『コミック百合姫』2013年11月号
コミック百合姫 2013年11月号
一迅社
2013.9.18
表紙
一年続いた浜弓場双の表紙。今回で一段落なのでしょうか。これまで“BE CUTE! BE POP!”のテーマが添えられてきたのにぴったりな可愛らしいイベントが描かれて来ましたが、今回は表紙を開き折り込みを展開してみればロマンティック全開。花火の意匠に埋め込まれた目次は実用的には見づらくもありましたがカッコ良くもありました。
百合男子 倉田嘘
読者の反応も賛否両面極端であるらしい「百合男子」は編集部の付けたアオリでも悪ノリでますが、間違いなく『百合姫』の屋台骨のひとつ。読者も含めたジャンルを俯瞰する作品は必要で読者自身にも読者像と向き合わさせる役割を果たしていると思うのです。今回は「青い花」完結を機とした聖地巡礼ネタ。作者による現地取材の状況などもサイトにまとめられているので本編や「青い花」の原作コミックス・アニメと併せて眺めると楽しいはず。
citrus サブロウタ
7月発売のコミックスが発売から一週間ちょっとで大手書店やネット書店で売り切れてしまい、8月後半まで増刷がないまま入手難が続いていたらしい絶好調の「citrus」。9月の『百合姫』発売日になってもAmazonではコミックスランキング500位あたりと新刊みたいな位置に留まっています。前号から魅力的に話を掻き回しに来た眉太・ツインテ・縦ロールの桃木野さんは今号でも大活躍。はるみんの谷間ポケットも密かに活躍。今回は派手な急展開はナシですがそれでもノリ良く一気に読ませてくれた36ページ。単行本1巻の続きは『百合姫』9月号と今回の11月号の2話分です。
ひとりじめマイフェアレディ ありいめめこ
『百合姫』の姉弟誌?『gateau』掲載作家さんの短編。作家さんのブログによると『gateau』掲載作のスピンオフであるようです。ゲスト作品という感じがまったくしない見事に馴染んだ作風でした。少女の華やかさも舞台裏も見せるのが少女漫画の、百合漫画の面白さだと思うのですがそこをどストライクに表現していてとても好みだったのでした。同級生の姉である年上の女性に一目で魅せられてしまった外見至上主義少女のお話。
月と世界とエトワール 高上優里子
今回は岸辺世界が回顧する歌姫・海百合と生徒会長との因縁の過去話。すこ〜しずつ海百合様の行動パターンというか動機みたいなものが見え始めてきた気がします。今号は回想ということもあってシーン自体は衝撃的であっても淡々とした感じもしたかな。次号で時間軸がよぞら&世界の現在に戻りまたまた盛り上がりそうな予感がします。楽しみ。
犬神さんと猫山さん くずしろ
夏祭りで浴衣回!なのだけれどチャイナ服回でもあったのでした。猫山さんは実は猫ではなく蛇女(昔の見世物小屋的なアレ)担当だったのですね、とちょっと思ったり。「マルスのキス」とか小ネタが仕込まれていたり杜松さんの使っているカメラがどことなく蛇腹式クラシックカメラに見えたりとか細かなところも色々遊びもあったり。
プリズムエモーショナル 黒霧操
黒霧操、作画面で着々と進歩を続けている気がします。手や指の表現を含めたポーズデッサンが自然で格好良く。デビュー作の時にはまさかこういう方向にめきめき力を付けてくるとは思いませんでした。お話の流れも自然で読みやすく効果的な構成。まだまだ知名度の低いアイドル三人組のセンターと有名アイドルのお話。タイトルからするとプリティ・リズム(土曜朝のアニメ)的なイメージなのかなとちょっと思ったり。
ユリップchu♥ 森島明子
Twitterではアイドルグループへの萌えを以前から見せていた森島明子。『ひらり、』でもグループダンスのシーンが入っていたりしたので「ずっとやりたかったんだな」というのがひしひしと。博多弁や関西弁が飛び交ってとてもノリノリ。前掲の黒霧操と並んでのアイドルものです。こちらの「ユリップchu♥」は連作予定の模様。次回は一回お休みして3月号予定だそうです。
私の青春はヤンデレに浸食されました ねこ太
不条理っぽいギャグはリニューアル後の『百合姫』では珍しい感じ。『ニコニコ百合姫』でのすこやか共々、以前の『百合姫S』にあった空気が少し戻って来た気がします。屋上でリストカットしようとしていた子を止めるのですが、その子が完璧なヤンデレさんで、というカッ飛んでる系のギャグものです。
コキュートス(後編) コダマナオコ
まっすぐでハグレ者のクロネコさんとフツーの中にありながらフツーに馴染めていない主人公。急接近から始まる後編ではクロネコさんの側に踏み出したくても踏み出し切れない葛藤のお話となります。非常に好きなテーマ。これはすごく惜しい気がする。空気感、共感で挑戦的に読者を掴みに来ていて、ぐっと乗ろうとしている読者にはわかるけれどたぶん乗り切れない読者もいて。単に良いお話にするならば主人公が勇気づけられてコウモリをやめ、クロネコさんと手を取り合い寄り添うオチになるはずなのだけれどそうは描かなかったあたりのじんわりくる「ああっ、もうっ」感。
あたしとあなたと彼女のソファ 源久也
これはちょっと前置きというか読めばわかるけど読み始めしばらくはわからない、設定を解説してしまうべきでしょうか。……やめとこ。読んで、どういう設定なの?と悩んでみてください。
ゆるゆり なもり
千歳でも照れてしまうことがあるのか……。そして京子と櫻子は合わせてはいけない危険物のような気がしていましたが意外と名コンビであることが発覚。
あなたはいつ勘違いに気づくのです? まに
第9回百合姫コミック大賞にて紫水晶賞の作者です。今回も絵が可愛い。とにかく可愛い。すごく可愛い。ネトゲで知り合ったらしい三人組の初顔合わせ・日常系コメディ。小ネタも可愛く楽しく。お話の展開がちょっぴりわかりづらい気もしますが、可愛らしい絵&キャラのパワーが全開で楽しめました。
私の世界を構成する塵のような何か。 天野しゅにんた
ぉぉぉっ。悪い予感しかしなかった前回までの留希×さちですが、これは書いちゃっていいよね? バレしちゃっていいよね? 素晴らしい回収のされ方をしたのでした。こういう話も創れるのかしゅにんた……。
ガールズビターアンビシャス ちさこ
しっとりシリアスと甘々ポップな雰囲気を視点の切り替えとともにスイッチして見せたお話。男子と付き合ってみたけれどうまくいかなかったと打ち明ける友人。想いを寄せつつもそれを隠して慰める主人公。
箱の中の姫君 慎結
スクールカーストやいじめ的なテーマが得意な慎結。今回は大会社の社宅らしき舞台に生じた社内カーストをテーマに。父親の仕事上の地位が子供の社会的地位にも反映されてしまうことへのレジスタンスを恋愛的な感情と重ねていきます。
きものなでしこ 八色
サーヤとかの子の関係が一段落して落ち着いた面白さが戻った気のする「きものなでしこ」。キャラの関係はたぶんこの先はゆっくりと変わっていくのだろうなと思いつつ。今回は一足早いお正月イベント。
game 竹宮ジン
少し絵柄も雰囲気も変えて来たかな?という印象の竹宮ジン。今回は高校生もの。金髪の転校生がやってきて主人公にいきなり懐きまくり。しかもどうも懐かれ方が不純な感じ?と始まるお話。連載の第一話であるようです。
雷と砂の雨 大北紘子
あ、あれ? ええ? こ、このオチなの? という大北節炸裂。在宅ワーカーの主人公の元に手配中の逃亡者♀が訪れて、と始まる話。締め方が唐突な気がして読み返すと伏線はちゃんとあって、でも、伏線あってもやっぱり唐突感が。オチの強烈さで展開のしっとりが印象から逸れてしまったような気もしますが、中盤一コマずつゆっくりと辿ると大北紘子のチャレンジが見えてくる気がします。
himecafe
himecafeは今回サブロウタがゲスト。このコーナー、文章になってるけどけっこう作家さんごとの違いみたいなのが字面から出てる気がして楽しみだったり。
Yurinote 峰なゆか
今回はボディタッチをテーマに。ぶふっ。毎回笑ってしまうこのコーナー。ただ書き流しているエッセイではなくてオチというか構成がしっかりしてて何気なく上手かったりします。作者、エッセイ漫画は本が出ているけど文章のご本は出してないのかな?
羊と氷菓 井村瑛
今回の井村瑛のお話はモノローグ部分が詩のようなリズムで、心に染みました。そして予想外の展開で「続く」。えぇ?と思ったらタイトルに(前編)の文字。これは気になる引きだな〜。
ボウソウガールズテキモウソウレンアイテキステキプロジェクト 河合朗
黒百合会。なんかこう、江戸川乱歩の気配というか、ぶははっと思わず笑ってしまうスケバン刑事的世界の香りが。次回への引きもうまいとこ設定してきました。
勿忘草を忘れないで 片倉アコ
9月号にも掲載のあった百合姫コミック大賞からの作者さん。今回も話の流れがテクニカル感があるのが「ほほー」と関心しつつ、ちょっと時系列のわかりにくさもありました。
in secret...? 大沢やよい
前回の「わがままファズとぴかぴかさん」では百合漫画的には微妙なラインを攻めてきましたが今回は王道な学園物。音楽教師と生徒と。大沢やよいらしい明るく柔らかな雰囲気。
★ ★ ★
「恋愛遺伝子XX」と「ロケガ」、タカハシマコ、蕗も前号予告にはあったのですが掲載がなく。誌面はしっかりしていましたが内幕は波乱の11月号であったのでしょうか。この夏は艦これの大ブレイクがあって今号あたりで艦これの百合要素を特集してミニ漫画でも載せられれば大売れしたかもしれません。Twitterでも百合姫作家さんたちの艦これ率高し。
次号予告の水あさと「屋上に咲く花」はcover storyなのかな? 本編での漫画掲載なのかな? まだわかりませんが予告イラストを見て楽しみになったのでした。
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