開をする前半とぎりぎりと心が痛む濃密な後半とギャップがあり、私の好み的には前半を踏まえた後半にこそこのお話の真骨頂があると思うので掲載部分のライトな雰囲気で合わないと見限るのは「待った!」と申し上げたい。別途感想記事書きました。
ボウソウガールズテキモウソウレンアイテキステキプロジェクト 河合朗
今回は生徒会選挙回。むむ。なんで二人揃って副会長立候補なんだろう。学年別で役職の振り分けがある設定なのかな。紅子のキャラだと会長立候補しそうな気がしたのでした。
無人島へ持っていくなら タカハシマコ
草ぼうぼうの背景はタカハシマコの絵であまり見ないからでしょうか、今回の話はぱっと見た感じのタカハシマコ感がこれまでのイメージとなんとなく違う気がしたのでした。でもどこが違うというわけでもなく。純少女漫画の作風でありつつ所々に理系や歴史や思想や、作中の少女には不釣り合いな単語がぽろっと紛れ込み、それがうまくハマるのがタカハシマコ。心象風景をメインにしたこのお話もふわふわの絵柄でありながら一発芸も決まりとても好み。九月には『乙女ケーキ』に続く百合姫コミックス第二弾がまとまるようです。バンザイ。
月と世界とエトワール 高上優里子
今回も読み応えたっぷりの46ページ。地味キャラな感じがしていた生徒会長が重要キャラっぽくなりつつあります。伏線はこれまでもあったけれど今回は岸辺世界との対比で印象的に。出たばかりの単行本1巻も少女漫画感たっぷりでとても好みでした。単行本の収録内容は2013年5月号までなので7月号から読むと最新話に接続します。
きものなでしこ 八色
掲載1ページ目の扉イラスト、なぜか妖しくSM感が漂っております。本編の内容も一段ブーストかかった感。少し前から百合度アップが進んでいましたがその変化から目が離せない感。
my sweet clover 慎結
前号掲載作からの続きです。この三人組はバランス取れていて好印象。うまく続き物に展開できていて良かった〜。エリンと緋衣のカケアイも楽しい。アンケ次第で第三弾もあるのかな。続きが読みたいような、これはこのまま読者側で後の展開を想像して楽しむのが良いかもしれないような。
himecafe
ゲストは高上優里子。「百合魂」収録四コマ&妹語りのイラストがかわええーっ。
ガチ百合道 ねこ太
ふぉぉおおお。髪の毛がスーパーサイヤ人になりそうです。
笑わぬ魔女の死刑宣告 片倉アコ
百合姫コミック大賞・瑠璃賞の作者さんです。不吉な予言をしてそれが当たる、という同学年の変わり者は「魔女」と呼ばれ、予言は「死刑宣告」と言われていた。そして魔女から主人公への宣告。未必の故意というか予言や占いのメカニズムというか、そんなものをキーに展開するお話。ストーリーの流れがちょっとわかりづらかったりするものの、宣告の仕組をうまく使ったテクニカルなプロットが良い感じでした。
キスチュチュ 竹宮ジン
さとみ×那奈話の回収がしっかりついたーっ、気がする。
この中に一人残念な子がいます! マニ
作者はケモ耳属性強い方なのでしょうか。百合姫コミック大賞紫水晶賞受賞の前作でも登場させていました。可愛いキャラとほえほえの雰囲気を愛でる感じの作風なのかな。
私の世界を構成する塵のような何か。 天野しゅにんた
れみあは悪役というか引っ掻き回しキャラでキャラ紹介欄では「恋愛マスター」になっているのだけれど、余裕ありそうに見せて崖っぷちにいるようなタイプに見えてしまいます。読んでいてハラハラ。この先どうなっちゃうんだろうなあ……。
ナツヤスミ 井村瑛
今回の井村瑛はテクニカル。小説でいうなら叙述トリックもの……に近いかな。読み終えて、始めに戻って読み直して「おお!」と。
人型プラスティック 黒霧操
今回も黒霧操は攻め。キービジュアルがひとつあって、それを軸に作られたお話の気がします。タイトルページの扉絵の感じ。さらにもうワンステップが展開します。まだまだ進化しそうな作者で楽しみ。
恋愛遺伝子XX 影木栄貴/蔵王大志
しばらくお休みしていたのが再開したのを喜びつつ、今回12ページで次回クライマックスの予告あり。むむ。九重スミレとかもっと複雑に絡んできそうな気がしてたし、メガネや縦ロールももう一波乱ある予感がしてたのだけれど。今回のお話も一息にまとめに来た気がしてしまいます。
ロケット★ガール 田仲みのる
しばらくのお休みから復帰して時間が飛んだことにびっくりしましたがどうやらがっちり回収していくタイプの展開になるようです。なんだいなんだい、面白いじゃないか〜。前回も良かったし。テンション高い方がこの作者のお話は輝く気がします。
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今回は峰なゆかのコラムがお休みの模様。今号のMVPは「犬神さんと猫山さん」の牛若先輩でしょうか。
八月は慎結の『星降り坂一丁目三番地』単行本が出ます。
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